【中国】2023年知的財産権行政保護典型事例(4月26日)

国家知識産権局は、4月26日、2023年に行政保護を行った特許、商標及び地理的表示の紛争事件からそれぞれ10件の典型事例を公示した。対象事件は以下の通り、地理的表示事件は省略する。

●特許行政保護典型事例
1.「窓貼り機の切断予圧装置」実案特許201721264785.9(温州荘達印刷機械有限公司)侵害紛争事件、広東省広州市知識産権局、浙江省温州市知識産権局の合同処理(行政調停和解、合理的権利維持費用の支払)
2.「トナーカートリッジ及び画像形成装置」発明特許201010211753.9(富士ゼロックス株式会社)侵害紛争事件、北京市知識産権局処理(製造販売停止、製造機器などの廃棄、在庫などの市場投入禁止)
3.「新型汚水遮断環境配慮型雨水流入口」実案特許201920377144.7(安徽省亜京雨水利用技術有限公司)侵害紛争事件、南京市知識産権局処理(販売停止)
4.「薬瓶のラベル」意匠特許202130389718.5(河北坤安薬業有限公司)侵害紛争事件、河北省石家庄市知識産権局処理(製造販売停止、製造機器などの廃棄、在庫などの市場投入禁止)
5.「ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物含有医薬品」発明特許201210201489.X(AstraZeneca (Sweden) Ltd.)侵害紛争事件、上海市知識産権局処理(販売停止、サイトのネット接続切断)
6. 「包装箱(果汁文旦)」意匠特許202230645195.0(頼友陽)侵害紛争事件、福建省平和県知識産権局、山東省無棣県知識産権局共同処理(行政調停和解、司法確認)
7.「グリチルリチン酸ジアンモニウムの組成物」発明特許200610040759.8(江蘇正大天晴薬業股份有限公司)侵害紛争事件、浙江省杭州市知識産権局調停(行政調停、和解契約締結、司法確認)
8.「コンドーム(テクスチャーシリーズ)」意匠特許201530111370.8(蘇州翰墨科技有限公司)再犯侵害紛争事件、天津浜海高新技術産業開発区市場監督管理局処理(侵害停止、違法所得没収、罰金1万元)
9. 「不規則なシャーシ構造」実案特許202222656483.3(東莞市金河田実業有限公司)侵害紛争事件、安徽省馬鞍山市知識産権局処理(侵害停止、後日保護センターでの和解)
10. 「陶磁器花器(奇異)」意匠特許202130401899.9(景徳鎮市貝漢美陶磁有限公司)侵害紛争事件、江西省景徳鎮市知識産権局処理(侵害停止、後日行政調停、司法確認、賠償金支払)

●商標行政保護典型事例
1.「小米」商標第8228211号9類(小米科技有限責任公司)侵害紛争事件、広東省深圳市市場監督管理局(知識産権局)処理(侵害停止、罰金1265万元、営業許可取消)
2.「図+Castol」商標第5212636号、「嘉实多」商標第1972857号4類(Castrol Limited)侵害紛争事件、安徽省合肥市市場監督管理局(知識産権局)処理(侵害停止、侵害品没収、罰金20万元、拘留7日、信用喪失名簿記入)
3.「蓝月亮」商標第7613055号3類(広州藍月亮実業有限公司)侵害紛争事件、浙江省麗水市遂昌県市場監督管理局処理(侵害停止、教育指導)
4. 「〇に牛栏山」商標第866912号33類(北京順鑫農業股份有限公司欄山酒廠)侵害紛争事件、広西壮族自治区河池市天峨県市場監督管理局処理(5人逮捕、検察起訴中)
5. 「喜丰+図」商標第1372525号1類(広西鹿寨万強化肥有限責任公司)侵害紛争事件、広西壮族自治区賀州市市場監督管理局処理(12人逮捕、70万元資金凍結、3人検察起訴審理中)
6. 「〇にUL」商標第13084672号42類(UL LLC)侵害紛争事件、四川省成都市成華区市場監督管理局処理(罰金41万元)
7. 「kuka/顾家家居」商標第45419791号20類(顧家家居股份有限公司)侵害紛争事件、江蘇省南通市通州区市場監督管理局(知識産権局)処理(故意侵害、侵害標識没収、罰金17.5万元)
8. 「贵州茅台」商標第3159141号、「贵州茅台酒+図形」商標第10195605号など33類(中国貴州茅台酒廠(集団)有限責任公司)、「WULIANGYE+五粮液」商標第3467940号など33類(四川省宜賓五粮液集団有限公司)侵害紛争事件、遼寧省沈陽市市場監督管理局(知識産権局)処理(5人逮捕、2~3年の禁固、罰金)
9. 「図」商標第283610号、「柒牌」商標第12212099号25類(福建柒牌時装科技股份有限公司)侵害紛争事件、浙江省桐郷市市場監督管理局処理(侵害停止、罰金18万元、信用喪失名簿記入)
10. 「超级飞侠+図形」商標第18169925号20類(奥飛娯楽股份有限公司)侵害紛争事件、重慶市大渡口区市場監督管理局処理(侵害停止、製造用器具没収、罰金3万元)

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/4/26/art_3382_5.html

【中国】2023年商標異議無効10大事件(4月26日)

国家知識産権局(CNIPA)は、4月26日、2023年の商標出願の異議申立と商標権無効取消の10大事件として、異議申立5件、無効取消審判5件を公示した。国家知的財産権局は知的財産権の源流保護をさらに強化し、商標審査の質と効果の向上を推進するとともに、商標出願秩序を規範化し、公平な競争市場環境を維持し、商標審査政策での審査基準、規則、モデルを持続的に整備するとしている。

1.「黄塔膏薬」商標第61172988号35類(滑県黄塔寺骨傷医院)異議申立事件
 本商標には9類に同一標章で河南省の老舗(老舗ブランド)と認定された先登録商標があり、かつ出願人も同一地域であり、市場での誤認混同を制止、無形文化遺産の商標保護で出願を却下した。審決:(2023)商标异字第0000125642号、条文13条、申立人:滑県骨科医院

2. 「只此青绿」商標第59222968号41類(福建匠心巧思文化発展有限公司)異議申立事件
 本商標の事件は同名の舞踊詩劇の名称として先に使用され既に高い知名度が認定され、悪意先取り登録行為を規制し、優れた伝統文化の発展で出願を却下した。審決:(2023)商标异字第0000021546号、条文32条、申立人:中国東方演芸集団有限公司

3. 「慢飞天使MAN FEI ANGEL及び図」商標第64310227号33類(姚娜)異議申立事件
 本商標の「慢飛天使」は障害のある児童に使用される特殊な意味や指定商品が白酒など強い酒類であることを総合的に考慮し、不良な社会的影響の規定を適用し、社会的配慮で出願を却下した。審決:(2023)商标异字第0000098977号、条文10条1項(8)号、申立人:中国貴州茅台酒厂(集団)有限責任公司

4. 「宝鲁日」商標第60172218号29類(内蒙古牛牛勇敢商貿有限公司)異議申立事件
 本商標は有名な農村生活記録ブロガーの名前であり、出願日前にすでにSNS上で多くのファンと再生数があり、一定の知名度を認定し先取り行為を規制し、農村経済の新たな発展に配慮し出願を却下した。審決:(2023)商标异字第0000012871号、条文32条、申立人:宝鲁日

5. 「白水畈」商標第60596619号31類(武漢市沁野実業有限責任公司)異議申立事件
 本商標の「白水」は「白水畈萝卜(白水産大根)」など湖北省農産物の地理的表示として使用されていることや出願人と地域の関係がないことに加え、このほかに大量な地理的表示に関する出願があるため悪意先取りと認定し、商標登録秩序を乱すと判断し出願を却下した。審決:(2023)商标异字第0000074081号、条文4条、申立人:咸寧市咸安区高橋白水畈萝卜協会

6. 「DEMARSON」商標第47589108号14類(泉州市弘康電子商務有限公司)無効宣告事件
 本商標の事件は複数の関連する会社がその関係を隠蔽し、申請人を含む多数の会社の商標と同一或いは類似する商標を大量に先取りや買い溜めしていることを認定し無効とし、商標の悪意先取りの取締りと抑止力を高めた。審決:商评字[2023]第0000070611号、条文44条、申立人:Demarson Company

7. 「蜂花佳人」商標第55926680号3類(滕州市業明蜜蜂養殖服務専業合作社)無効宣告事件
 本事件は有名商標の保護を求める適用要件を明確にし無効とし、企業の権利維持コストを下げ、民族ブランドの合法的権益の保護に意義がある。審決:不明、条文不明、申立人:不明

8. 「MASTRO’S STEAKHOUSE M及び図」商標第36365304号43類(天津津服教育信息諮詢有限公司)無効宣告事件
 本商標は類似関係にあり、商標代理機構と権利者の代表者などが同一と利害関係あり法律を回避する悪意のある登録行為がある認定し無効とし、本件以外にも大量の業務に関係のない商標登録があるため信義誠実の原則違反を判断した意義がある。審決:商评字[2023]第0000288394号、条文19条4項、31条、44条、申立人:Mastro’s Restaurants LLC

9. 「十万个为什么100000 WHYS及び図」商標第17085619号16類(上海少年児童出版社有限公司)無効宣告事件
 「10万のなぜ」は書籍、印刷出版物などの分野で長期的に使用されてすでに高い知名度と識別度があり商標の出所を区別する役割を果たすことができると認定し無効とし、有名図書ブランドの権利の安定性を維持した意義がある。審決:商评字[2021]第0000155297号、条文44条、申立人:四川天地出版社有限公司

10. 「铂金优选(プラチナ優先)」商標第52695434号など8件(奥倫潤滑油(無錫)有限公司)無効宣告事件
 一連の事件は、同業者でありながら申立人の国際的によく知られた商標を知りながら、類似する商標を出願登録している状況は正当化されるものではないと認定し、信義誠実の原則に違反し法律効果と社会効果の統一を図るためにも無効とした。審決:商评字[2023]第0000310547号、条文15条2項、申立人:奥倫国際貿易(蘇州)有限公司 POLSKI KONCERN NAFTOWY ORLEN SPOLKA AKCYJNA 

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/4/26/art_3382_6.html

【中国】2023年特許復審無効10大事件(4月26日)

国家知識産権局(CNIPA)は、4月26日、2023年の特許出願の再審(復審)と特許権無効の10大事件を公示した。復審で発明特許1件、無効で発明特許7件、実用新案特許1件、意匠特許1件を取り上げ、遺伝子工学、リチウムイオン電子、学際的テーマなどの先端的な技術分野での標準必須特許、抵触判断、優先権主張の認定、AIの発明者認定の是非などの問題を取り上げている。

1.「制御信号送信方法と装置」発明特許201110269715.3(華為技術有限公司)無効事件
 本件特許は通信分野の標準必須特許(SEP)に関し、進歩性の判断における請求項に関する技術的特徴の全体的な判断と従来技術の組合せの示唆の判断に典型的な意義がある。結果は有効維持。審決第562606号、請求人:小米通訊技術有限公司

2.「安全なリチウムイオン電池ユニット及び安全リチウムイオン電池パック」発明特許200610072849.5(首天恩経営管理有限責任公司)無効事件
 本件特許はパラメータに特徴のあるリチウム電池分野の特許明細書の開示要件で技術的効果や技術的手段が十分に開示されているか否かを判断するために模範的な役割を果たしている。結果は、無効取消。審決563221、請求人:深圳市比克電池有限公司

3.「ポリウレタン研磨パッド」発明特許201410448504.X(Rohm And Haas Electronic Materials CMP Holdings, Inc.ほか)無効事件
 本件特許は化学的分野と機械的分野の交差によるイノベーション成果に属し、化学調合成分及び物理的性能パラメータの特徴で限定された機械製品の請求項で、それら及びその他の特徴との間には相互作用がない場合、総合的に考慮する必要はなく明細書の開示内容に基づき特許の保護範囲を客観的に認定できることを確認したことに意味がある。従来技術に対応する技術的示唆がなく進歩性があると判断した。結果は、有効維持。審決564483、請求人:王某氏

4.「活性成分を放出制御できる分割可能なガレヌス製剤」発明特許200810213769.6(French Servier Pharmaceuticals)無効事件
 本件特許では当事者が補足的に提出する実験データを提出が問題となり、証拠提出責任、証拠の形式的要件と実体的要件である真実性、関連性、証明力などの複数の観点から審査する証拠規則を説明し、従来技術の否定的記述が技術的示唆の判断の障害となるかどうかの判断の指針を提供した。結果は、無効取消。審決59745、請求人:劉某氏

5.「配列操作のためのシステム、方法及び最適化された指導組成物のエンジニアリング」発明特許201380070567.X(Broad Instituteほか)無効事件
 本件特許ではPCT出願の出願人の一部が譲渡により変更された場合の優先権主張の判断に係り、後の出願人が優先権を享受できるかどうか判断基準を示した。結果は、無効取消。審決563732、請求人:ToolGen, Incorporated(KR)

6.「ポリ(アリーレンエーテル)共重合体」発明特許200680046261.0(High-tech Special Engineering Plastics Global Technology Co., Ltd.)無効事件
 本件では化学分野のパラメータの特徴が従来技術に開示されているか否かを判断するための典型例を示すとともに、無効手続きで特許権者の意見をどのように考慮するかについて示した。結果は、有効維持。審決560904、請求人:河北健馨生物科技有限公司

7.「複合装飾パネル」実用新案特許201920768950.7(譚校鋒)無効事件
 本件には関連侵害訴訟があり、有効な判決で確認された証拠がある場合、その事実を覆すに十分な反証が必要であるという司法解釈を適用し、無効審判での当該有効な判決で確認された事実をどのように判断するか、また覆す基準をどのように判断するかを明らかにする模範的な意義がある。結果は、無効取消。審決563521、請求人:梁某氏

8.「高速ダウンリンクパケットアクセスのための追加変調情報シグナリング」発明特許200780048958.6(Nokia Technologies Ltd.)無効事件
 本件特許では優先権を確認するときの「先願が後願と同一の主題を実質的かつ明確に記載しているか否か」の判断に関し、特許審査指南の関連規定に基づき優先権の基礎となる先の出願における技術的事実の記載の程度で満足すべき明確な記載の要件を確認した。結果は、無効取消。審決56283、請求人:OPPO広東移動通信有限公司

9.「スポーツシューズ」意匠特許201930327108.5(喬丹体育股份有限公司)無効事件
 本件意匠特許ではかかと部分にある係争意匠設計がロゴの役割を果たしているかどうかが焦点となる先行商標との抵触の判断要素と判断方法に関し、係争意匠は、客観的に商品の出所を識別する効果はなく、識別的使用ではなく装飾的使用であり、関係公衆に先行商標と混同させることはないと指摘した。結果は、有効維持。審決563861、請求人:Puma Europe GMBH

10.「食物容器と注意力喚起装置と方法」発明特許出願201980006158.0(DABUS, Stephen L. Taylor)拒絶査定再審請求事件
 本件特許の出願は、発明者をAIのDABUSとして、アメリカ、イギリス、EUなどで相次いで特許出願しており、AIが発明者名足りうるかである。再審決定は民法典の人格権の基本原則に基づき、公民としての民事主体のみが発明者としての民事上の権利の所有者となることができると中国で初めての判断を下したことに意義がある。結果は、拒絶査定有効維持。審決1373038

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/4/26/art_3382_4.html

【中国】2023年中国法院知財10大事件と50典型事件(4月22日)

最高人民法院は、4月22日、記者会見を開き、2023年度の知的財産保護状況を報告すると同時に、2023年の中国法院10大知的財産権事件と50典型的知的財産権事件を発表した。特許、商標、著作権、植物新品種、不正競争防止と独占などの知的財産権をカバーし、司法保護では以下のいくつかの特徴がある:
一、人民法院は質の高い発展というテーマを把握し、科学技術イノベーション成果を厳格に保護し、新たな質の高い生産力の発展に奉仕した。
二、社会の懸念に積極的に応え、一般大衆の合法的権益を確実に保護した。
三、新技術、新業態、新分野における審判規則を模索し、新経済と新推進力に貢献した。
四、平等な保護を強化し、市場化、法治化、国際化のビジネス環境を積極的に構築した。
五、連携協力を強化し、知的財産権の全チェーン保護を強化し、包括的保護活動枠組みを構築した。

2023年中国法院10大知的財産権事件
1.「西门子(シーメンス)」商標権侵害及び不正競争事件
 西门子股份公司、西门子(中国)有限公司vs寧波奇帅电器有限公司など[最高人民法院(2022)最高法民终312号]
 ポイント:商標権、商号などの虚偽表示、損害賠償算定のための証拠提出拒否隠蔽工作を妨害行為と認定、一審判決の1億元の賠償額を追認。
2.「拉菲(LAFITE)」商標権侵害及び不正競争事件
 Chateau Lafite Rothschild vs南京拉菲庄园酒业有限公司など7社[最高人民法院(2022)最高法民终313号]
 ポイント;被告が著名商標を真似た「拉菲庄园」をワイン類に悪意で登録し事業に利用した行為を不正協行為と認定、懲罰的賠償を適用し合理的支出を含め7917万元の賠償を命令。
3.「顔認識」発明特許権無効行政事件
 北京中科奥森科技有限公司vs国家知識産権局、Apple電脳貿易(上海)公司[最高人民法院(2021)最高法知行终556号]
 ポイント:対象特許CN100361135Cの無効取消手続き中の請求項の補正が記載範囲を超えかつ無効理由を克服する以外の補正がされたと認定し、差戻を裁定。特許審査指南の改正に反映されており、無効取消中の補正は無効理由に対応する範囲に限定される。
4.「丹玉405号」トウモロコシ植物新品種権侵害事件
 遼寧丹某種業科技股份有限公司vs凌海市農某種業科技有限责任公司、青島連某農業技術発展有限公司[最高人民法院(2022)最高法知民终2907号]
 ポイント:懲罰的賠償の基数が不明確という理由だけで法定賠償額を適用すること否定。
5.ナビゲーション電子地図著作権侵害及び不正競争事件
 北京四维图新科技股份有限公司vs北京百度科技有限公司など[北京市高級人民法院(2021)京民终421号]
 ポイント:地図を著作権での図形作品と認定し、権利者の挙証内容を確認した地図作品の典型的事件。
6.「データ」不正競争事件
 北京微梦创科網絡技術有限公司vs広州简亦迅信息科技有限公司など[広東省高級人民法院(2022)粤民终4541号]
 ポイント:悪意のある技術的手段を用いてサーバーのAPIにアクセスし不正に大量なデータを取得し転売したと認定した典型的事件。
7.医療機器ソフトウェア著作権侵害刑事事件
 劉某生、劉某[上海市第三中級人民法院(2023)沪03刑初23号]
 ポイント:刑法改正案(11)の施行後、技術的手段を意図的に回避することによる著作権侵害の典型的刑事事件。
8.「香菇多糖(レンチナン)」営業秘密侵害事件
 南京汉欣医药科技有限公司vs帝某製薬(江蘇)有限公司[江蘇省南京市中級人民法院(2019)苏01民初3444号]
 ポイント:漢方薬の営業秘密が技術協力契約に含まれ、被告の技術譲渡が秘密保持違反に該当すると認定された事件で、伝統的な技術保護に有意義な事件。
9.「小愛同学」起動用語ウェイクアップワードの不正競争事件
 小米科技有限責任公司vs陳某、深圳市雲某科技有限公司[浙江省温州市中級人民法院(2023)浙03民初423号]
 ポイント:AI搭載電子機器の起動用語「小愛同学」は商標登録などもされており広く使用され一定の影響があると名称と認定し、被告が「小愛同学」などの商標を大量に先取り登録し使用する行為を不正当競争行為と認定した事件。
10.「青少年模式(未成年モード)」不正競争事件
 深圳市腾讯計算機系統有限公司などvs北京愛某科技有限公司[天津自由貿易試験区人民法院(2022)津0319民初23977号]
 ポイント:原告が運営するアプリに保護者が設定できる未成年モードをブロックするアプリの提供が不正協行為と認定された事件。

〇2023年中国法院50典型知的財産権事件
1.知的財産権民事事件45件
(1)特許権帰属、特許権侵害及び特許権保護範囲確認紛争事件5件
(2)商標権侵害紛争事件9件
(3)著作権帰属、著作権侵害及び著作権非侵害確認紛争事件10件
(4)不正競争、独占紛争事件15件
(5)植物新品種、技術契約紛争及び司法処罰事件6件
2.知的財産権行政事件2件
3.知的財産権刑事事件3件

参照サイト:最高人民法院のサイトは日本から閲覧できないため参考サイト
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1797033257381021168&wfr=spider&for=pc

【中国】中国法院知的財産権司法保護状況(2023年)、前年比5%増!(4月22日)

最高人民法院は、4月22日付、記者会見を行い、「中国法院知的財産権司法保護状況(2023年)」などを発表した。
 昨年、全国の人民法院は一審、二審、再審で54万件以上の知的財産事件を受理し、前年比+3.4%増となった。

(1)民事訴訟事件
 2023年の地方の各クラス人民法院は民事一審事件を462,176件受理し、前年比べ2.3万件増、+5.4%増加した。内訳は下記の通りであるが、著作権侵害事件が4千件減、▲1.6%減、その他が0.5%減となった。特許侵害事件が5.7千件増、+14.7%、商標侵害事件が1.9万元増、+16.8%増、技術契約が2.2千件増、+53.2%増、不正競争事件も842件増、+9%増加した。審決は、第一審460,306件と前年比+0.5%増加した。第二審の受理は、37,214件と▲24.8%減、処理も38,713件と▲20.4%と大きく減少した。

2019-2023年 民事第一審受理件数推移
2023年 民事第一審受理構成

(3)行政訴訟事件
 2023年の地方各クラスの人民法院は行政一審事件を20,583件(前年20,634件)受理し、前年比▲0.3%減少した。この内、特許事件は1,990件(前年1,876件、前年比+5.8%)、商標事件は18,558件(前年18,738件、前年比▲1%)、著作権事件は11件(前年12件、前年比1件減)である。処理も22,340件と前年比+26.7%増加した。第二審の受理は10,053件(前年5,897件、前年比+54.6%)、処理は結審9,259件(前年7,285件、前年比+18%)である。原審維持率は7,477件(前年5,518件、前年比+35.5%)と増加した、全体の構成比でも80.7%と増加した。

(4)刑事訴訟事件
 2023年の地方各クラスの人民法院は刑事一審事件を7,335件(前年5,336 件)受理し、審決6,967件(前年5,456 件)処理し、それぞれ前年比+37.5%、+27.7増加した。その内、登録商標類侵害事件は6,634件(前年4,971 件、前年比+33.4%)、著作権侵害事件は627件(前年304件、前年比+106.2%)とそれぞれ増加し、行政での処理が増えている。第二審の受理は956件(前年979件、▲2.4%)、処理は審決965件(前年977件、▲1.2%)とそれぞれ減少した。

 会見や報告書では、①公平性と効率性を確保した知的財産権司法保護レベルの向上、②改革とイノベーションを深化させた知的財産権司法保護メカニズムの改善、③法の統一した適用による知的財産権での司法の信頼性の向上、④国家威信に基づく新レベルの生産力の発展に貢献、⑤連携と協力の強化による知的財産事件の訴訟源の管理の推進、⑥ 国際交流の強化による知的財産権司法保護の国際的影響力の拡大について説明しているが、主な注目点は、以下の通り。
 知的財産民事侵害訴訟で319件に懲罰的損害賠償を適用し、賠償額は11.6億元に達した。最高人民法院は、「盼盼」商標権侵害と不正競争事件で4倍の懲罰的損害賠償を適用し1億元を超えた。「ゴム酸化防止剤」の秘密侵害訴訟の賠償額は2億200万元で、同様の訴訟での最高額を更新した。一方、「メラミン」発明特許と営業秘密侵害事件では6.58億元以上の賠償とともにライセンス供与関係での全面和解で解決するなど和解による解決を進めている。
 また、知財訴訟制度では、専門性や集中化を進める上での知財訴訟特別手続法の起草、技術調査官の人材バンク、「三合一」裁判の推進を行っており、現在、25の高級人民法院、242の中級人民法院、287の基層人民法院が知的財産権民事、行政、刑事事件の集中管轄している。今後は、新技術やコア技術の判断の難しい事件の対応、悪意訴訟や不誠実な事業に対する対応に独占禁止や不正競争事件を含めた事件処理の対応などにAIの活用やデジタル対応の新たな保護モデルの開発に向かうとしている。
 報告書のデータであるが、2022年度は商標と著作権の事件が大きく減少したが、2023年は著作権侵害事件が微減で、今後はあまり大きく増加していかないように思われる。商標事件と特許事件は過去最高と増加傾向を示している。商標事件では、商標取消再審行政事件で「類似商品とサービス区分表」の項目変更のために商標権者の権利範囲を縮小したり、不利な解釈をしたりしないことを明確にしている。なお、法院と国家知識産権局の商標行政事件の意思疎通と協調を強化することで6月から12月の行政訴訟の月平均受理数を1月から5月に比べ23%減少させている。今後は悪意のある商標先取りなどの違法行為に積極的に取り組むとしている。

参照サイト:https://www.chinacourt.org/article/detail/2024/04/id/7908550.shtml
  報告書 https://img.chinacourt.org/mup/uploadfile/2024/04/22/12/8fa944f259dcc2705ffe283a7c2be810.pdf

【中国】「最高人民法院知的財産権法廷裁判要旨(2023)」の公示(2月23日)

最高人民法院は、2月23日付、「最高人民法院知的財産権法廷裁判要旨(2023)(最高人民法院知识产权法庭裁判要旨摘要(2023))」を公示し、2023年に審理された4,562件の知的財産権の技術類と独占の事件から96件(昨年61件)の重要事例を抽出し、以下の8カテゴリーに104の要旨に分け、各界の研究と参考のために発表した。

(1)特許登録確認事件 (29件)
(2)特許帰属、侵害事件 (29件)
(3)植物新品種事件 (14件)
(4)営業秘密事件 (12件)
(5)独占事件 (9件)
(6)コンピューターソフトウェア事件(4件)
(7)技術類知的財産権契約事件(4件)
(8)訴訟手続き (3件)

参照サイト:https://ipc.court.gov.cn/zh-cn/news/view-2788.html
参照事件リスト

【中国】「最高人民法院知識産権法廷2023年度報告」の公示(2月23日)

最高人民法院は、2月23日付、「最高人民法院知識産権法廷年度報告(2023)」を公示した。本年度報告は4部13項目、25頁からなり、概要は以下の通りであるが、最高人民法院の最高知識産権法廷での事件であり、原則、第二審が対象となる。

(1)2023年の処理状況
①2023年の事件数
 2022年の技術類知的財産権と独占事件の受理7,776件(前年6,183件、+25.8%)、内、新規5,062件。審決4,562件(前年3,468件、+31.5%)。裁判官一人当たりの担当件数140.4件(前年142.5件)、また処理件数82.3件(前年79.9件)で2.4件増加している。
②事件内容別内訳
 民事二審は3,222件(前年2,956件、前年比+9%)で、
 発明特許権侵害687件(前年615件、前年比+11.7%)、
 実案特許権侵害1,125件(前年968、前年比+16.2%)、
 特許出願権と権利帰属紛争285件(前年312件)、
 植物新品種権紛争168件(前年144件)、
 集積回路配置設計紛争2件(前年6件)、
 営業秘密紛争113件(前年78件、前年比+44.9%)、
 コンピュータソフトウェア紛争704件(前年648件)、
 契約紛争14件(前年96件)、
 独占紛争25件(前年15件)、
 その他の紛争は99件(前年74件)。全体的に増加している。
 行政二審1,227件(前年877件、前年比+39.9%)は不服再審で、
 特許出願296件(前年241件)、
 実案特許出願46件(前年27件)、
 意匠特許出願7件(前年0件)、
 発明特許権無効365件(前年234件、前年比+55.9%)、
 実案特許権無効330件(前年207件、前年比+59.4%)、
 意匠特許権無効139件(前年84件、前年比+65.5%)、
 植物新品種紛争3件(前年3件)、
 独占行政紛争19件(前年24件)、
 行政処罰などその他の行政事件72件(前年65件)を処理したが、
 特許無効関係が大きく伸び、有効性が一審で決着しないことが増加していることがわかる。
③審理結果
 審決4,562件(前年3,468件)での原審維持2,260件(前年2,040件)、維持率49.5%(前年58.8)、過去5年の平均原審維持率は41.6%である。なお、却下裁定は21.5%であった。民事調停が368件(前年2688件)と大きく増加している。却下再審・改審892件(前年468件)と全体の19.6%を占める。その他は51件(前年66件)。

④外国、香港澳門台湾の関与事件
 第一審の受理490件(前年457件、前年比+7.2%)で全体の9.7%を占め、外国は421件、香港澳門台湾は69件。民事246件(前年274件)、行政244件(前年183件)。結審は391件。なお、過去5年間に1,678件受理し、内、アメリカ31%、ドイツ、フランス、イタリアなどECで36%、日本15%、スイス6%、イギリスと韓国がそれぞれ3%を占めている。

(2)事件の全体的特徴
 ① 権利侵害民事事件は5年連続増加、平均伸び率35.3%。植物新品種の紛争の増加が持続している。
 ② 行政事件が昨年減少したが2023年は大きく増加した、特に発明特許出願不服再審が-47.3%、同無効行政不服再審-17.3%とそれぞれ減少した。
 ③ 戦略的新興産業分野の事件が244件増加し全体の31.3%(前年30.42%)と相変わらず増加傾向である。 
 ④第二審での実質的な判決変更が25.7%と積極的な前審に対する監督業務が進んでいる。

参照サイト:https://ipc.court.gov.cn/zh-cn/news/view-2789.html