欧州連合一般裁判所(General Court of the European Union)は、Adidas AGの欧州登録商標012442166(登録日:2014年5月21日)に対するベルギーのShoe Branding Europe BVBAの2016年の取消請求を認めた審決(R1515/2016-2、2017年3月7日)に対する、Adidas社の行政不服訴訟(T‑307/17),において、審決を支持し、無効を確認した。
本件商標は、25類を指定し、衣類、靴類及びヘッドギア(Clothing; Footwear; Headgear)を指定商品としており、同じ幅の3本の平行線が等間隔で製品にあらゆる向きで配される( The mark consists of three parallel equidistant stripes of equal width applied to the product in whichever direction )との説明がある。
Shoe Branding社は2016年の取消請求で、規則7条(1)(b)の識別性欠如による登録(規則59条(1)(a))と主張した。これに対して、EUIPOの 取消部はこの登録商標には本質的な識別性(inherent)も使用による識別性(acquired through use)もないと無効の判断を下した。
Adidas社はこれを不服として上告し、商標が特定の寸法と幅と高さの比率でのみ指定されたため審判部は誤認したこと、またそうした指定による図形商標として登録されているが、パターン商標であると主張した。
一般裁判所は、本件登録商標は通常の図形商標であり、一連の規則的に繰り返す要素からなるパターン商標ではなく、また、商標の使用形態、例えば、白地に黒のストライプと言った配色、は商標のその他の本質的な特徴として考慮できないと判断した。
また、Adidas社の主張する「許容可能な変形の原則(law of permissible variations)」について、一般裁判所は商標は登録された態様で使用されるべきであるとした。
これは、Adidas社がEU域内で靴の斜めのストライプ以外に、下記のようにバックや衣服に縦のストライプを使用しているようであるが、こうした使用による顕著性を主張することに失敗しただけでなく、商標の顕著性を変更しない範囲でのバリエーションでの使用についても主張が受け入れられなかったと言える。
Adidas社は今のところ欧州司法裁判所に上告するかどうは明らかにしていない。なお、Adidas社はご参考までに以下のようなストライプの欧州登録商標も別途保有している。
参考サイト:https://curia.europa.eu/jcms/upload/docs/application/pdf/2019-06/cp190076en.pdf