【中国】2020年特許侵害訴訟は28%増、CNIPAは中国知識産権保護状況を公示(4月25日)

国家知識産権局(CNIPA)は、4月25日付、「2020年知識産権保護状況」と題する白書を公表した。これには、保護状況、制度建設、審査登録、文化建設と国際協力などの面から2020年の中国知的財産権保護の実践と進捗状況がまとめられているが、毎年注目される中国での知財紛争の統計がまとめられている。最高人民法院の統計は2月27日の投稿をご参照ください。

(1)民事訴訟事件
2020年、地方の各クラス人民法院は民事一審事件を443,326件受理し、前年比+11.1%増加した。内訳は下記の通りだが、特許侵害訴訟が28%と最も増加している。審決は、第一審442,722件処理し、前年394,521件に+12.2%増加、第二審の受理は約-15%の6.7千件減少し42,975件、処理は43,511件で+10.7%増加した。

(2)行政訴訟事件
2020年、地方の各クラス人民法院は行政一審事件を18,464件受理し、前年比+19.11%増加した。この内、特許事件は1,417件(前年比-14.7%)、商標事件は17,035件(前年比+17.8%増)、著作権事件は12件で前年16件から微減である。第二審は6,092件受理、6,183件処理し、前年比それぞれ-16.6%減小、+4%増加した。原審維持率は79%と1%減少した。

(3)刑事訴訟事件
2020年、地方の各クラスの人民法院は刑事一審事件を5,544件受理、5,520件処理し、それぞれ前年比+5.7%、+8.8%増加した。その内、登録商標類侵害事件は4,788件(前年比-3.9%)、著作権侵害事件は273件(前年比+42.9%)、営業秘密侵害事件は45件(前年比+15.4%)である。

(4)地方の行政管理監督局知識産権部門行政処理事件
2020年、地方の知識産権部門のが処理した特許と商標の紛争事件は以下の通り。
特許:虚偽表示事件0.71万件、侵害紛争事件4.2万件(前年比全+9.9%増)
商標:違法事件3.13万件、没収罰金7億元、司法移送事件811件

参照サイト:http://www.gov.cn/xinwen/2021-04/25/content_5602104.htm

【中国】北京・上海・広州法院の2020年度知財訴訟情況(4月22日)

北京、上海、広州知識産権法院が2020年度の知的財産権侵害紛争事件の状況及び十大事件などを公表した、概要は以下の通り。

北京法院
 2020年度の民事・行政訴訟の新規受理と処理状況は、受理件数が66,710件(前年80,165件比で-16.8%減)、内訳は民事事件42,330件(前年57124件比-25.9%減)、行政事件24,380件(前年23041件比+5.8%増)と民事事件が大きく減少した。これに伴い、処理件数も民事事件が42,983件(前年55,803件)、行政事件が23,990件(23966件)と減少した。北京高級人民法院は、併せて、2020年度十大事件と知的財産権民事訴訟証拠規則ガイドラインを公示した。

1.2020年度北京法院知的財産権司法保護十大事件
(1) 愛立信電話股份有限公司と国家知識産権局(華為技術有限公司)の特許無効宣言事件
 新規性と置換常用手段 (2019)京行终513号、(2015)京知行初字第6121号
(2) MASCOTTE HOLDINGS,INC.と国家知識産権局(厦門椰智貿易有限公司)の商標無効宣言事件
 氏名権 (2019)京行终3273号、(2017)京73行初9208号
(3)雲南則道茶業股份有限公司と国家知識産権局(個人)の商標無効宣言事件
 産地 (2020)京行终3768号、(2019)京73行初11089号
(4) Red Bull Vitamin Beverage Co., Ltd.と天丝医薬保健有限公司の商標権帰属紛争事件
 (2020)最高法民终394号、(2018)京民初166号
(5) 愛慕股份有限公司と広東艾慕内衣有限公司の商標権侵害・不正当競争紛争事件
 類似商号・商標 (2020)京民终194号、(2017)京73民初1741号
(6) 北京愛奇芸科技有限公司と杭州龍魂網絡科技有限公司・杭州龍境科技有限公司の不正当競争紛争事件
 インターネットアカウント (2019)京73民终3263号、(2018)京0108民初37522号
(7) 恵州市壱佰娯楽有限公司と中国音像著作権集団管理協会の独占紛争事件
 KTV (2018)京73民初780号
(8) 北京新浪互聯信息服務有限公司と北京天盈九州網絡技術有限公司の著作権侵害・不正当競争紛争事件
(2020)京民再128号、(2015)京知民终字第1818号、(2014)朝民(知)初字第40334号
(9) 優酷網絡技术(北京)有限公司と北京百度網訊科技有限公司の著作権侵害紛争事件
(2017)京0108民初15648号、(2020)京73民终155号
(10) 北京鼎閲文学信息技術有限公司と個人12名の著作権侵害刑事事件
(2020)京0108刑初237号
2.北京高級人民法院知的財産権民事訴訟証拠規則ガイドライン
 当事者の証拠による立証責任について、「最高人民法院による知的財産権民事訴訟証拠に関する若干の規定」第24条の規定に基づく、相手方当事者(被告)に証拠提供を求める場合のガイドラインになり、訴訟の立証手続きで参考とすることができる。内容は、6部からなり、特許、著作権、商標権及び不正競争の紛争における具体的立証証拠の準備や判断など実務家には良い参考となる。
 第一部 総則
 第二部 特許権侵害
 第三部 著作権侵害
 第四部 商標権侵害
 第五部 不正競争紛争
 第六部 付則

参照サイト:http://bjgy.chinacourt.gov.cn/article/detail/2021/04/id/5989576.shtml

上海法院
 2020年度の民事訴訟の新規受理と処理状況は、受理件数が40,136件(前年比+70.2%増)、処理件数が37,435件(前年比+59.2%増)と大きく増加した。上海高級人民法院は、併せて、中英版の「2020年上海法院知識産権司法保護白書」、「上海知識産権法院知識産権保護状况(2020年)」を公表した。この他、「2020年上海法院知識産権司法保護十大事件」、「2020年上海法院知識産権保護力強化典型事件」それぞれ中国版を公表した。

1.2020年度上海法院知的財産権司法保護十大事件
(1) LEGOと人李海鹏など著作権侵害紛争刑事事件
 (2020)沪刑终105号、(2020)沪03刑初28号
(2) 武漢市漢陽光明貿易有限責任公司と上海韓泰輪胎販売有限公司の独占禁止紛争事件
 Hankookタイヤ価格操作と地位濫用 (2018)沪民终475号、(2016)沪73民初866号
(3) 北京搜狗科技発展有限公司と百度在線網絡技術(北京)有限公司、北京百度網訊科技有限公司などの発明特許権侵害紛争事件
(2018)沪民终134号、(2015)沪知民初747号
(4) 孫德斌と上海教育出版社有限公司の著作権侵害紛争事件
(2020)沪民申2416号、院(2020)沪73民终154号、(2019)沪0104民初15960号
(5) 上海諾特飛博燃焼設備有限公司(NTFB)と上海華之邦科技股份有限公司の特許出願権帰属紛争事件
 職務発明・転職 (2018)沪民终515号、(2016)沪73民初874号
(6) 斐珞尔(上海)貿易有限公司と珠海金稻電気有限公司ほか2社の意匠特許権侵害紛争事件
 損害賠償金認定 (2020)沪民终34号、(2018)沪73民初203号
(7) 上海美術電影制片厂有限公司と北京四月星空網絡技術有限公司ほか4社の著作権侵害紛争事件
 キャラクター (2019)沪73民终391号、(2018)沪0110民初11985号
(8) 上海陸家嘴国際金融資産交易市場股份有限公司、上海陸金所互聯網金融信息服務有限公司と西安陸智投軟件科技有限公司の不正当競争紛争事件
 陸金所ロゴ (2019)沪 0115民初11133号
(9) 慈溪市公牛電器有限公司と上海公牛実業有限公司の商標権侵害と模倣紛争事件
 公牛&図形商標 (2020)沪73民终305号、(2018)沪0104民初9377号
(10) 上海フォルクスワーゲン汽車有限公司と沈春健、徐煤巍商標権侵害紛争民刑事件
 エンブレム (2020)沪73民终90号、(2019)沪0110民初6040号
2.「2020年上海法院知識産権司法保護白書」、「上海知識産権法院知識産権保護状况(2020年)
 2015年、2017年から2020年の知的財産権侵害紛争事件の統計及び処理方針などが中国語と英語で紹介されている。

参照サイト:http://www.hshfy.sh.cn/shfy/web/xxnr.jsp?pa=aaWQ9MjAyMTc1OTUmeGg9MSZsbWRtPWxtMTcxz&zd=xwzx

広州法院
 2020年度の民事訴訟の新規受理と処理状況は、受理件数が175,795件(前年比+35.2%増)、処理件数が173,594件(前年比+38.1%増)と大きく増加し、中国全体の1/3を占めている。受理件数の内訳は、著作権事件146,577件(83.3%)、商標権事件12,504件、特許権事件11,757件、不正当競争事件963件、その他の事件3994件となっており、特許・商標事件は全体の13.8%となっている。また、外国企業が関与する事件が1,018件と急増している。
 広州知識産権法院は、併せて、「2020年広州法院知識産権司法保護十大事件」を公表した。

1.2020年度広州法院知的財産権司法保護十大事件
(1) 中興通訊股份有限公司とCONVERSANT Wireless Licensing S.à.r.lの標準必須特許許諾紛争事件
 (2018)粤03民初335号之一
(2) 欧普照明股份有限公司と広州市華升塑料制品有限公司の商標権侵害紛争事件
 (2019)粤民再147号、(2017)粤73民终387号、(2016)粤0115民初4434号
(3) 広州紅日燃具有限公司と広東睿尚電器股份有限公司の商標権侵害・不正競争紛争事件
 (2019)粤民终477号、(2017)粤73民初2239号
(4) 騰訊科技(深圳)有限公司、深圳市騰訊計算機系統有限公司と深圳微源码軟件開発有限公司ほかの不正競争紛争事件
(2019)粤民终2093号、(2017)粤03民初773号
(5) 珠海仟游科技有限公司、珠海鹏游網絡科技有限公司と徐昊など個人との営業秘密侵害紛争事件
 ゲームプログラム (2019)粤知民终457号、(2016)粤73民初1693号
(6) SOCIETEJASHENNESSY&COと広東卡拉尔酒業有限公司などの著作権侵害紛争事件
(2019)粤民终1665号、(2017)粤73民初3414号
(7) 曾永福と東莞怡信磁碟有限公司の実用新案特許職務発明報奨紛争事件
 離職後の起訴 (2019)最高法知民终230号、(2017)粤73民初3581号
(8) 泉芯電子技術(深圳)有限公司と深圳市錦汇鑫科技有限公司ほか集積回路配置設計侵害紛争事件
(2019)粤知民终1号、(2012)深中法知民初字第398号
(9) 劉忠炎の営業秘密侵害紛争刑事事件
(2020)粤52刑终203号、(2020)粤5224刑初129号
(10) 広州藍鯨短視頻科技有限公司と広州市越秀区市場監督管理局の行政処罰紛争事件
 商標権侵害 (2019)粤0101行初4号

参照サイト:http://www.gdcourts.gov.cn/index.php?v=show&cid=226&id=56121

【国際】WIPOは2020年度国際出願統計を公表(3月2日)

WIPOは、2020年度のPCT国際特許出願、マドプロ国際商標出願、ハーグ国際意匠出願及びドメイン名紛争の統計データと分析を公表した。

●PCT国際特許出願
 2020年度は、前年比+4%増の275,900件と過去最高になり、出願国ごとの内訳は、中国 (68,720件、+16.1%増)、アメリカ(59,230件、+3%増)、日本(50,520件、-4.1%減)、韓国(20,060件、+5.2%増)、 ドイツ(18,643件、-3.7%減)と主要国では日本とドイツが減少している。一方、増加が注目されるのは、サウジアラビア(956件、+73.2%増)、マレーシア(255件、+26.2%増)、チリ(262件、+17.0%増)、シンガポール(1,278件、+14.9%増)、ブラジル(697件、+8.4%増)で、過去10年を見るとアジアの増加が顕著で全体の53.7%を占めるようになった。
 出願ランキングトップは、華為(5,464件)、三星電子(3,093件)、三菱電機(2,810件)、LG 電子 (2,759件)、Qualcomm (2,173件)、Ericsson(1,989件)、京東方科BOE(1,892件)、広東移動通信OPPO(1,801件)、ソニー(1,793件)、パナソニック(1,611件)と中国企業が目立つようになった。
参照サイト:https://www.wipo.int/edocs/infogdocs/en/ipfactsandfigures/

●マドプロ国際商標出願
 2020年度は、前年比-0.6%減の63,800件と初めて前年(64,168件)比減少した。出願国ごとの内訳は、アメリカ (10,005件、-0.8%減)、ドイツ(7,334件、-4.7%減)、中国(7,075件、+16.4%増)、フランス(3,716件、-16.2%減)、イギリス(3,679件、+5.1%増)であり、日本は3,117件と―1.3%減少であった。増加が顕著な国はイタリア(2,748件、+3.6%増)、韓国(1,578件、+13.4%増)、カナダ(698件、+94.4%増)、デンマーク(630件、+11.5%増)である。
 出願ランキングでは、Novartis(233件)、華為(197件)、資生堂(130件)、ADP Gauselmann (123件)、L’Oréal(115件)、任天堂(90件)、EURO Games(84件)、Apple(80件)、Syngentia(78件)、RIGO(70件)である。
2020年の新規加盟国はないが、2021年は1月1日よりイギリス指定にジブラルタルとガンジーが拡張され、1月12日よりトリニダード・トバゴ、5月24日よりパキスタンの指定が可能となった。

●ハーグ国際意匠出願
 2020年度は、前年比-1.7%減の5,792件18,580意匠になり、意匠数による出願国ごとの内訳は、ドイツ (3,666意匠、-18.7%減)、アメリカ(2,211意匠、+62.7%増)、スイス(1,944意匠、-10.8%減)、韓国(1,669意匠、-39%減)で、日本は(408件1,151意匠、+18.2%減)であった。増加した国はアメリカ、中国(826意匠、+13.4%増)とトルコ(524意匠、+13.4%増)のみである。
 出願ランキングでは、三星電子(859件)、Procter & Gamble (623件)、Fonkel Meubelmarketing (569件)、Volkswagen (524件)、北京小米(516件)、LG電子(478件)、Philips Electronics(463件)、Wenko-Wenselaar(362件)、Magic Leap(320件)、Lampenwelt(276件)である。日本企業のトップは三菱電機で107件である。

参照サイト:https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2021/article_0002.html