【中国】2018年度商標行政訴訟結果分析(8月26日)

商標局は、2018年7月に発行された評審法務通信2019年第1号を8月26日公示し、2018年度の商標審査に対する行政不服訴訟の結果を分析して評価しているので、ご紹介する。

2018年度の審決総数26.52万件(前年同期16.89万件、年同期比+57%)に対して、行政訴訟件数は11,510件(前年同期9,310件、前年同期比+23.6%)であり、不服提訴率は4.3%(前年度5.5%)と前値比去年1.2ポイント下がった。
2018年度の第二審控訴件数は4,120件(前年同期2,614件、前年同期比+57.6%)、更に最高人民法院及び北京市高級人民法院への再審査など案件数は420件(前値同期165件、前値同期比+154.5%)とそれぞれ比較的大きな増加傾向がある。

一方、第一審判決は裁定561件を含み10,333件(前年同期6,330件、年同期比+63%)、敗訴事件は2,840件(前年同期1,594件、年同期比+78%)で敗訴率は27.5%(前値同期25%)である。
第二審判決は裁定67件を含み3,732件(前年同期6,330件、年同期比+63%)で、敗訴事件は1,243件(前年同期977件、年同期比+27%)で敗訴率は33%である。

事情の変更は、追加資料などの提出により状況が変わったことを言うが、証拠を後から出しでも認められるので、審判段階では準備できなくとも、訴訟段階に間に合えばよい判決をもらえる可能性は高いので、お勧めします。

参照サイト: http://spw.sbj.cnipa.gov.cn/fwtx/201908/t20190826_306252.html

【WIPO】2018年度PCT年次統計報告発行

WIPOは2018年の出願統計、詳細分析及び2018年まで各種分析をまとめた2019年版統計報告(PCT Yearly Review 2019)を発行した。完投に40周年を記念した報告が含まれている。

注目する点はいくつもあるが、2017年度のトップ10か国と移行国の分析が面白いので、ご参考まで。その他は、内容をご覧ください。

参考サイト:
https://www.wipo.int/edocs/pubdocs/en/wipo_pub_901_2019.pdf

【中国】2018年度商標行政事件典型10事例公示(5月22日)

中国知識産権局は2018年度の各地の工商行政管理局など(旧組織)が取扱った行政事件から典型事例として10件を抽出し、参考となるべき事例として公示した。以下、判明する事実は確認し加筆、仮訳で紹介する。 http://www.cnipa.gov.cn/zscqgz/1139377.htm

1.アップル社の登録商標専用権侵害事件
2.江蘇凱蒂食品有限公司のイギリス国旗無断使用事件
3.北京宏源利得商貿有限公司の「鬼塚虎(オニツカタイガー)」などの登録商標専用権侵害事件
4.深圳市新麗手袋有限公司の「美団外売」などの登録商標専用権侵害事件
5.成氏の「阿迪达斯(Adidas)」などの登録商標専用権侵害事件
6.常德市鼎城区大烺管材経営部の「LESSO 联塑」登録商標専用権侵害事件
7.龔氏による南方寝飾マーク]登録商標専用権侵害事件
8.中山市愛貝爾日用制品有限公司による「YOYO」登録商標専用権侵害事件
9.張氏による「阿克蘇苹果及図」地理的標識証明商標専用権侵害事件
10.徐氏による「阿尔卑斯」登録商標専用権侵害事件

仮訳  http://www.kyk-ip.com/files/KyK2019E.pdf

【中国】2018年度最高人民法院による10大知的財産権事件及び典型的事件50件の公示(4月19日)

4月17日付、最高人民法院弁公庁は法弁(2019)113号により、2018年度の中国人民法院が取扱った10大知的財産権事件及び典型的事件50件を関係行政機関向けに公示した。

前文では、この事例を参考とすることで、習近平新時代の中国の特色のある社会主義思想を指導として堅持し、「四つの意識(政治意識、大局意識、核心意識、一致意識)」、「四つの自信(中国の特色ある社会主義への自信、理論への自信、制度への自信、文化への自信)」を固め、「二つの維持(前記の意識と自信)」を徹底し、安定的に業務全体の基調を堅持し、「人民大衆が司法事件ごとに公平正義を感じるよう努力する」との目標を確実に知的財産権裁判分野での改革を深化させ、有効な司法的保障を提供するよう、習指導体制における特徴的な説明となっている。

★2018年中国法院10大知的財産権事件

1.クリスティアンディオール香料会社vs商標評審委員会の商標申請却下再審行政紛争事件
 国際登録商標第1221382号の立体商標の中国拡張登録が却下され再審で、国際条約による内国民待遇を適用し外国出願人に対する手続き上の救済を判断した事件。〔最高人民法院(2018)最高法行再26号行政判決書〕

2.無錫国威陶磁器電器有限公司、蒋国屏vs常熟市林芝電熱器具有限公司、蘇寧易購集団株式有限公司の実用新案特許権侵害紛争事件
 実用新案特許ZL2009202308295 はPTC(Positive Temperature Coefficient(消費電力低減)特性を持つヒーターのアルミチューブとヒーターにかかり、請求項2の第二審での侵害認定が取消され、第一審が支持された。本件のポイントは損害賠償額の認定における被疑侵害品の利益における寄与度など要因を検証した点である。〔最高人民法院(2018)最高法民再111号民事判決書〕

3.ユニクロ商業貿易有限公司vs広州市指南針展示サービス有限公司、広州中唯企業管理コンサルティングサービス有限公司、ユニクロ有限公司上海月星港店の商標権侵害紛争事件
 商標の先取りにより商標権販売活動を「商標の出願登録と使用には信義誠実の原則を遵守しなければならない」との判断を示したもので、被告は2600もの先取り商標権を有し、本件では「UL」商標を高額で商標権を売りつけ、また42か所で商標権侵害訴訟を行うような行為は悪意のある不正行為と指摘した。当職は本件に当初から関与した。〔最高人民法院(2018)最高法民再396号民事判決書]

4.江鈴ホールディングス有限公司vs専利復審委員会、ジャガーランドローバー有限会社、ジェラルド・ガブリエル・マクガバンの意匠特許権無効行政紛争事件
 江鈴ホールディングスの意匠特許ZL201330528226.5の無効取消行政不服訴訟であり、北京知識産権法院は全体観察で影響のある自動車のフロントとバックの比較によりヘッドランプからナンバープレートの面積などを含み部分比較し、それらの組合せが全体的な視覚効果(差異)として顕著な影響を与える(有効)と判断したものの、第二審の高級人民法院は全体的な視覚効果に影響のある可能性のあるすべての要因について包括的に検討するべきであり、一般消費者の意匠設計に対する認知度に基づき、意匠特徴の機能、美観、技術的制限など要素を組合せて、全体観察における重みづけで確定するべきで無効であるとした。〔北京市高級人民法院(2018)京行終4169号行政判決書〕

5.北京微播視界科技有限公司vs百度(Baidu)オンラインネットワーク技術(北京)有限公司、百度ウェブニュース科技有限公司の作品情報ネットワーク伝播権侵害紛争事件
 短編ビデオ作品と著作物性、著作権者とインターネットサービスプロバイダや一般公衆の利益のバランスを確定したもので、インターネットサービスプロバイダが携帯端末用に短編ビデオ作品を一定の条件のもとに提供する行為は伝播権を侵害しないとした。〔北京インターネット法院(2018)京0949民初1号民事判決書〕

6.北京徳農種業有限公司、河南省農業科学院vs河南金博士種業株式有限公司の植物新種権侵害紛争事件
 鄭単958トウモロコシ交配種の契約違反販売に対するもの。〔河南省高級人民法院(2015)豫法知民終字第0056号民事判決書〕

7.北京猎豹(チーター)ネットワーク科技有限公司、北京猎豹(チーター)移動科技有限公司、北京金山安全ソフトウェア有限公司vs上海二三四五ネットワーク科技有限公司の不正競争紛争事件
 セキュリティソフトがコンピュータシステム上で優先的な権限を持つことが認められるが、こうした特権を利用してユーザーやサービスプロバイダに対する関与行為は不正競争行為と認定したもの。〔上海知識産権裁判所(2018)濾73民終5号民事判決書〕

8.深セン市快播科技有限公司vs深セン市市場監督管理局、深セン市騰訊(テンセント)コンピュータシステム有限公司の著作権行政処罰紛争事件
著作物伝播契約違反事件。〔広東省高級人民法院(2016)粤行終492号行政判決書〕

9.晋江市青陽新百倫靴工場、鄭朝忠:莆田市荔城区搏斯達克貿易有限公司、新百倫(New Balance)貿易(中国)有限公司vs深セン市新平衡(New Balance)運動用品有限公司などの商標権及び不正競争紛争中に仮差止拒絶による最高限度額司法裁定事件
 アメリカのニューバランス社は中国で商標第4207906号“NEW BALANCE”、第G944507号を保有し新百倫(New Balance)貿易(中国)有限公司に使用許諾しており、侵害者に対する仮差止命令を請求し、裁判所が仮差止命令を出したが、その命令に応じず、深セン市新平衡(New Balance)運動用品有限公司には100万元、搏斯達克貿易有限公司には50万元、その他には10万元の罰金が科せられた。〔江蘇省高級人民法院(2017)蘇司懲復19号再審決定書;(2018)蘇司懲復4号再審決定書)

10.李功志、巫琴の登録商標表示不正製造処罰事件
 携帯電話用ガラス保護フィルムに「三星」や「華為」などの商標を許可なく使用し、64.8万元(約1100万円)を売上げ、懲役2年、約85万円の処罰が科せられた。〔広東省深セン市中級人民法院(2018)粤03刑最終655号刑事判決書〕

★2018年中国法院50件典型知的財産権事件(内容省略)

(1)特許権侵害紛争14件:発明特許8件、実用新案特許5件、意匠特許1件。
(2)商標権侵害、契約違反紛争16件:商標権のみ8件、不正競争含む2件、著作権・著名商標など含む1件。
(3)著作権侵害、権利帰属紛争事件7件:著作権のみ3件、コンピュータソフト2件、著作権帰属と侵害1件、伝播兼権。
(4)不正競争、独占、植物新品種、契約紛争9件:不正競争4件、事業中傷2件、独占1件、植物新品種1件、契約確認1件。
(5)行政事件9件:特許無効2件、商標異議再審2件、商標出願却下再審1件、行政不服3件。
(6)刑事事件1件:著作権犯罪1件。

http://www.court.gov.cn/fabu-xiangqing-91332.html