【欧州】EPO拡大審判部G1/24審決 EPC69条適用(6月18日)

ヨーロッパ特許庁拡大審判部(EPO The Enlarged Board of Appeal)は、Philip Morris 社の欧州特許EP 3076804(加熱式タバコ)に対する異議申立事件におけるクレーム解釈いて、技術審判部3.2.01による2024年6月24日の中間決定T0439/22による付託(G1/24)を受けて審理を行い、2025年6月18日、特許の保護範囲は請求項により決まるが、「請求項を解釈するために明細書と図面が使用されなければならない」と定めるヨーロッパ特許法EPC69条を尊重する審決を出した。

 本件特許は、加熱式タバコに用いられる加熱エアロゾル発生物に関し、請求項はエアロゾル形成材料の「集合体シート(gathered sheet)」を有するエアロゾル形成基質を含む加熱エアロゾル発生物を権利範囲である。
 異議申立人は、「集合体」の用語は、明細書での定義に基づき、EPC69条(1)項の「明細書と図面はクレーム解釈に用いられる」との規定に基づき、本件請求項を解釈し、先行例に基づき新規性欠如と判断すべきであると主張した。
 EPO異議部は、クレーム解釈で明細書と図面の開示を参酌するのは、EPC84条に基づき、請求項の不明確な記載を明確にする限定的な場合に限られると判断しました。
 EPC69条は特許性より侵害判断に関連しており、EPC84条は保護範囲よりは形式的要件に対応する性質があると言えます。統一特許裁判所(UPC)でのクレーム解釈も69条の適用した判決を出していることから、本審決では統一した判断が出されたことになる。

従って、EP実務において、クレーム解釈は明細書と図面の記載が重要な意味を持つことになるため、EP出願時のクレーム作成、そして紛争発生時のクレームを解釈に注意が必要である。当然と言えば当然の判断と言える裁定と言える。明細書やクレーム作成では、明示的定義だけでなく、当業者での暗黙的定義、さらに使用する技術用語の特定の解釈にも注意を払う必要がある。

参照サイト:https://www.epo.org/en/boards-of-appeal/decisions/g240001ex1
審決書 https://link.epo.org/web/case-law-appeals/Communications/G_1_24_Decision_of_the_Enlarged_Board_of_Appeal_of_18_June_2025.pdf