国家知識産権局商標局評審部は、7月21日付、2020年度の商標出願の審判結果に対する行政不服訴訟の結果に関する分析報告を商標局のサイトで公表した。この分析は毎年行われており、出願の却下、異議や無効取消の申立をする際に主張する理由の効果が現在の審理傾向でどうかを判断・理解するために有効な情報である。以下は、分析報告の主要データ部分を要約で紹介する。
1.2020年行政不服訴訟情況
2020年の商標局評審部の評審事件は35.8万件(前年比+6.2%)で、一審事件は14,977件(前年比+4.8%)である。一審の裁決数は全体の4.18%とここ数年同じレベルである。第二審控訴は5,933件(前年比+5.1%)、最高人民法院及び北京高級人民法院での聴聞或いは再審手続きは939件(前年比+163.3%)と大きく増えた。
一審判決は14,708件(前年比-5.3%)、裁定は503件(前年比-7.7%)と減少した。この理由は前年までの滞留事件を処理したためである。一審敗訴は3,621件(前年比-9.7%)と大きく減少した。このうち事情の変更による敗訴事件は2,179件(前年比+122.6%)と敗訴総件数の30.2%(前年44.3%)と大きく占める結果となり、前年比でも大きな理由となった。
二審判決は6,293件(前年比+118.6%)と処理件数増に伴い大きく増加した。この内、敗訴件数は2,256件(前年比+138.3%)と全体の35.8%を占める。事情の変更による敗訴案件は983件(前年比+149.4%)で、これを除く敗訴率は20.2%である。
再審判决及び裁定は847件(前年比+226.5%)で、判決230件、裁定が617件と判決は27.1%である。なお、事情の変更の事件は169件(前年39件)と多くを占めている。
2019-2020年行政不服事件統計
年度 | 2020年 | 2019年 | 増減 |
評審審決 | 35.8万 | 33.7万 | +6.2% |
第一審受理 | 14,977 | 14,292 | +4.8% |
判決 | 14,708 | 15,535 | -5.3% |
敗訴 | 3,621 | 4,008 | -9.7% |
裁定 | 503 | 545 | -7.7% |
第二審受理 | 5,933 | 5,643 | +5.1% |
判決 | 6,293 | 5,306 | +118.6% |
敗訴 | 2,256 | 1,631 | +138.3% |
再審受理 | 939 | 575 | +163.3% |
判決 | 230 | 374 | +226.5% |
裁定 | 617 |
2.主な特徴
(1)評審事件に対する不服訴訟数の安定と敗訴率の低下
審決数は引き続き増加しているが、行政被訴率は4.2%程度に落ち着いており、審決の約96%は審査結果が有効に受け入れられており、行政裁決方式の紛争解決の利便性と効率が具現化されている。一方、2020年の不服訴訟での敗訴率は昨年の13.9%から9.8%に下がっており、この結果は一定程度で商標審査部門と裁判所の法律適用基準が一定程度統一されていることを示している。従って、行政と司法の現在の法律規則の適用は当事者に安定した見通しを提供しているだけでなく、商標行政紛争発生のもとが解消される傾向や訴訟原因管理の効果が発揮される傾向がある。
2017-2020年評審件数&行政不服提訴件数推移
年度 | 審決総数 | 提訴数 | 提訴率 |
2017年 | 16.89万件 | 0.93万件 | 5.5% |
2018年 | 26.52万件 | 1.15万件 | 4.3% |
2019年 | 33.71万件 | 1.43万件 | 4.2% |
2020年 | 35.83万件 | 1.5万件 | 4.2% |
2020年第一審事件種別敗訴統計
事件 種別 | 2020年 判決 総数 | 敗訴数 (事情の変更) | 敗訴率 (除事情 の変更) | 2019年 敗訴率 |
拒絶査定 | 9,500 | 2,594 (2,147) | 27.3% (4.7%) | 25% (7.5%) |
出願却下(含異議) | 174 | 16(6) | 9.2% (5.7%) | 12.5% (10%) |
無効宣告 | 3,636 | 680(26) | 18.7% (18%) | 22.9% (22.2%) |
取消 | 1,398 | 331 | 23.7% | 31.5% (18.8%) |
2019-2020年の具体的敗訴原因項目毎件数
敗訴原因 | 条文 | 2020年 | 2019年 |
事情の変更 | 30条 | 2,179 | 1,777 |
標識類似 | 30条 | 187 | 444 |
商品類似 | 30条 | 100 | 177 |
引用商標権者取消 | 30条 | 104 | 93 |
共存契約 | 30条 | 114 | 110 |
欺瞞・誤認混同 | 10条1.7項 | 100 | 137 |
公序良俗違反など | 10条1.8項 | 28 | 43 |
その他の非登録事由 | 10条その他 | 13 | 25 |
顕著性 | 11条 | 64 | 114 |
馳名商標 | 13条 | 112 | 172 |
関係者の抜駆け登録 | 15条 | 15 | 41 |
先の権利 | 32条 | 37 | 85 |
抜駆け登録 | 32条 | 37 | 36 |
不正手段 | 44条1項 | 145 | 138 |
復審使用証拠の取消 | – | 331 | 527 |
手続き及びその他 | – | 51 | 65 |
(2)再審事件数の持続的増加と事情の変更による顕著な判断の変更
評審、第一審、第二審の事件数の増加は比較的落ち着いているところ、再審請求事件は1.6倍と急増した。多くの当事者が最後まで手続きを訴求する理由は、新たな証拠や立証による事情の変更に期待しているからであるが、実際には、裁定が下された617件では再審請求後も対象商標権の権利情況が確定せず却下処分を受けることになった。これは再審請求制度の本来意図された法的救済手続きに反するもので、法的既判力を損なう行為と言える。
3.具体的分析 (内容省略)
3.1 商標法第10条1.7項の活用
3.2 既存の共存と更新登録の除外問題
3.3 先の権利の失効による事情の変更の認定
3.4 氏名権の保護での人格権益と財産権益の区別
3.5 商標登録権利確認行政訴訟の審理範囲
上記の分析の一部はひとりごとに掲載する。
参照サイト:http://sbj.cnipa.gov.cn/gzdt/202107/P020210721522288976605.pdf