【中国】国家知識産権局2022年度報告(6月5日)

国家知識産権局(CNIPA)は、6月5日付、特許や商標の出願統計ポートである国家知識産権局2022年度報告を公示した。この公示により2022年度の特許と商標の出願状況を知ることができる。

20212度の実用新案特許出願は非正常特許出願対策などで減少するのではと注目されていたところ295万件と前年比+3.5%伸びた。発明特許出願は161.9万件と前年比+2.1%の増加、意匠特許出願は79.4万件と前年比▲1.4%減少した。なお、今年2023年の1-4月は当社サイトで報告のように、実用新案特許は対前年比▲26.8%の減少となってる。
 一方、2022年の外国からの出願は全体的に減少した。日本からの発明特許出願は近年減少を続けており対前年比▲3.7%と減少し。実用新案も意匠特許も出願が減少した。
 2022年5月に加盟が発効したヘーグ協定国際意匠出願は1286 件、外国からの中国指定は607件であった。

発明特許取得トップ10は以下の通り:
(中国)1.Huawei華為技術5,805件、2. Tencent騰訊4,076件、3.Sinopec中国石油化学3,772件、4.Oppo広東移動通信2,875件、5.BOE京東方科技2,748件、6.Gree珠海格力電器2,545件、7.inspur浪潮2,426件、8.Vivo維沃移動通信2,327件、9.ZTE中興通訊1,862件、10.Baidu百度1,483件。
(外国)1.Samsung三星電子1,785件、2.トヨタ自動車1,729件、3.Qualcommクアルコム1,231件、4.本田技研1,213件、5.Boschロバート・ボッシュ1,199件、6.三菱電機1,086件、7.LG電子886件、8.Fordフォードモーター868件、9. パナソニック855件、10.キャノン849件。

審査関連では、発明特許の平均審査期間が16.5か月(前年18.5か月)、高価値特許の審査期間が13か月(前年13.3か月)とそれぞれ短縮された。

復審(審判)関連は、以下の通り。特許出願拒絶不服は実用新案特許出願は259.1%大きく増加しているが、これは非正常出願との認定を受けた案件の対応と思われる。発明特許出願が前年比+31.4%、意匠特許出願が85.8%といずれも増加が大きい。特許無効宣告は紛争が減少しているとの報告もあり、何れの種別も前年を下回った。

商標は出願も登録も▲20.5%と大きく減少した。今年2023年1-4月期も▲49.5%の減少しており、悪意出願などに対する却下処理や地方政府の知識産権局の対応によるものと思われる。外国からの出願も▲17.8%減少したが、今年2023年1-4月期も▲46.1%の減少している。異議申立、無効取消は相変わらず30%程度の増加を示している。

異議申立は▲17.2%減少しており、悪意出願や非正常出願が減少しているものと思われる。無効取消のみが+4.2%と増加した。

詳細は報告書でご確認ください。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/col/col3249/index.html

【中国】CNIPA2022年商標異議・無効10大事例(4月26日)

国家知識産権局は、2022年に705.6万件の商標出願を審査し、悪意のある商標先取出願3.5万件、社会公共の利益を損なう悪意商標出願3,192件を却下した。一方、商標異議申立事件17.6万件、商標無効事件41.2万件を審査し、悪意商標出願・登録6,102件を取締った。そして、2022年の典型事例10大事例としてブランドのフリーライドなど、異議と無効それぞれ5件を10大事例として公表した。

●2022年商標異議・評審10大事例

事例1.第43541282号“花满楼”(30類)商標異議申立事件
商標出願人:四川普度茶叶有限責任公司
異議申立人:鄭小龍(引用小説著書の娘)
【概要】異議不成立。当該標章は、小説「陸小鳳伝奇」の登場人物名で「先の権利」(法32条)に違反との異議理由に対し、評審は唐、宋の詩人の作品に登場しており、異議証拠はお茶などの関連商品での誤認混同を立証するには不十分と認定した。先行する合法的権益は保護されるが、不当に自由に制限することは認められない。

事例2.第58141161号“张子憨” (20類)商標異議申立事件
商標出願人:曹雪花
異議申立人:広州市天河区棠下松本喪喪服飾工作室
【概要】異議成立、出願却下。当該標章は、異議申立人が「抖音(中国版TikTok)」で使用しているアカウント名称で「先の権利」(法32条)に違反との異議理由に対し、評審は提出された当該アカウントが称賛されているスクリーンショットなどと総合的な調査により当該アカウント名称が衣料品分野で一定の知名度があること、出願人に一定の悪意があることも認先し、先の権益を侵害するとして出願を却下した。これは新しいメディアのアカウントに民事権益を認めた事例である。

事例3.第54491795号“华莱仕福”(35,42類)商標異議申立事件
商標出願人:唐山米源企業管理諮詢有限公司
異議申立人:上海榕贏品牌管理有限公司
【概要】異議成立、出願却下。当該標章は、先登録第23667026号 (35類)及び第10912752号(43類)の「华莱士」と類似商標との異議理由に対し、本願は第35類広告、第43類レストランを指定し、引用は第35類ホテル、第43類喫茶店と一部類似サービスになるが、出願人の法人登記が2021年に取消されていることから、復審に答弁もなく、主体資格がないため(法4条)、出願を却下した。なお、本件出願に代理人はいない。

事例4.第54053085号“唐妞” (11類)商標異議申立事件
商標出願人:河南広播電視台
異議申立人:陝西歴史博物館(陝西省文物交流中心)
【概要】異議成立、出願却下。当該標章は、先登録第17454729号、第17455036号、第17455700号の同一商標とは第29、30、43類と区分が異なり類似を構成しないが、異議申立人が提出した証拠によると「唐仕女俑」をモデルにし創作された唐文化のイメージ名称で、新聞報道、出版図書、店舗の設立などで宣伝、使用し、すでに全国的に有名となっていることから、復審は出願人は知り得る状況にあると認定し、先行権益を損害するとして(法32条)、出願を却下した。

事例5.第52917720号“惠民南粤家政” (45類)商標異議申立事件
商標出願人:惠州市南粤家政務有限公司
異議申立人:広東省人力資源和社会保障庁
【概要】異議成立、出願却下。当該標章は、広東省委員会、省政府が初めて提案し、複数の政府部門が共同で実施している重要な民生プロジェクトの名称“南粤家政”と類似し社会に欺瞞と悪影響があるとの異議理由に対し、復審は出願人が当該出願に政府の許可を提出していないこと、「恵民」には「人民に利益を与える」という意味があり、それを付加することでサービスの提供元を誤認しやすくするとして(法10条1項(7)、(8)号)、出願を却下した。

事例6.第13571777号“东来顺”(17類)商標無効事件
商標権利者:劉玉志
無効申立人:北京東来順集団有限責任公司
【概要】無効成立。本商標は、中国でレストランの老舗ブランド(老字号)であり、無効宣告請求時は既に除斥期間5年を過ぎていたため、申立人は係争商標の出願日前に既に当該商標が関連公衆に知られている馳名商標の証拠(法13条)に加え、商標権者が事業範囲を超えて出願していること、標章の独創性や知名度の証拠で商標所有者に悪意があったとの理由での無効主張に対し、評審は馳名商標としての証拠により老字号と認定し、商標権者に主観的悪意があり、誤認混同惹起、申立人の権益の損害があるとして(法13条3項)、無効宣告した。

事例7.第33194676号“正泉茂”(30類)など商標無効事件
商標権利者:林紅紅
無効申立人:泉州市鯉城鯉中泉茂糕点店
【概要】和解成立。本事件は、第25908980号“泉茂”、第33187494号“林记正泉茂”、第33194676号“正泉茂”の商標無効及び第26373585号“泉茂世家 QUANMAO PASTRY”出願拒絶再審事件などに関し、当事者は叔父と甥の関係で、「正泉茂」標識はその家族が伝承使用している屋号や商標で、主に緑豆餅に使用され、泉州地区で比較的高い知名度があるが、当事者双方は10年以上にわたり、20件以上の商標出願事件を起こしている。合議体は現地での巡回口頭審理を行い和解に導いた。

事例8.第44714668号“叁零叁”(19類)商標無効事件
商標権利者:天津市参零参物流有限公司
無効申立人:天津市万栄化工工業公司
【概要】無効成立。申立人はグループ企業傘下の会社であり、その元法定代表者が職務中に無断で53件の登録商標を上記商標権者に譲渡し、その後の民事訴訟により返還命令が下された((2021)津01民終131号)が処理未完了、一方、商標権者は違法譲受した商標の類似商標を出願登録したことから、信義誠実の原則違反など(法4条、7条、10条1項(7)、(8)号、44条)を理由とした無効主張に対し、評審は主張の一部は立証が不十分であるが、裁判の通り申立人に不利益となる譲渡がある情況で、本登録出願に正当化されず、信義誠実の原則違反し、不正な手段によるものとして(法44条1項)、無効宣告した。

事例9.第16038591号“伍连德医疗及図” (41,42,43,44,類)商標無効事件
商標権利者:伍連德国際医療管理中心有限責任公司
無効申立人:黄建堃
【概要】無効成立。本商標の「伍连德(伍連德)」は、中国での衛生、防疫、検疫事業の創始者、この分野の先駆者であり、中華医学会の初代会長でもあるところ姓名権を侵害する理由での無効主張に対して、評審は当該登録商標の顕著な識別部分は「伍連徳」であり、登録されたサービスに使用すると、同氏と何らかの特定の関連がある、またサービスの提供元を誤認混同させるとして法10条1項(7)号」、無効宣告した。

事例10.第48720058号“莱迩” (43,類)商標無効事件
商標権利者:郝磊
無効申立人:上海莱迩酒店管理有限公司
【概要】無効成立。本商標の「莱迩」は、申立人がホテル事業に使用している屋号であり、商標権者は元従業員が宿泊、託児所、老人ホームなどのサービスに登録したことから主観的悪意を理由とした(法7、9、10、32条ほか、不競法など)無効主張に対して、評審は申立人の先の使用、元従業員の職歴、商標権者の他の類似商標出願などから当該商標を知っていたことを合理的に認定でき、正当な出願とは言えないとして(法15条2項)、無効宣告した。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2023/4/26/art_3207_184727.html

【中国】CNIPA2022年特許無効審判10大事例(4月26日)

国家知識産権局(CNIPA)は、2010年から毎年て再審(復審)と無効審判(無効宣言)事件から10大事件を選出発表し、特許審査基準の解釈などの役割を果たしている。2022年は無効事件として、発明特許8件、実用新案特許1件、意匠特許1件が挙げられ、事件はAI(人工知能)、SEP(標準必要特許)、バイオ医薬品、漢方薬、新エネルギー、新ビジネスモデルなどの発明技術、秘密保持審査の適用、意匠と商標権の衝突、優先権の認定など比較的典型的で広い問題に注目している。

●2022年特許無効審判10大事例

事例1. 「B型肝炎ウイルス(HBV)iRNA組成物及びその使用方法」発明特許無効事件
特許番号:108064294B (ZL201580072874.0)
特許権者:Alniram Pharmaceutical Co., Ltd.(阿尔尼拉姆医药品有限公司)
無効申立:張媛
【概要】審決第58530号、補正により有効維持。遺伝子治療分野での低分子干渉RNA siRNA(small interfering RNA)に代表される短い核酸配列の進歩性判断プロセスを説明すると同時に明細書の実験データと理論的予想に乖離がある場合、明細書の開示をどのように判断すべきかを示している。

事例2.「複方血栓通漢方製剤及びその製造方法」発明特許無効事件
特許番号:101716254B(ZL200910215815.0)
特許権者:広東衆生薬業股份有限公司
無効申立:楊州中惠製薬有限公司
【概要】審決第59383号有効維持。主に網膜静脈閉塞症と狭心症の治療に使用される複方血栓通は年間売上10億元以上のベストセラーの漢方薬製品で、特許実験データの真実性の判断と証明基準、明細書に十分な開示の有無及びサポート要件を満足しているかどうか判断すべきか、また組合せ示唆を判断するときの当業者の動機の判断も示している。本件特許はこれまで特許侵害訴訟3件で活用され、無効が9回チャレンジされている。

事例3.「電極シート及び当該電極シートを含むリチウムイオン電池」発明特許無効事件
特許番号:104466097B(ZL201410782528.9)
特許権者:寧德新能源科技有限公司、東莞新能源科技有限公司
無効申立:珠海冠宇電池股份有限公司、福建翔雲科技有限公司
【概要】2件の無効請求を合併審理、審決第59830号補正により有効維持。ポリマーリチウムイオン電池に関し、業界上位企業同士の紛争。進歩性判断において、発明が実際に解決した技術的課題を確定するとき、全体として複数の技術的特徴に基づく場合、単一の技術特徴自体の固有の機能或いは作用だけにしてはならず、明細書の関連する技術特徴とその機能と作用の記載と、技術的効果を組合せ、当業者の立場から全体的に考慮し、客観的な認定すべきことを示している。

事例4.「伸縮可能な伝動アセンブリ装置及び昇降支柱」実用新案特許無効事件
特許番号:207016433U(ZL201720389490.8)
特許権者:浙江捷昌銭性駆動科技股份有限公司
無効申立:袁小中
【概要】審決第 55586 号無効(法20条1項)。本件は中国特許法に秘密審査義務条項が導入されて初めて適用された事例で、法定義務である中国で完成した発明であること、国外で特許を得ようとしたことを立証する義務、或いは証拠に基づき否定する義務が双方にあり、無効申立人の立証が高い確率で要件を満たしている場合、特許権者は外国で発明が完成したことを反証する証拠を提出する義務があることを示している。

事例5.「セロトニン再摂取阻害剤としてのフェニルピペラジン誘導体」発明特許無効事件
特許権番号:1319958C(ZL02819025.4)
特許権者:H. Lundbeck A/S (H•隆德贝克有限公司、DK)
無効申立:成都康弘薬業集団股份有限公司
【概要】審決第54793号有効維持。抗うつ薬のボルチオキセチン世界95か国と地域で販売が承認されており、本件はジェネリック薬申請人が原薬企業の特許に無効をかけた事件であり、技術的効果、医薬品化合物の十分な開示の要件の判断が適応症間の関係を明確にしていること、及び体外試験結果は開示に対して十分に意義があり、その結果に基づき実証され効果も特許法上の技術効果と見なすべきであることを示している。

事例6.「ユーザ機器(UE)におけるリンク最大伝送単位(MTU)の設定方法」発明特許無効事件
特許権番号:101663864B(ZL200880009370.4)
特許権者:Ericsson AB (艾利森电话股份有限公司、SE)
無効申立:Apple Computer Trading (Shanghai) Co., Ltd.(苹果電脳貿易(上海)有限公司)
【概要】審決第58954号無効。本件は5G通信技術の標準必須特許であり、世界的通信適用技術仕様とレポートの策定を専門機関3GPPのメーリングリスト文書の公開の有無が特許法上の公開の要件(公知)に適合するかどうかの認定で、その運用メカニズム、実際の検証に基づき公知と判断された。2022年12月に当事者はグローバル特許ライセンス契約を提携し和解している。

事例7.「自動車」意匠特許無効事件
特許権番号:307018088S(202130363449.5)
特許権者:Renault S.A. (雷诺两合公司、FR)
無効申立:華人運通控股(上海)有限公司
【概要】審決第57220号無効。本件は、意匠特許権と先行商標権(エンブレム、中国、欧米で登録)との抵触(法23条3項先に取得した合法的権利)の審査に関し、比較する際に先行商標の実際の使用状態及び広範な使用による知名度と影響力(商標としての機能の発揮)と一般公衆の標準的注意力を基準による類否判断を考慮することを示している。係争当事者は国内外で多くの訴訟事件を起こしている。

事例8.「電動立乗車及びその支持カバー、始動方法及び回転方法」発明特許無効事件
特許権番号:108275231B(201810180450.1)
特許権者:浙江騎客機器人科技有限公司
無効申立:浙江九華進出口有限公司、万院安、王彬
【概要】審決第57433号無効。本件は、分割出願の記載要件の審査に関し、親特許出願が認可後、6件の分割出願をした1つであり、原出願明細書に基づき補正を加えた請求項が元の記載範囲を超えている(実43条)と判断された。本件当事者には複数の訴訟があり、無効決定後それらはすべて棄却された。

事例9.「廃棄鋼を分類するニューラルネットワークモデルの構築方法」の発明特許無効事件
特許権番号:110660074B(201910958076.8)
特許権者:北京同創信通科技有限公司
無効申立:衡陽鐳目科技有限責任公司
【概要】審決第55072号有効維持。本発明は鉄鋼業界でのAI技術の応用で鋼材の特徴中手と分類分けをディープラーニングにより実現しており、現在の中国のAI技術特許審査基準でも進歩性判断が課題となっている。本件はアルゴリズムの特徴を含む発明特許の進歩性判断基準を細分化しアルゴリズムの特徴を含む発明特許に対して創造的な判断を行う場合、アルゴリズムと適用シナリオを全体的に考慮しなければならず、特にアルゴリズムを異なるシナリオ適用した後にアルゴリズムの訓練モード、重要なパラメータ或いは関連ステップが実質的に調整されたかどうか、その調整が特定の技術的課題を解決したかどうか、有益な技術的効果が得られたかどうかを考慮しなければならないことを示している。

事例10.「効果的に不連続通信を提供する方法及び装置」の発明特許無効事件
特許権番号:101637052B(200880008630.6)
特許権者:Nokia Corporation (诺基亚技术有限公司、US)
無効申立:OPPO広東移動通信有限公司
【概要】審決第54441号補正により有効維持。本件は優先権主張が成立するかどうかの判断に関し、基礎となるPCT出願での優先権譲渡証明書の提出要件不備に対し、無効手続き中に特許権者が提出した優先権譲渡陳述書を有効と認定した。当事者は複数の国で係争関係にある。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2023/4/26/art_3207_184728.html

【中国】上海法院2022年知的財産権10大事例(4月25日)

上海高級人民法院は、4月25日に記者会見を行い、「2022年上海法院知識産権裁判白書」及び「上海知的財産権法院知的財産権司法保護状況(2022)」を公表するとともに、上海法院の「2022年度知的財産権10大事例」と「知的財産権保護レベル強化典型事例」を発表した。2022年に上海市の裁判所が受理した知的財産権訴訟事件は42,150件、審決42,763件と前年比▲20.9%、▲12.9%それぞれ減少した。一審受理事件のうち、特許、コンピュータソフトウェア、営業秘密などの技術系事件が4,288件と98.8%を占めており、半導体チップ、新材料などの重点分野や重要なコア技術に関する事件が少なくない。また、懲罰的賠償請求事件が22件受理され、15件が処理された。

●2022年知的財産権10大事例

事例1:動的GUI意匠特許侵害事件 (2019)沪73民初399号
 北京金山安全软件有限公司vs上海触宝信息技术有限公司ほか
 【原告は保有する意匠特許ZL201830455426.5、「移動通信端末用グラフィカルユーザーインターフェイス」を被告ソフトウェアの動的GUIが侵害したと提訴、裁判所は動的GUIにおいて最初のインタフェース全体設計とその動的変化の全ての変化過程が全体的視覚効果に及ぼす差異の程度を同時に考慮すると両者の全体的視覚効果に実質的差異がない、一方、製造販売行為が実質的な侵害行為と認定し、侵害の停止、35万元の損害賠償を命令。】

事例2:“十万个为什么(10万のなぜ)”商標権侵害及び不正競争事件 (2020)沪0107民初2585号、(2021)沪73民终600号
 上海少年儿童出版社有限公司vs四川天地出版社有限公司ほか
 【原告の「十万のなぜ」は1961年に出版されて以来、現在まで続く一連の児童科学図書で高い知名度があり、その商標権(17085619)取得後、被告の同一名や類似名称の図書出版物、ウェブサイトでの使用を商標権侵害と不正競争で提訴、裁判所は、「十万のなぜ」は問答式の図書の一般名ではなく長期の使用による知名度と識別力があり他人の使用は誤認混同が生じると商標権侵害を認定、被告のその使用は同業者として誤認混同惹起、他人の商品の固有の名称を無断で使用する不正競争行為を構成するとし、侵害停止、影響の除去、60万元の損害賠償を命令。控訴は原審維持。】

事例3:“天地华宇(天地華宇)” 商標権侵害及び不正競争事件 (2019)沪73民初401号、(2021)沪民终269号
 上海华振物流有限公司ほかvs天地华宇集团有限公司ほか
 【原告は「天地华宇」に36類の物流をカバーする登録商標4707630などを保有し、2007年には一定の知名度があるところ、2008年に無錫市に物流会社として設立された被告は2017年からグループ会社含め社名に「天地华宇」含めるように変更し、SNSやウェブサイトで当該商標を使用しているとして提訴、裁判所は商標権侵害と不正競争行為(同じ名称の使用)を認定し、侵害停止、企業名称の変更、影響の除去、60万元の損害賠償を命令。争点は、共同被告の一つが実際に社名を使用していない事実があり、二審ではその発生のリスクを認定した。】

事例4:“琅琊榜(狼牙榜、Nirvana in Fire)”密室ゲーム著作権侵害及び不正競争事件 (2021)沪0110民初17435号
 东阳正午阳光影视有限公司vs北京叁零壹文化传播有限公司ほか
 【原告は、人気のある原本小説の作家の許諾のもとにゲーム及び派生作品の開発の独占的権利を保有し、被告の提供する「狼牙榜の権謀天下」と題する密室ゲームは著作物を改変したもので、かつ商品名として一定の知名度のある「狼牙榜」を大量に宣伝などで使用しているとして提訴、裁判所は被告ゲームのストーリーはオリジナルから離れているがゲームで展開されるプロセスは改変にあり、「狼牙榜」は高い知名度と栄誉を持ち一定の影響を持つ商品名と認定し、侵害停止、105万元の損害賠償を命令。共同被告のプラットフォーム事業者は非侵害判断。】

事例5:外国貿易顧客情報営業秘密侵害事件 (2020)沪0104民初2330号、(2021)沪73民终805号
 容重实业(上海)有限公司vs上海路漫实业有限公司など
 【原告は2015年からドミニカ、パキスタンなどの顧客と金属材料の輸出入業務に従事しており、顧客ごとの理引き条件や仕様を「Top Secret」と記載し管理するとともに従業員にも守秘義務を課している。被告は同社の外販部に勤務後退社し、妻と被告会社を設立し、 前出顧客と取引を行っていた。これを知った原告は当該顧客情報の使用が営業秘密侵害を構成するとして提訴、一審裁判所は当該ビジネス情報が営業秘密であること、被告在職中に営業秘密を取得したことを認定し、侵害停止と475万元の損害賠償を命令。二審では顧客開拓過程の事実認定となったが立証不十分で一審判決維持。】

事例6:“支付宝(AliPay)”携帯アプリに注意喚起戦略不正競争事件 (2020)沪0115民初87715号、(2021)沪73民终852号
 支付宝(中国)网络技术有限公司vs江苏斑马软件技术有限公司
 【原告の決済アプリは大きな利用者と取引量があり携帯電話で利用されている。被告のアプリはアップルiOSで動作する携帯電話にインストールされると、利用者のECサイト出決済時に被告の決済アプリにジャンプするかどうか確認するポップアップが割り込み表示され、そのまま開くを選択すると被告サイトでの決済を実現する。原告は利用者から苦情、協力事業者から安全性の警告を受けたことから不正競争行為と提訴、裁判所は携帯アプリの正確な運用の慣行、アプリ決済機能の事業モデルの妨害、無秩序の決済スキームの導入による利便性や安全性に深刻な影響があり、利用者だけでなく公共の利益にも損害が及ぶと認定し、影響の除去、48.5万元の損害賠償を命令。控訴棄却。なお、本件では訴訟前仮差止が認められている。】

事例7:中国サッカースーパーリーグ写真独占使用許諾での市場での支配的地位の濫用事件 (2020)沪73知民初736号、(2021)最高法知民终1790号
 体娱(北京)文化传媒股份有限公司vs中超联赛有限责任公司、上海映脉文化传播有限公司
 【中国サッカー協会からスーパーリーグの無形資産の開発運営の委託を受けた被告の中超联赛社は中国スーパーリーグ公式画像協力機構の運営者の公開入札を行い、上海映脉社が落札し、同機構の名称の使用権や撮影した画像の独占権を獲得した。原告は応札したが失注した。その後、リーグの写真の使用者や報道機会などの使用に制限が発表され、商業的使用が難しくなったため、原告は被告の市場での支配的地位を濫用し市場の競争を排除し、原告及びその他の取引相手の合法的利益を損害したとして提訴、裁判所は入札による参入障壁の不存在、上海映脉社の民事権益などに合理的理由があり、市場に対して排除または制限競争の効果を生んだ証拠がないとして、提訴棄却。二審では市場シェアから支配的地位にあることは認定したものの、一審判決維持、控訴棄却。】

事例8:“龙井茶(龍井茶)”地理表示商標侵害行政処罰不服事件 (2021)沪0115行初399号、(2022)沪73行终1号
 特威茶餐饮管理(上海)有限公司vs上海市浦东新区知识产权局
 【第三者の浙江省農業技術普及センターは「龙井茶Longjing Tea」の登録証明商標5612284を30類に保有している。原告は、シンガポールから茶葉を輸入し、「盛玺龙井茶」や「龙井茶」をパッケージに無断で表示し国内で販売した。被告知識産権局は商標法57条2項に該当する侵害行為として、侵害停止、侵害品没収、54.5万元の罰金を科した。行政不服再審も処分を維持したため、被告は取消を求めて提訴。裁判所は、原告の立証不十分、被告の処分は合法的として請求棄却。控訴棄却。】

事例9:レーザー加工海賊版ソフトウェア販売による著作権侵害刑事事件 (2022)沪0112刑初577号
 被告 王某氏
 【上海柏楚電子科技股份有限公司が販売するレーザー切断ソフトウェア(CypNest)の海賊版を第三者から入手し、当該ソフトを複製しTaobaoやWeChatを通じて34.4万元売上げた。公安局は逮捕、被告も犯罪事実を認めた、当該ソフトウェアの鑑定をしたところ90%以上の類似度があり、告訴した。裁判所は、著作権侵害罪を認定したが、被告が自白するなどの贖罪の行動が見られるため処罰を軽減し、懲役3年、罰金20万元、被害者への賠償を命令。本件ではソフトウェアプログラムの実質的な類似で比較方法、複製比率、除外事項に基づく判定である。】

事例10:中芯国际公司の営業秘密侵害刑事事件 (2022)沪03刑初67号
 被告:周某某氏
 【被告は中芯国際集成電路制造(上海)有限公司の従業員であり、労働契約や秘密保持契約に違反し、会社のプロセスセンサー半導体回路技術情報を持ち出した。被告は逮捕され、告訴された。裁判所は、被告は会社との約定に違反し、不正な手段で営業秘密を入手し、重大な損害を与えた営業秘密侵害罪を認定したが、被告が自発的に供述したことを自首と判断したため処罰を軽減し、懲役1年、執行猶予1年、罰金6万元を科し、関連機材を没収。】

●2022年上海法院知的財産権保護レベル強化典型事例
事例1:“怡宝”商標権侵害と不正競争事件 (2020)沪73民初787号、(2022)沪民终73号
 华润怡宝饮料(中国)有限公司vs上海洁士宝日化集团有限公司
事例2:“百强家具”商標権侵害と不正競争事件 (2018)沪73民初515号、(2020)沪民终256号
 北京世纪百强家具有限责任公司vs上海朗聚实业有限公司ほか 
事例3:“威乐”商標権侵害と不正競争事件 (2019)沪0104民初19337号、(2021)沪73民终744号
 威乐(中国)水泵系统有限公司vs威乐水泵(上海)有限公司
事例4:“华为”商標権侵害事件 (2022)沪0116民初11663号
 华为技术有限公司vs暨奢服饰(上海)有限公司
事例5:“N”標識模倣商品不正競争事件 (2017)沪0115民初1798号、(2020)沪73民终327号
 新百伦贸易(中国)有限公司vs纽巴伦(中国)有限公司、赵某某
事例6:假冒“美心”模倣月餅登録商標侵害刑事事件 (2021)沪03刑初113号、(2021)沪刑终122号
 被告:庄某某など
事例7:児童書の海賊版製造販売による著作権侵害刑事事件 (2021)沪0110刑初517号
 被告:张某某など
事例8:従業員の転職による生産ライン図面営業秘密侵害刑事事件 (2021)沪03刑初167号
 被告:黄山富田精工智造有限公司、方某某など
事例9  北京冬季五輪関連番組の著作権侵害提訴前仮差止事件 (2022)沪0115行保1号
 央视国际网络有限公司vs珠海创嗨新网络科技有限公司
事例10 “剧本杀(殺人ミステリー)”商標権侵害の提訴前仮差止事件 (2021)沪0107行保1号
 湖南快乐阳光互动娱乐传媒有限公司vs上海新革文化传播有限公司ほか

参照サイト:上海高級人民法院

【中国】最高人民法院による2022年中国法院知的財産権10大事例(4月20日)

最高人民法院は、4月20日付、例年通り、中国法院知的財産権10大事例と知的財産権50典型事例を発表した。10大知識産権事例の概要は以下の通り:

事例1.「大头儿子(頭の大きい息子)」著作権侵害事件 (2022)最高法民再44号
 杭州大头儿子文化发展有限公司vs央视动漫集团有限公司
 【委託著作物、法人著作物及び特殊業務用著作物の判断基準、所有権証拠の分析・特定方法を明確化】

事例2.「ED-71製剤」発明特許侵害事件 (2022)最高法知民终905号
 中外製薬株式会社vs温州海鹤药业有限公司
 【2020年特許法改正で導入された医薬品特許リンケージ制度導入後の最初の事件、ZL2005800098777.6の保護範囲の確認】

事例3.「水道事業」市場での支配的地の濫用紛争事件 (2022)最高法知民终395号
 威海宏福置业有限公司vs威海市水务集团有限公司
 【独占禁止法上の支配的地位の濫用が公共サービスに従事する事業者の場合の指針】

事例4.「青花椒」商標権侵害事件 (2021)川知民终2152号
 上海万翠堂餐饮管理有限公司vs温江五阿婆青花椒鱼火锅店
 【識別力の低い文字商標の権利行使、一般語の公正な(説明的)使用の認定基準を明確化】

事例5.「検索エンジン妨害」不正競争事件 (2021)苏05民初1480号
 北京百度网讯科技有限公司(Baidu)vs苏州闪速推网络科技有限公司
 【特定の技術手段を利用し検索エンジンでの検索結果のランキングを妨害、操作する行為はネット利用者の合法的権益の侵害、健全で公平なインターネット秩序を混乱と認定】

事例6.「胖虎打疫苗(太った虎のワクチン接種)」NFTデジタル著作物ネットワーク送信権侵害事件 (2022)浙01民终5272号
 深圳奇策迭出文化创意有限公司vs杭州原与宙科技有限公司
 【ブロックチェーン利用したNFTデジタル著作物の法律的属性、取引モデル、プラットフォームの属性及び責任認定などを明確にし、事業者の注意義務違反を確認】

事例7.「龍井茶」商標権侵害行政処罰不服再審事件 (2022)沪73行终1号
 特威茶餐饮管理(上海)有限公司vs上海市浦东新区知识产权局
 【輸入茶葉に地理的表示の証明商標を付した行為(原産地表示違反)を商標権侵害として行政処罰した事件を正当と確認】

事例8.「都蜜5号(メロン)」植物新品種侵害事件 (2021)琼73知民初24号
 京研益农(寿光)种业科技有限公司vs新疆昌丰农业科技发展有限公司
 【植物新品種権の形式審査合格公告日から新品種権付与日までの仮保護期間での侵害認定】

事例9.「虚偽SNSユーザーインターフェース」不正競争事件 (2020)京0108民初8661号
 深圳市腾讯计算机系统有限公司(テンセント)vs郴州七啸网络科技有限公司など
 【SNSユーザーインターフェースを構成する同一のテンプレートや素材を提供した行為をユーザーに偽造、不正行為のツールを提供し、虚偽、欺瞞を実施するための条件を提供し、信義誠実の原則や商業道徳に違反する「黒灰産(ブラックマーケット、ネット詐欺)」行為で典型的不正競争行為と確認】

事例10.羅某洲、馬某など8名の「Airpods」登録商標偽証刑事事件 (2022)粤03刑终514号
 【デジタル経済環境下では、商標の使用を、商品、商品の包装或いは容器などの有形物に商標を使用することに限らず、商業活動において商品の出所を識別するために使用される行為まで対象を拡大】

2020年中国法院知的財産権50典型事例の内訳は以下の通り:
(1)特許権帰属、侵害事件 2件
(2)商標権侵害、契約事件 11件
(3)著作権帰属、侵害事件 9件
(4)不正競争事件     16件
(5)植物新品種事件    3件
(6)知的財産権行政事件  6件
(7)知的財産権刑事事件  3件

参照サイト:https://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-397162.html

【中国】中国法院知的財産権司法保護状況(2022年)、前年比20%減少!

最高人民法院は、4月20日付、記者会見を行い、「中国法院知的財産権司法保護状況(2022年)」と「2022年中国法院知的財産権10大事例と知的財産権50典型事例」を発表した。会見では、知的財産権の①司法保護能力とレベルの向上、②司法保護メカニズムの健全化、③イノベーションの保障による科学技術強国建設、③行政との協同保護強化、⑤国際協力と国際的影響力を拡大について説明しているが、民事第一審の受理件数が前年比20%減少した状況については一切言及はない。行政や刑事での対策が増加していること、賠償額の増加や厳格な処罰が侵害の歯止めになっていることが感じられるが、減少している商標や著作権紛争はインターネット上の侵害が多く、事業者の対策も功を奏していると思料できる。

(1)最高知識産権法廷事件
 2022年最高知識産権法廷の民事事件の受理は3,786件(前年4,243件、▲10.77%)、処理は3,073件(前年3,557件、▲13.61%)とそれぞれ減少した。また、行政事件の受理は1,456件(前年2,852件、▲48.95%)、処理は1,542件(前年2,487件、▲38%)とそれぞれ減少した。

(2)民事訴訟事件
 2022年、地方の各クラス人民法院は民事一審事件を438,480件受理し、前年に比べ11.2万件、▲20.31%減少した。このような減少は初めてである。内訳は下記の通りであるが、商標権侵害事件が1.2万件、▲9.82%減少、著作権侵害事件も10.5万件、▲29.07%と大きな減少となった。特許侵害事件は7千件、+23.25%、不正競争事件も1,000件弱、+11.51%増加している。審決は、第一審457,805 件と前年比▲11.25%減少した。第二審の受理も2,560件と▲5.22%減少、処理は46,563件と+2.41%増加した。

(3)行政訴訟事件
 2022年、地方の各クラス人民法院は行政一審事件を20,634件(前年20,563件)受理し、前年比+0.35%増加した。この内、特許事件は1,876件(前年1,810件、前年比+3.65%)、商標事件は18,738件(前年18,734件、前年比+4件)、著作権事件は12件(前年19件、前年比7件減少)である。処理も17,630件と前年比▲8.85%減少している。第二審の受理は5,897件(前年8,215件、前年比▲28.22%)、処理は結審7,285件(前年7,418件、前年比▲1.79%)である。原審維持率は5,518件(前年5,636件、前年比▲2.1%)と減少したが、全体の構成比では75.74%と増加した。

(4)刑事訴訟事件
 2022年、地方の各クラスの人民法院は刑事一審事件を5,336 件(前年6,276件)受理し、審決5,456 件(前年6,046件)処理し、それぞれ前年比▲14.98%、▲9.76%減少した。その内、登録商標類侵害事件は4,971 件(前年5,869件、前年比▲15.3%)、著作権侵害事件は304件(前年333、前年比▲8.715%)とそれぞれ減少している。第二審の受理も979件(前年1,050件、▲6.76%)、処理は審決977件(前年997件、2.01%)と減少した。

報告書は、2022年度の特徴として、商標と著作権紛争が大きく減少していることに言及はなく、技術類事件数が持続的に上昇し、中西部などでの事件数が多く、江蘇省では技術類の権利帰属と侵害紛争事件1,817件(前年比+17.61%)を受理した。そのほか、海南省、河北省、遼寧省、江西省、湖南省、黒竜江省、新疆生産建設兵団などで前年に+22%から倍増を示している。

参照サイト:https://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-397102.html
報告書 https://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-397082.html

【中国】広州知識産権法院2022年度10大典型事例(4月18日)

4月18日、広州知識産権法院は司法保護交流座談会及び司法開放日の活動において、2022年の広州知識産権法院での知的財産権保護状況及び10大典型例を発表した。

広州知識産権法院で2022年に起訴、上訴された一、二審の事件は合計19,503件(前年比+2.89%)と増加した。新規受理事件は、民事事件13,887件(前年比-8.23%)、行政事件23件、その他事件76件である。この内、一審事件は9,357件(前年比+56.03%)、二審は4,553件(前年比-41.66%)減少し、一、二審の構造比率は2021年の4:6から2022年の7:3に変わった。技術類の事件は明らかに増加し、特許紛争8,885件(前年比+63.99%)と全体の63.53%を占めた。著作権紛争は3,980件、商標権紛争は613件、不正競争紛争は167件、その他紛争は341件、構成比はそれぞれ28.46%、4.38%、1.19%、2.44%である。そのうち、技術類案件の新規事件は2,678件、審決2,299件と、それぞれ前年比+35.66%、+14.21%と増加している。

●広州知識産権法院10大典型事例

事例1:商標権侵害事件、商標権濫用の制限と公平な市場秩序の維持
広州市碧欧化粧品有限公司vs広東碧鴎国際化粧品有限公司ほか (2020)粤73民終5237号
 原告は登録商標12113899「図形」を保有しており、被告らが商標権を侵害したとして、20万元の賠償と謝罪広告を求めて提訴した。一審は、事件外の鐘利民氏に先使用の抗弁構成要件を満たしており、その許諾を得ている被告らを含めて区別する表示を付す条件付きで使用継続する権利を認定した。二審は原告の商標出願時点に商標法32条の他人が既に使用し一定の影響がある商標の登録に該当し、信義誠実の原則違反、非正当な取得及び権利乱用に当たると上訴を棄却した。二審判決では、商標法32条の「商標を奪う行為の否定」と59条の「先使用の抗弁」の2つの状況を区別する初めてのもので、主観的に悪意のある後の登録の商標権者の権利を保護するために先使用者の使用に制限をするのよりも、その権利濫用を否定的にするべきとの判断が示された。

事例2:商標権侵害及び不正競争事件、権利範囲の合理的確定と公衆の合法的権益の保護
北京抖音信息服務有限公司vs河南今日油条餐飲管理有限公司ほか (2020)粤73民初2332号
 原告は「今日头条」「头条」など4件の図形文字の登録商標を保有しており、被告らが朝食店を開設して油条、豆乳などの食品を販売し、看板、メニュー、食品包装、店舗装飾など多くの場所で「油条」「今日油条」の標章を大量に使用していることは商標権侵害、不正競争を構成するとし、裁判所に侵害停止、損害賠償200万元の賠償を求めた。裁判所は、非類似、誤認混同が生じないとして、非侵害と判断した。原告は中国でも有名なメディアであり、「今日头条」は知名であるが有名商標の保護範囲を合理的に確定するとともに、競争を制限する濫用の防止を図った。

事例3:植物新品種権侵害事件、遺伝子技術による保護植物品種イノベーションの保護
広州州棕科園芸開発有限公司vs高州市浪升種植専業合作社 (2020)粤73知民初326-329号
 原告は被告が栽培、挿木、接木した植物繁殖材料が「夏梦衍平」「夏梦小旋」「夏七心」「夏咏国色」などの植物新品種権を侵害するし、侵害停止、損害賠償545.7万元の賠償を求めた。裁判所は、国家林草局植物新品種分子測定実験室のSSR分子標識法を用いた測定で被疑繁殖材料と登録品種の選択位置のDNAパターンは完全に一致しているとの結論を受けて、侵害と認定するとともに、被告の故意侵害、長期広範な侵害の存在に対して、法定賠償の範囲内の135万元の賠償を命じた。

事例4:発明特許権非侵害確認事件、標準必須特許紛争の調停
華為技術有限公司ほかvs 英偉特SPE有限責任公司(Inve SPE, LLC) (2021)粤73知民初386-388号
 被告は3G・4G通信規格に関連する標準必須特許ZL021422556.6(自動再送要求送受信方法及び装置)、ZL 200910008458.0(通信端末装置及び無線通信方法)、ZL01803504.3(直交周波数分割多重通信デバイス)について原告にライセンス交渉を持ち掛けたが成立せず、ドイツでファミリー特許権を侵害するとして提訴した。原告は本件特許が標準必須特許ではなく、中国で製造、販売する端末部品は侵害しないとして、非侵害確認訴訟を起こした。広州知識産権法院の合議体は標準必須に関する調停を主宰し、両当事者は多国間での並行訴訟、事実認定の難度、指示宇の変化、主張の大きな差があるものの、双方の根本的利益が合致したところで世界的な和解に合意した。

事例5:商標権侵害事件、先用権ができる抗弁主体を明確化
徐定朋vs広州壹欣貿易有限公司 (2021)粤73民終7380号
 原告の徐定朋は「牧马人」商標(32086813ほか)の商標権者であり、タオバオネットショップで販売されているマウス商品に同一商標が使用されており商標権侵害で提訴したが、別件で被告と同じ法定代表者で株主関係にある広州市派仕盾電子有限公司を提訴したが先使用抗弁により敗訴しており、派仕盾から購入したことで関連証拠が同じ事から一審は敗訴した。第二審は、先使用者の定義、先使用権の継承を明確に示し、先使用権は抗弁権であり、継承者以外の別法人には移転しないとし、一審判決を破棄し、権利侵害停止、損害賠償を命じる逆転判決を下した。

事例6:情報ネットワーク送信権(信息网络传播权)侵害事件、作品の合理的な使用範囲の確定
李穎欣vs北京奇虎科技有限公司 (2021)粤73民終7310、7311号
 李氏は撮影した北欧の写真作品をインターネット上に発表しており、奇虎社はその360検索サイト(so.com)での検索結果として当該写真作品を含む複数の写真や広告をサムネイル表示し、写真をクリックすると写真とは関係のないサービスサイトにジャンプするように使用していることから、写真作品を許可なく使用し署名権と情報ネットワーク伝播権(2020年の著作権法改正で導入)を侵害するとして提訴し、一審は主張を認めたが、二審は被告の行為はネット検索サービス提供者として、自然検索の結果を変えておらず、ネット利用者は検索結果から元のページを探すことができないこともなく、客観的にはこの作品の露出量を増やすことから、原告の合法的権益が不当に損なわれないとして、社会一般の利益を守る観点から被告の行為は合理的な使用の範疇を超えていないと認定した。また、原告は被告の苦情ルートから適宜対応できることも指摘している。

事例7:コンピュータソフトウェア著作権侵害事件、ライセンス許諾の範囲の確定
広州快意信息科技有限公司vs敏実集団有限公司ほか24社 (2019)粤73知民初1519号
 被告はEROシステムソフトウェアのライセンス契約でライセンス数478、更に実際の使用状況に基づき追加のライセンスを購入することに同意した。原告は実際のログイン数に基づき、利用者は1380人であり契約違反として著作権侵害で被告を提訴した。契約でのライセンス数の単位が許可証数(Named User)となっており、IDとパスワードを設定することで約定したライセンスがかくていされることから裁判所は単一ユーザーライセンスと認定し、侵害行為の停止と400万元の賠償命令を下した。関連の23社に対しては被告による複製の立証不足で却下。ソフトウェアライセンスにおいては、許諾の対象と使用範囲の明確な規定を合理的判断できるように定めることが肝要であり、法律法規の規定及び業界慣例を遵守しなければならない。

事例8:発明特許侵害事件、技術調査官による対象技術の判定原則の確立
P2ILimited vs江蘇菲沃泰納米科技有限公司深圳分公司ほか (2018)粤73民初2555号
 原告は、被告の製造販売する携帯電話のメッキ処理の素材が発明特許98807945.3を侵害するとして提訴し、その製品が特許の保護範囲に入るか否かについて、双方から提出された技術鑑定書や裁判所の委託により作成された鑑定書の結果に違いがあり争点となった。専門技術を有する技術調査官が鑑定書などを分析し、オールエレメントルールの原則に基づき非侵害の判断を下したことを裁判所が採用した。専門知識を有する技術調査官による単純にオールエレメントルールを適用できない化学製品の判定での模範事例となる。

事例9:著作権侵害及び不正競争事件、ソフトウェア開発権限の規範化と知的財産権の保護
腾讯科技(深圳)有限公司(テンセント)ほかvs広州銀光軟件科技有限公司ほか (2020)粤0106民初36378号
 被告はテンセントのWeChatソフトウェアとその運行アプリケーションを利用する機能を備えたチャット管理システムアプリケーションを提供し、WeChat上のアプリケーションやコンテンツを勝手に使用するものであり、WeChatプラットフォームの通常の運用秩序が破壊されるため、著作権侵害と不正競争行為があるとして、侵害行為の停止、影響の除去、損害賠償約1,719万元を請求し、裁判所はその請求を認めた。各種のWeChatベースアプリケーションによる著作権侵害が続出しており、WeChatの運営とデータセキュリティに潜在的な危険性があり、ソフトウェア開発と事業者の知的財産権を全面的に保護した。

事例10:商標偽造刑事附帯民事公益事件、消費者の権益保護
広州市黄埔区人民検察院vs周飛ほか(個人) (2021)粤0112刑初80号
 被告は食品製造販売の許可証もなく、衛生基準を満たさないヘネシー(轩尼诗)やマーテル(马爹利)などの有名な登録商標の洋酒の空瓶に別の洋酒を充填販売し461万元を売上げ、商標偽造罪で逮捕され、刑事付帯民事公益事件として提訴された。偽物の販売による詐欺行為、潜在的な健康被害などよる社会公共の利益、商標管理秩序や市場環境を毀損したとして、3倍の懲罰的賠償を含む懲罰的賠償約1,383万元及びメディアでの謝罪が命じられた。

参照サイト:https://mp.weixin.qq.com/s/ikwgFdEGoErSiYx4Cl6d9Q

【中国】「最高人民法院知識産権法庭典型事例(2022)」の公示(3月30日)

最高人民法院知識産権法庭は、3月30日付、2022年に審理された3,468件の技術の絡む知的財産権と独占事件の中から20件を典型事例として精選し公示した。今回典型事件として発表された事件は、特許民事事件7件、特許行政事件3件、植物新品種事件3件、営業秘密侵害事件3件、独占禁止事件4件で、主に次の4点にを関連している。
1.知的財産権の保護レベルを強化し、イノベーション創造活力をさらに刺激
2.権利保護の難題に新たなルートを模索し、革新的方法でイノベーションを保護
3.平等保護の原則を維持し、市場志向、法の支配、国際化による一流のビジネス環境を構築
4.独占行為を厳格に規制し、市場の公平な競争秩序を維持

各事件の概要と意義は以下の通り:

(1)特許民事事件
1.中国初の医薬品特許リンケージ訴訟
 中外製薬株式会社vs温州海鶴薬業有限公司:(2022)最高法知民終905号
 【意義】中国特許法改正後の初めての後発医薬品特許リンケージ訴訟
2.「メラミン製造法」発明特許及び営業秘密の侵害訴訟
 四川金象赛瑞化工股份有限公司、北京烨晶科技有限公司vs山東华鲁恒升化工股份有限公司、寧波厚承管理咨询有限公司、寧波安泰环境化工工程设计有限公司、尹某氏:(2020)最高法知民終1559号、(2022)最高法知民終541号
 【意義】共同侵害行為と認定し、最高の損害賠償額2.18億元、内資と外資企業、国有と民営企業などの各種企業を平等に保護。
3.「橋梁伸縮継手装置」の標準必須特許侵害訴訟
 徐某氏、宁波路宝科技实业集团有限公司vs河北易德利橡胶制品有限责任公司、河北冀通路桥建设有限公司:(2020)最高法知民終1696号
 【意義】交通運輸部発行の標準規格の必須特許であり、ライセンシーの過失に対する特許権者による賠償請求を認定。
4.「動的パスワードUSBケーブル」実用新案特許侵害訴訟
 深圳市租电智能科技有限公司vs深圳市森树强电子科技有限公司など:(2022)最高法知民終124号
 【意義】不安定な特許無効宣言係属中に裁判審理を進める場合、当事者の利益の公平性や誠実性を考慮し、裁判所は当事者に自発的に補償の約定の奨励や指導可。
5.「固着式アンカーボルト」実用新案特許侵害訴訟
 福州百益百利自动化科技有限公司vs上海点挂建筑技术有限公司、张某氏:(2021)最高法知民終1066号
 【意義】侵害者の宣伝内容に基づき侵害規模と賠償額を総合的に決定、比較安価な部品で約5000万円の賠償額を認定。
6.「ガス化炉除塵装置及びシステム」2件の特許権帰属訴訟
 航天长征化学工程股份有限公司vs鲁西化工集团股份有限公司、聊城市鲁西化工工程设计有限责任公司:(2020)最高法知民終1652号、(2020)最高法知民終1293号
 【意義】共同開発の守秘義務に違反し改良技術を無断でした特許出願の帰属に関し、実質的な創造的技術貢献がなく改良技術に該当せず原告に帰属すると認定。
7.「縫合器と縫合針キット」の実案特許権及び発明特許出願権帰属訴訟
 浙江左元医疗技术有限公司vs万某氏:(2022)最高法知民終1330号、(2022)最高法知民終2365号
 【意義】元従業員による職務発明の権利化に対する帰属紛争であり、原告の立証不足を調停で解決。

(2)特許行政事件
8. 「L-オルニダゾール」2件の発明特許無効行政訴訟
 長沙市华美医药科技有限公司与国家知識産権局、南京圣和药业股份有限公司:(2020)最高法知行終475号、(2020)最高法知行終476号
 【意義】化合物の医薬品用途の進歩性(創造性)判断において、従来技術に具体的かつ明確な示唆があるか否か全面的かつ総合的に考慮しなければならないと一審判決を破棄、審決維持。
9.「コンピュータ装置活動のためのカードメタファー」発明特許無効行政訴訟
 アップルコンピュータ貿易(上海)有限公司vs国家知識産権局、クアルコム:(2021)最高法知行終1号
 【意義】国際的に有名な科学技術企業間の紛争、技術的解決策のいくつかの技術的特徴の相互依存による相乗効果での特定の機能が実現される場合進歩性があると判示し、審決維持。
10. 「リバロキサバン製剤」発明特許侵害行政裁決不服訴訟
 南京恒生制药有限公司、南京生命能科技开发有限公司vs南京市知識産権局、バイエル知識産権有限责任公司:(2021)最高法知行終451号、(2021)最高法知行終702号
 【意義】南京市知的財産権局はバイエル社から特許侵害処理を申立てを受け、両社のウェブサイト出の販売の申し出ははBolar条項例外に該当せず侵害停止を裁決、裁判所もこれを維持。

(3)植物新品種事件
11.「YA 8201」トウモロコシ植物新品種権利侵害訴訟
 四川雅玉科技股份有限公司vs雲南金禾种业有限公司、雲南瑞禾种业有限公司:(2022)最高法知民終783号、(2022)最高法知民終789号
12.「楊氏金紅1号」キウイ植物新品種権利侵害訴訟
 四川依顿猕猴桃种植有限责任公司vs馬辺彝族自治県石丈空猕猴桃专业合作社:(2022)最高法知民終211号
13.「彩甜糯6号」雑種トウモロコシ親植物新品種侵害訴訟
 荆州市恒彩农业科技有限公司vs鄭州市华为种业有限公司、甘肃金盛源农业科技有限公司:(2022)最高法知民終13号

(4)営業秘密事件
14. 雑種トウモロコシ新品種親本「W68」営業秘密侵害訴訟
 河北华穗种业有限公司vs武威市搏盛种业有限责任公司:(2022)最高法知民終147号
 【意義】最高人民法院が初めて審理した繁殖材料の営業秘密侵害事件で、作物育種の過程で形成される育種中間体、近交系親などは、育種家の創造的労働の知的成果であり、技術情報と担体の両方の特徴があり、不可分であり、一般に知られず、相応の秘密保持措置を講じられていれば営業秘密として法的に保護できると判示。
15.「石油・ガス微生物探査」営業秘密侵害訴訟
 盎亿泰地质微生物技术(北京)有限公司vs英索油能源科技(北京)有限责任公司、罗某氏、李某氏、胡某氏、张某氏:(2021)最高法知民終1363号
 【意義】元従業員が新会社を設立し、元勤務先の営業秘密を侵害した事件で明らかに主観的悪意があり原告の取引会を不当に奪取したとして、被告企業のすべての利益を侵害利益と認定。
16.「有客多」ウィジェットソースコード営業秘密侵害訴訟
 深圳花儿绽放网络科技股份有限公司vs浙江盘兴数智科技股份有限公司、浙江盘石信息技术股份有限公司:(2021)最高法知民終2298号
 【意義】営業秘密のソースコードを契約により開示を受けた被告が守秘義務に違反して公開した事件で、商品価値の判断に研究開発費、当該技術秘密の実施収入、期待利益、競争上の優位性を維持するための時間などを総合的に勘案できると判示。

(5)独占事件
17.給排水公的企業による市場の支配的地位の濫用限定取引訴訟
 威海宏福置业有限公司vs威海市水务集团有限公司:(2022)最高法知民終395号
 【意義】裁判所が初めて暗黙の取引制限を認定した独占事件で、独占禁止法での取引の制限は事業者が取引相手の自由な選択を実質的に制限しているかどうかであり、限定取引行為が明示的直接的でも、暗黙的間接的でもよいことを明確化。
18.中国スーパーリーグ画像独占授権での市場の支配的地位の濫用訴訟
 体娱(北京)文化传媒股份有限公司vs中超联赛有限责任公司、上海映脉文化传播有限公司:(2021)最高法知民終1790号
 【意義】原告が入札に参加したが落札できなかったことだけで、民事権利の排他性或いは排他的民事権利自体が独占禁止法の予防と規制の対象ではないことを判示。
19. ゼネラルモーターズの最低再販価格限定に関する垂直独占契約後継訴訟
 缪某vs上汽通用汽车销售有限公司、上海逸隆汽车销售服务有限公司:(2020)最高法知民終1137号
 【意義】独占禁止法執行機関が独占の行政処罰後、消費者が独占行為による損害賠償を主張した独占禁止後継民事訴訟で、原告の立証負担がないと判断され、独占禁止での行政法執行と司法連携が現実された。
20.茂名コンクリート企業協同行為水平独占協議行政処罰不服訴訟
 茂名市电白区建科混凝土有限公司vs広東省市场监督管理局:(2022)最高法知行終29号
 【意義】水平独占合意における「その他の協同行為」には明確な合意や決定が直接現れないため、隠蔽性が強く、実務上認定に難があるが、当事者の意思連絡、情報交流と値上げ行為の一致性から水平独占合意を認定した。また、罰金の算定での「前年度売上」の「前年度」は処罰を行った時点と時間的に最も近く、事実上最も関連する違法行為が存在する年度として確定することを明確化。

参照サイト:https://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-394812.html

【中国】「最高人民法院知的財産権法廷裁判要旨(2022)」の公示(3月30日)

最高人民法院は、3月30日付、「最高人民法院知的財産権法廷裁判要旨(2022)(最高人民法院知识产权法庭裁判要旨摘要(2022))」を公示し、2022年に審理された3468件の知的財産権の技術類と独占の事件から61件の典型事例を抽出し、以下の6カテゴリーに75の要旨にわけ、各界の研究と参考のために発表した。
1.特許行政事件 (13件)
2.特許民事事件 (31件)
3.植物新品種事件 (8件)
4.営業秘密事件 (10件)
5.独占事件 (12件)
6.訴訟手続き (1件)

(1)特許行政事件
1.ビジネスモデルの特許性(2021)最高法知行終382号
2.特許出願明細書の暗示的な開示内容に基づく請求項の追加は補正違反(2021)最高法知行終440号
3.必要な技術的特徴欠如の判断(2021)最高法知行終987号
4.最も近い従来技術の選択(2019)最高法知行終235号
5.特許進歩性判断における「合理的な成功予測」(自明性)の考慮(2019)最高法知行終235号
6.発明思想の違いの改良動機及び技術的示唆(進歩性)に及ぼす影響(2022)最高法知行終316号
7.新規性喪失例外適用期間(2020)最高法知行終588号
8.特定の欠陥を有する技術的解決案の実用性の判断(2022)最高法知行終68号
9.部品意匠に関する一般消費者の判断(2021)最高法知行終464号
10.機能性と美観性を備えた意匠設計の全体的視覚効果に及ぼす影響(2021)最高法知行終464号
11.特許権期限満了通知に対する訴求可能性(2022)最高法知行終54号
12.ライセンス販売行為の認定(2021)最高法知行終451号
13.不特定第三者に対するライセンス販売行為は医薬品と医療機器の非行政審査対象(2021)最高法知行終451号

(2)特許民事事件
14.クレーム解釈での明細書での特定技術用語の定義と具体的実施形態の識別(2020)最高法知民終580号
15.クレーム解釈における外部証拠使用の規則(2020)最高法知民終580号
16.発明名称がクレーム保護範囲を限定する役割(2020)最高法知民終1469号
17.均等侵害判断における背景技術、発明の目的の考慮(2021)最高法知民終860号
18.同日出願された発明特許と実用新案特許による連帯保護(2020)最高法知民終1738号
19.被疑侵害製品製造者の認定(2021)最高法知民終1784、1840号
20.複数の主体による方法特許侵害判断(2022)最高法知民終817号
21.黙示の特許ライセンスの認定(2022)最高法知民終139号
22.先行技術による抗弁の基本的事実の合法性(2020)最高法知民終1568号
23.合法的出所による抗弁の適用対象(2021)最高法知民終434号
24.「製品情報記載なし商品」の合法的出所の抗弁の認定(2021)最高法知民終1138号
25.貸与製品を使用した合法的出所の抗弁(2021)最高法知民終1118号
26.合法的な出所の抗弁の主観的要件(2022)最高法知民終593号
27.標準必須特許侵害事件における差止救済(2022)最高法知民終817号
28.部品製品特許侵害の損害賠償算定基礎の選択(2020)最高法知民終589号
29.権利侵害者による公表経営業績は損害賠償算定根拠(2021)最高法知民終1066号
30.権利侵害和解後の再犯は懲罰的賠償対象(2022)最高法知民終871号
31.特許権者の特許無効手続支出は特許侵害事件で合理的支出に非該当(2022)最高法知民終1165号
32.合法的な出所の抗弁が成立した使用者に合理的支出の負担義務(2021)最高法知民終1406号
33.特許無効後の調停書での支払済みのライセンス料には公平性を適用(2021)最高法知民終1986号
34.特許侵害訴訟における非合法収集証拠の認定【案号】(2022)最高法知民終222号
35.有効性に疑義のある特許侵害事件で将来の利益補償に誘導【案号】(2022)最高法知民終124号
36.特許詐称行為での権利侵害及び損害賠償の法的根拠(2021)最高法知民終2380号
37.特許権非侵害確認訴訟の審理範囲(2020)最高法知民終696号
38.非侵害訴訟における「合理的期限内の提訴」の認定(2021)最高法知民終2460号
39.権利帰属紛争期間のPCT出願人の善管注意義務(2022)最高法知民終130号
40.職務発明権利権属紛争における発明者確認と権利帰属の併合審理(2021)最高法知民終2146号
41.職務発明の発明者奨励報酬の支払主体の決定(2021)最高法知民終1172号
42.後発医薬品申請者の4.2類陳述と医薬品特許クレームの対応関係(2022)最高法知民終905号
43.医薬品特許リンケージ訴訟における後発医薬技術の判断基準(2022)最高法知民終905号
44.医薬品特許リンケージ訴訟は「先行裁定、別途提訴」を適用(2022)最高法知民終2177号

(3)植物新品種事件
45.審査機関に非保存の標準サンプルの無性繁殖許可品種の保護範囲の決定(2022)最高法知民終782号
46.ハイブリッドトウモロコシ品種と親品種の親子関係の認定(2022)最高法知民終13号
47.植物新品種特異性判定における既知品種の決定(2021)最高法知行終453号
48.許可品種繁殖材料を繰り返し使用した別の品種の繁殖材料の侵害判定(2022)最高法知民終13号
49.無性繁殖授権品種の栽培行為の侵害判定(2022)最高法知民終435号
50.品種権者による侵害停止請求に代わるライセンス料を支払請求認可(2022)最高法知民終211号
51.交配品種の親植物の新品種権の侵害利益の寄与率(2022)最高法知民終783、789号
52.権利侵害繁殖材料の不活化処理後の損害賠償責任の負担(2021)最高法知民終2105号

(4)営業秘密事件
53.交雑種の親は営業秘密保護の対象(2022)最高法知民終147号
54.図面を営業秘密の担体とする場合の技術秘密の内容決定(2021)最高法知民終2526号
55.営業秘密保護のための技術案の認定(2020)最高法知民終1889号
56.繁殖材料の秘密保持性の認定(2022)最高法知民終147号
57.共同侵害行為における主観的過失の主要な3つの情況(2022)最高法知民終541号
58.営業秘密侵害事件における共同故意侵害の認定及び責任(2022)最高法知民終541号
59.営業秘密侵害事件における製造者の販売停止責任(2022)最高法知民終541号
60.営業秘密侵害者による技術秘密媒体の廃棄責任及びその実施方法(2022)最高法知民終541号
61.営業秘密侵害での賠償の約定の決定と処理(2021)最高法知民終1687号
62.営業秘密侵害損害賠償確定における事業機会要因の考慮(2021)最高法知民終1363号

(5)独占事件
63.特許侵害訴訟による和解協議での独占禁止審査(2021)最高法知民終1298号
64.独占禁止行政処罰決定の後継民事賠償訴訟における証明力(2020)最高法知民終1137号
65.ストック住宅売買仲介サービス関連市場の認定(2020)最高法知民終1463号
66.仲介サービス市場シェアの評価指標(2020)最高法知民終1463号
67.その他の協同行為の認定(2022)最高法知行終29号
68.共同市場支配的地位の認定における行為一貫性を考慮(2021)最高法知民終1977号
69.スポーツ競技における事業権利の独占的授権に関する独占禁止審査(2021)最高法知民終1790号
70.公共事業者の取引行動の暗黙の制限の決定(2022)最高法知民終395号
71.再販商品の最低価格を制限する垂直独占契約における損害賠償(2020)最高法知民終1137号
72.限定取引行為による損害の認定(2022)最高法知民終395号
73.独占禁止法による消費者権益の保護(2021)最高法知民終1020号
74.独占禁止法の罰金規定における「前年度売上高」における「前年度」の確定(2022)最高法知行終末29号

(6)訴訟手続き 
75.訴訟の過程では専門的問題の鑑定要否を考慮(2022)最高法知民終541号

判決文の翻訳が必要な場合、当社にご用命ください。

参照サイト:https://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-394832.html

【欧州】EPO2022年度特許出願統計(3月28日)

ヨーロッパ特許庁(EPO)は、3月28日付、Patent Index 2022を公表し、2022年の特許出願は193 ,460件(前年比+2.5%)と近年では大きな増加を示したことを報告した。

大きな増加を示したのは、デジタル通信(+11.2%)、電気機械・装置(+18.2%)、バイオ技術(+11.0%)である。出願国では、中国が19,041件(+15.1%)、韓国10,367件(+10.0%)と多く伸ばしたが、ドイツ24,684件(-4.7%)、日本21,576件(-0.4%)と減少している。なお、欧州全域では前年と同じ程度の出願となっている。出願ランキングは、以下の通りで、LG電子とクアルコムの伸びが顕著である。

参照サイト:https://www.epo.org/about-us/annual-reports-statistics/statistics/2022.html

【国際】WIPOは2022年度国際出願統計を公表(2月28日)

世界知的所有権機関(WIPO)は、2022年度のPCT国際特許出願、マドプロ国際商標出願、及びハーグ国際意匠出願争の統計データと分析を公表した。最終集計ではないので最終的な変動がある数字であることにご留意ください。

◆PCT国際特許出願

2022年度は、前年比+0.3%増(前年0.9%)の約278,100件(前年277,500件)と微増、出願国ごとの内訳は、中国 (70,015件、前年69,604件、+0.6%)、アメリカ(59,056件,前年59,403件、-0.6%)、日本(50,345件、前年50,275件、+0.14%)、韓国(22,012件、前年20,723件、+6.2%)、 ドイツ(17,530件、前年17,266件、+1.5%)と上位5か国は変わらない、増加が注目されるのは、インド(2,618件、+25.4%)と大きな増加を示している。
 技術分野では、コンピュータ関連(構成比10.4%、前年比+8.1%)、デジタル通信関連(構成比9.4%、前年比+8.7%)、医療関連(構成比7.0%、前年比+2.5)が相変わらず上位であるが、繊維機械(前年比-7.5%)、光学(前年比-6.6%)、AV機器(前年比-6.3%)などの技術分野が減少している。
 出願人ランキングは、華為(7,689件、前年6,952件)、三星電子(4,387件、前年3,041件)、Qualcomm (3,855件、前年3,931件)、三菱電機(2,320件、前年2,673件)、Ericsson(2,158件、前年1,887件)、OPPO広東移動通信(1,963件、前年2,208件)、日本電信電話(1,884件、前年1,508件)、BOE京東方科E(1,884件、前年1,980件)、LG 電子 (1,793件、前年2,885件)、パナソニック(1,776件、前年1,741件)で、日本電信電話が初めてトップ10に入り、ソニーが12位(1,513件)に落ちた。以下日本企業は、NEC(14位、1,479 件)、富士フィルム(18位、1,181 件)、村田製作所(19位、1,043件)と続くが、中国企業の進出が目立っている。

◆マドプロ国際商標出願

2022年度は、69,000件(前年73,500件)と-6.1減少した。出願国ごとの内訳は、アメリカ (12,495件、前年13,282件、-5.9%)、ドイツ(7,695件、前年8,794件、-12.5%)、中国(4,991件、前年5,273件、-5.3%)、フランス(4,403件、前年4,891件、-9.9%)、イギリス(4,227件、前年4,266件、-0.9%)であり、日本は7位、3,145件で前年は3,229件で-2.6%と上位陣総崩れで減少した。主な増加した国は、トルコ(2,389件、+5.2%)、韓国(2,021件、+2.1%)、オランダ(1,556件、+7.4%)、である。
 出願人ランキングは、L’Oréal(160件)、Novartis(131件)、Glaxo(128件)、EURO Games (120件)、現代自動車(108件)、資生堂(92件)、Maplebear(82件)、Syngenta Crop(80件)、華為(74件)、任天堂(70件)である。

◆ハーグ国際意匠出願

2021年度は、前年+11.2%増の7,973 出願(前年6,714件)、25,028 意匠(前年22,4800意匠)になり、意匠数による出願国ごとの内訳は、ドイツ (4,909意匠、前年4,400意匠、+11.6%)、中国(2,558意匠、前年621意匠、+312%)、イタリア(2,414意匠、前年2,046意匠、+17.9%)、アメリカ(2,412意匠、前年2,649意匠、-8.9%)、スイス(2,178意匠、前年1,824意匠、+19.4%)、フランス(1,484意匠、前年1,585意匠、-6.3%)、韓国(1,346意匠、前年1,419意匠、-5.1%)、イギリス(1,034意匠、前年858意匠、+20.5%)、オランダ(980意匠、前年1,222意匠、-19.8%)、日本は(436件935意匠、前年421件913意匠、+2.4%)であった。中国の加盟による急増とイギリスの増加が顕著である。
 出願人ランキングでは、Procter & Gamble(687件、前年665件)、Philips Electronics(633件、前年678件)、三星電子(451件、前年862件)、Wenko-Wenslaar(414件、前年2件)、I. Paleohorinos(414件、前年138件)、LG電子(366件、前年655件)、Ferrari(329件、前年99件)、北京小米(251件、前年227件)、EIS(233件、前年78件)である。日本企業は、32位に株式会社ビッグウエスト、42位に三菱電機と低調な利用であった。

参照サイト:https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2023/article_0002.html
データ https://www.wipo.int/export/sites/www/pressroom/en/documents/pr-2023-899-annexes.pdf

【中国】2022年度知財統計報告(1月16日)

国家知識産権局(CNIPA)は、1月16日、2022年度知識産権統計データの記者発表会を行った。例年通り出願件数は含めず登録と全体動向を説明している。

2022年の発明特許登録件数は79.8万件(+14.7%)と増加し、有効発明特許件数は421.2万件、中国の国内分は香港、マカオ、台湾を除き328万件で、目標としてる1万人当たりの保有高付加価値発明特許件数が9.4件となり、前年比1.9件の増加である。PCT特許出願受理件数は、7.4万件(前年7.3万件)。

実用新案特許は、280.4万件(-10.1%)、意匠特許は、72.1万件(-8.2%)と1割程度減少したことから出願も同程度減少していると理解できる。なお、ハーグ意匠制度加盟初年度の中国人の出願件数は1,286件であった。

審判は、拒絶不服件数は6.3万件(前年5.4万件、+16.7%)、無効審判件数が7.9千件(前年7.1千件、+11.3%)とそれぞれ増加している。

2022年度の国内分の商標出願件数は730.4万件(-19.5%、前年919.2万件)と約189万件件減少し、商標登録件数(国内分)も617.7万件(-18.1%)と経済の情況を反映してか大きく減少している。有効商標件数(外国分含む)は4267.2件(+14.6%)である。なお、外国からの出願登録件数も9.4%減少し、17.5万件である。マドプロ商標出願件数は5,827件(昨年5,928件)である。

商標異議申立14.6万件(-17.2%)、不使用取消申立1.6万件(-5.8%)とそれぞれ減少し、無効宣言は7.1万件と前年比4.2%増加した。

審査期間は、高付加価値発明特許で13か月(前年13.3か月)、発明特許の平均は16.6か月(前年18.5か月)と2か月ほど短縮された。商標は4か月同じである。

発表会で総括された2021年の特徴は以下の通り:
1.有効発明特許内高付加価値発明特許が132.4万件と前年比+24.2%、全体の40%強となったである。
2.2022年末に有効発明特許保有企業が35.5万社と前年比+5.7万社、高付加価値特許保有232.4万件と前年比21.8%増加したが、その65%を小さな巨人と呼ばれる小企業が保有している。
3.デジタル分野の技術イノベーションが拡大しており、特に通信、コンピュータ分野がそれぞれ+59.6%、+28.8%と大きく増加した。2022年末のこの分野の中核発明特許は32.5万件(前年比+17.9%)と引き続き増加している。
4.特許と商標の知的財産権担保資規模は引き続き拡大しており、2022年の融資残高は4,000億元(前年3,098億元、+29.1%)に達し、2.9万社が恩恵を受けているが、その70%が中小企業である。
5.中国で外国企業の知的財産取得が増加しており、2022年末の有効発明特許件数は5.8万社、86.1万件(前年比+4.5%)、有効登録商標も203万件(前年比+5.9%)と増加している。

その他、今年の1月11日よりCNIPAは新しい特許出願ポータルサイトの運用を開始し、PCTやハーグの出願を含めたワンストップの出願から多様な年金納付決済までができるようになっていること、商標出願のにつて代理業務を含めた健全化措置を強化することなどの紹介に及んだ。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2023/1/17/art_67_181470.html