【EU】EUIPO「生成AIと著作権」を発表(5月13日)

欧州知的財産庁(EUIPO)は、5月13日、広範な調査と分析の成果として「著作権の観点から見た生成AIの発展(The development of Generative Artificial Intelligence from a Copyright perspective)を発表した。
 著作権は経済の礎であり、クリエイター、企業、そしてより広い社会に大きな利益をもたらす。2022年のEUIPO-EPO共同調査によると、EUにおける著作権集約型産業の雇用は総雇用の6.2%を占め、これらの産業はEUの国内総生産(GDP)の6.9%である。その結果、著作権の状況に影響を与える可能性のある生成AIなどの新たなトレンドやテクノロジーを慎重に検討することが極めて重要である。
 生成AIによる生成物の複雑な問題に取り組むため、EUIPOが新たに発表した調査の目的は、生成AIの技術的機能、及び著作権と人工知能に関するEU規則の適用で、この調査報告は、技術的、法的、経済的側面を網羅し、EU著作権法の観点からその発展を詳細に分析している。調査では、机上調査、専門家インタビュー、技術的ソリューションと実践の詳細な分析を含み、相互に関連する3つの分野に焦点を当てている。
(1)著作権で保護された作品を生成AIモデルのトレーニングデータとして使用すること
(2)これらのシステムによる新しいコンテンツの生成とそれによる法的問題
(3)クリエイター、AI開発者、著作権エコシステムに対する広範な影響.

調査報告書は、8章425頁からなり、概要目次と注目の節は以下の通り
Executive Summary
1 Introduction
2 Technical, Legal and Economic Background
2.2 Legal Framework for Generative AI
2.3 Ongoing Legal Challenges and Litigation
3 Generative AI Input
4 Generative AI Output
5 Conclusion
6 References
7 Glossary
8 Annexes

いずれにしても、生成AIが利用する基礎情報を収集するスクレイピングと生成物に対する透明性が求められ、基礎情報である著作物に対する尊敬と配慮、出所の表示及び生成物にそうした情報の記録が求められる。運営者に対する規制を含む法的な枠組みと立法がないと著作権や著作隣接権は保護されないため、適切な対応を行政府には期待するところである。権利者の泣き寝入りだけは認められない。

参照サイト:https://www.euipo.europa.eu/en/publications/genai-from-a-copyright-perspective-2025

【アメリカ】著作権局は「Copyright and AI, Part 2:Copyrightablity」を発表(1月29日)

アメリカ著作権局(U.S. Copyright Office)は、2025年1月29日、人工知能(AI)システムにより生成された素材で構成された或いは組込れた作品の著作権保護に関する報告書を発表した。

この報告書は、同局が2023年に提供した著作権登録ガイダンスと概ね一致していますが、著作権保護の範囲を決定するには微妙で事実に固有の分析が必要となること、さまざまな方法で作品の作成にAIがますます使用されていることを確認している。

報告書は、2023年のガイダンス(Works Containing Material Generated by Artificial Intelligence, Mar. 16, 2023)と概ね同じ内容で、AIはますます使用されている情況からケースバイケース出判断することが必要であり、著作権保護の範囲を決定するには微妙な差異や事実に基づく分析が必要であることを認識しており、現段階で十分な回答を出すことができないため、今後も状況に応じた確認が必要で追加のガイダンスを発行することになるとまとめている。
 とは言え、本報告書では、「copyright protection in the United States requires human authorship」という著作権局の立場を繰り返し、現在の技術水準で著作権保護の適格性を評価する上での重要な区別は、AI ツールが人間の創造性を「支援 to assist」するために使用されているか、それとも「代役 stand in」として使用されているかであるとしている。また、著作権保護の対象となる作品の作成に AI システムを使用できるさまざまな方法を認識しているが、AI により生成された素材に追加の著作権或いは独自の法的保護を提供する新しい法律の制定の必要性は否定している。

報告書の目次は下記の通り
I. INTRODUCTION
A. Technology and Copyright
B. The Copyright Office’s AI Initiative
II. AUTHORSHIP AND ARTIFICIAL INTELLIGENCE
A. Technological Background
B. Legal Framework
C. Assistive Uses of AI Systems
D. Prompts
 1.Commenters’ Views
 2.Analysis
E. Expressive Inputs
F. Modifying or Arranging AI-Generated Content
III. INTERNATIONAL APPROACHES
IV. THE ARGUMENTS FOR LEGAL CHANGE
A. Providing Incentives
B. Empowering Creators with Disabilities
C. Countering International Competition
D. Providing Greater Clarity
V. CONCLUSION

参照サイト:https://www.copyright.gov/ai/Copyright-and-Artificial-Intelligence-Part-2-Copyrightability-Report.pdf

【中国】最高人民法院は著作権保護強化に関する意見を公布、施行(11月16日)

最高人民法院は、2020年11月16日付、法発〔2020〕42号、最高人民法院による著作権と著作隣接権に関する権利保護の強化に関する意見(最高人民法院关于加强著作权和与著作权有关的权利保护的意见)を公布し、著作権と著作隣接権の保護をさらに強化するために、次の10項目の意見を出しました。著作権法の改正は2021年6月1日から施行されますが、それに先立ち各法院は順次適用すると思われる。

1.創作者の権益保護強化
2.侵害事件の質の向上を図り、簡素化、審理期間の短縮に加えて、立証難を緩和する措置を行う
3.署名権行使による創作者/著作権者の認定
4.権利帰属の簡素化による原告認定
5.新しいタイプの事件を適切に審理
6.侵害品の即時廃棄及び侵害品の製造に用いる材料及び工具の廃棄を積極的に支持
7.権利者に適切な損害賠償と故意侵害などに懲罰的賠償
8.再犯対策強化
9.悪意や不誠実な訴訟対策強化
10.不誠実な訴訟対応に厳罰措置

参照サイト:http://www.court.gov.cn/fabu-xiangqing-272221.html

【中国】著作権行政執行法の証拠の審査と認定業務のための通知(11月15日)

国家著作権局(国家版権局)は、11月15日付、「国家著作権局による著作権行政執行法の証拠の審査と認定業務の更に進めるための通知(国家版权局关于进一步做好著作权行政执法证据审查和认定工作的通知)を公示し、同日施行した。本通知は、8月14日付で意見募集稿がされていたもので、全11条からなり、地方の政府に対して、権利証明、侵害証拠及び権利侵害の認定について、通知するものである。なお、本通知はSNSで発信されている。
以下、仮訳でご紹介する;

国家著作権局による著作権行政執行法の証拠の審査と認定業務の更に進めるための通知

各省・自治区直轄市著作権局、北京市、天津市、上海市、重慶市文化市場総合行政執行部門:

「中国共産党中央弁公庁、国務院弁公庁による『知的財産権保護強化に関する意見』の通知」を徹底し、著作権の保護をさらなる強化、著作権行政執行の効果の向上、著作権行政法執行業務メカニズムの改善、権利者の権利維持負担の軽減、良好な事業環境を構築するために、著作権行政法執行の証拠審査と認定業務を更に進めるために、以下の通り通知する。

一、権利の証明について
1.投訴人が著作権行政法執行部門に投訴したとき、著作権行政法執行部門は投訴人にその主張する著作権或いは著作隣接権に関する証拠を提供するよう求めなければならない。
2.投訴人が提出した以下に掲げる資料について、著作権或いは著作隣接権が帰属する証拠とすることができる:作品の原稿、原本;合法的出版物、著作権登録証書;権利取得契約;国家著作権行政管理部門が指定した著作権認証機構或いは著作権集団管理組織が発行した著作権認証文書;その他権利の帰属を推定できる証明資料。
3.著作権行政法執行部門は投訴人が提出した権利を主張する作品、上演或いは録音製品が「中華人民共和国著作権法」により保護されるとともにまだ保護期間内にあることを確認しなければならない。相反する証拠がない場合、著作権行政執行部門は投訴人の主張する著作権或いは著作隣接権に関する権利が当該作品、上演或いは録音製品に存在すると推定しなければならない。
4.相反する証拠がない場合、通常の方式で署名した作者、出版者、上演者或いは録音制作者について、著作権行政法執行部門は当該作品、演技或いは録音製品の著作権者或いは著作隣接権者と推定しなければならない。
5.著作権行政法執行部門は、本通知第4条に基づき権利の帰属を推定するとき、被投訴人が相反する証拠を提出できない場合、投訴人に当該権利帰属の証明、許諾を既に得ていること或いは被投訴人の行為が権利侵害を構成することを証明するために著作権或いは著作隣接権の許諾、譲渡契約或いはその他の書面証拠を提出することは求められない。

二、侵害の証拠について
6.投訴人が著作権行政法執行部門に投訴したとき、著作権行政法執行部門は投訴人に当該著作権或いは著作隣接権の証拠を提供するように求めなければならない。
7.投訴人が提出した以下に掲げる資料について、その提出された権利主張の著作物、上演或いは録音製品を権利が侵害された証拠とすることができる:権利侵害著作物、上演或いは録音製品と購入記録;権利侵害行為に関わる帳簿、契約と加工、書類作成;権利侵害行為を証明する写真、ビデオ或いはホームページのスクリーンショット;出版者の証明、発行者の偽造証明、授権許諾文書の改竄或いは授権許諾範囲を超えた証拠;その他権利侵害行為を証明できる資料。

三、権利侵害の認定について
8.投訴人が権利証明書及び権利侵害証拠などの関連証拠資料を提出した後、被投訴人が著作権者或いは著作隣接権者の許諾を得たと主張する場合、許諾を得た証拠を提出しなければならず、著作権行政法執行部門は事実確認の調査を行わなければならない。被投訴人が上記の証拠を提出できずかつ既存の証拠が権利侵害認定を支持するに足りる場合、或いは被投訴人が提出した証拠が許諾を得た証明に足りない場合、著作権行政法執行部門は被投訴人の行為は侵害を構成すると認定しなければならない。
9.複製品の出版者、制作者は出版、制作に合法的な授権があると証明できない場合、複製品の発行者はその発行した複製品が合法的な出所があると証明できない場合、著作権行政法執行部門はその行為が権利侵害を構成すると認定しなければならない。
10.投訴人が提出した権利証明書及び権利侵害証拠に基づき、著作権行政執行部門は被投訴人の行為が権利侵害を構成すると直接に認定することができ、鑑定機関に鑑定を依頼する必要がない。
11.著作権行政法執行部門は法により授権、虚偽の授権などの方式を通じて他人の作品の侵害行為を不法に伝播し、法により権利の帰属不明、不当な権利維持などの行為を規範化する。

国家著作権局 2020年11月15日

【中国】「2019年中国知的財産権発展状況評価報告」の公表(9月14日)

国家知識産権局の直属組織である知的財産権発展研究センターは、9月14日付、「2019年中国知的財産権発展状況評価報告」を公表し、報道発表会を行った。本発表は9月15日公示されたものの、全文の掲載公表は9月18日となった。

本報告では、国家知的財産権戦略の実施以来、中国の知的財産権の発展は著しく、イノベーション型国家、知的財産権強国の建設に大きな影響を与えたと説明している。報告書は、大きく国内全体の発展情況、地区ごとの発展情況、発展情況の国際比較の3部からなり、発展指数は2010年の総合及び創造、運用、保護、環境発展指数を100とし、2019年まで各年度の毎の成長を分析している。

2010年から2019年にかけて、中国全体の知的財産権総合発展指数は2.79倍まで徐々に上昇しており、特に創造発展指数は2013年を境に前年平均+5.4%から+15.0%と成長速度が加速している。運用指数は緩やかな+9.9%の成長で、2018年は+28.5%と加速し、10年間で2.3倍増加した。一方、保護指数はずっと上昇傾向で、10年間で3.14倍まで増加し、年平均成長率は13.6%と保護水準は全面的に強化されていることが分かる。

国際比較では、2014年から2018年にかけて、中国は40か国の中で知的財産権発展総合指数ランキングの順位は2014年の20位から、2018年度は日本をトップの100として、67.08の8位に上昇している。

参照サイト:http://www.cnipa.gov.cn/zscqgz/1151418.htm
報告書PDF:http://www.cnipa-ipdrc.org.cn/UpLoad/2020-09/202091892354.pdf

【中国】「2019年中国ネット著作権産業発展報告」の公表(9月16日)

2020年9月16日、国家著作権局が主催する2020中国ネット著作権保護と発展大会が北京で開催され、国家著作権局ネット著作権産業研究基地が5月にまとめた「2019年中国ネット著作権産業発展報告」が公表された。

報告によると、中国でのネット著作権産業は引き続き安定的成長を維持しており、2019年に中国の市場規模は9584.2億元(約15.3兆円)に達し前年比29.1%伸びた。事業モデルは主に使用料、運営及び広告の収入の三要素であるが、広告などの収入は5057億元に達し、全体の52.7%、使用料は4444億元と全体の46.4%、運営収入は83.2億元と0.9%を占めている。事業内容としては、ネットニュースとゲームが依然として中国のネット著作権産業の中心であり、両者の市場規模の合計は63.7%を占める。ネット動画類は新たな成長期を迎えており、ネット動画、ネットショート動画、ネット中継の産業のシェアは29%に近づいている。

なお、報告書は9分野から整理されおり、デジタル閲覧、ネット動画、ネットアニメ、ネットゲーム、ネット音楽、ネットニュースア、ネット中継、ネットショートビデオ、バーチャル産業発展状況とハイライトである。

参照サイト:http://www.ncac.gov.cn/chinacopyright/contents/518/421425.html

【中国】最高人民法院と最高人民検察院による知的財産権侵害刑事事件審理での法律解釈(三)の施行(2020年9月14日)

最高人民法院と最高人民検察院は、9月12日付、6月に意見募集した「最高人民法院と最高検察院による知的財産権侵害刑事事件の審理における具体的法律の適用における若干の問題に関する解釈(三)(最高人民法院、最高人民检察院关于办理侵犯知识产权刑事案件具体应用法律若干问题的解释(三))」(法釈2020-10号)が2020年8月31日に最高人民法院審判委員会第1810回会議を通過し、2020年8月21日に最高人民検察院第13次検察委員会第48回会議を通過したので,2020年9月14日より施行することを公示した。

本解釈は12条からなり、その対象は第1条から第3条に刑法に規定のある商標にかかる第213条、著作権にかかる第217条第1項、営業秘密にかかる第219条第1項1号(その他の不正行為)に関する処罰の適用、第8条と第9条に処罰内容、第10条には罰金の規定があり最大で500万元以下の罰金を規定している。なお、意見募集稿の第11条で重罰の対象となっていた外国への情報を提供するための侵害は削除された。

参照サイト:http://www.court.gov.cn/fabu-xiangqing-254891.html
仮訳

【中国】中国通信院は「インターネット法律白書(2019年)」を公表(12月19日)

中国情報通信研究院は、12月19日付、 「互联网法律白皮书(インターネット法律白書)2019年」を公表した。本白書では、過去1年間の国内外のインターネット分野における重要な立法、法執行、及び司法活動、インターネット上の法支配の重要なポイント、法の支配の将来の動向をまとめているため、現状の中国でのネット環境や法律進展を確認するのは大変便利である。

白書は、3部構成で、下記のような内容である。知的財産関連の部分はご参考まで。
1.国際的インターネット立法の進展
(1)サイバーセキュリティの向上、データ管理規則の構築
(2)ネットワークの内容管理、プラットフォームの責任
 3.ネットの著作権保護を強化、プラットフォームの責任を明確化
(3)個人情報保護立法の充実、全面的な法律執行能力の増強
(4)新技術新業務の発展奨励、規範化
2.国内インターネット法治の進展
(1)ネットワーク空間法体系の構築
(2)インターネットの法律執行力の持続的増強
 3.知的財産権侵害行為に対する打撃
(3)インターネットでの能動的司法
(4)ネットワーク法治の研究深化
3.未来の趨勢展望
(1)持続的立法の充実、重点の逐次移転
(2)法執行能力の着実な向上、司法改革の全面的推進
(3)多面的国際協力、ネットワーク空間運命共同体の構築

参考サイト: https://mp.weixin.qq.com/s/_YSLyTnGEuohDSmxlBszbQ