【アメリカ】AIの特許適格性ガイドライン更新(7月17日発効)

アメリカ特許商標庁(USPTO)は、2024年7月17日から適用する人工知能(AI)を含む新しい技術イノベーションに対応するため、特許対象適格性(35 § USC 101)に関するガイドライン更新版を公示した。

この最新の更新版では、AI技術関連する発明を含む特許出願と特許クレームの対象適格性を評価する方法にさらなる明確さと一貫性を示すことを目的とし、以前のガイダンスに基づき新しい事例を3件含めており、クレームが抽象的なアイデアを述べているかどうか、またはクレームが抽象的なアイデアを実際のアプリケーションに統合しているかどうかなど以下の通り

■  Claims to “collect[ing] information on a user’s movements and location history [and] electronically record[ing] that data” (i.e., “creating a digital travel log”), Weisner v. Google LLC, 51 F.4th 1073, 1082 (Fed. Cir. 2022) (citation omitted). Under the USPTO’s guidance, this is an example of “managing personal behavior or relationships or interactions between people.”

■  A claim to “monitoring the location of a mobile thing and notifying a party in advance of arrival of that mobile thing [ ] amount[s] to nothing more than the fundamental business practice of providing advance notification of the pickup or delivery of a mobile thing,” agreeing with the district court that “business practices designed to advise customers of the status of delivery of their goods have existed at least for several decades, if not longer.”Elec. Commc’n Techs., LLC v. ShoppersChoice.com, LLC, 958 F.3d 1178, 1181 (Fed. Cir. 2020). Under the USPTO’s guidance, this is an example of a fundamental economic principle or practice.

■  Claims to methods for detecting fraud in financial transactions during a payment clearing process, including determining when there is a match between two financial records, sending a notification to a bank with authorization to process the financial transaction when there is a match, and sending a notification to a bank to not process the financial transaction when there is not a match,Bozeman Fin. LLC v. Fed. Reserve Bank of Atlanta, 955 F.3d 971, 978 (Fed. Cir. 2020). Under the USPTO’s guidance, this is an example of a fundamental economic principle or practice.

ガイドラインの更新版は、以下のURLで確認することができる。また、USPTOのAI関連情報サイトもご参考まで。

参照サイト:https://www.uspto.gov/about-us/news-updates/uspto-issues-ai-subject-matter-eligibility-guidance
AI関連情報サイト https://www.uspto.gov/initiatives/artificial-intelligence/artificial-intelligence-reports

【アメリカ】USPTO実務でのAIツールの使用に関するガイダンスの公示(4月11日)

アメリカ特許商標庁(USPTO)は、3月11日付、USPTO実務でのAIベースツール使用に関するガイダンス(Guidance on Use of Artificial Intelligence-Based Tools in Practice Before the United States Patent and Trademark Office)を官報で公示し、特許や商標実務担当者、発明者、起業家などがUSPTO実務でAIが悪用されたり、チェックされないままに利用されたりすることによる、AIの使用によるリスクが発生しないように注意喚起するためのガイダンスとするとしている。

本ガイダンスは、USPTO 実務で AI を使用することで発生する可能性のある規則、方針、或いは問題点の網羅的なリストを提供することを目的としたものではなく、AI が発明プロセスの一部として使用された場合のAIの使用について個別に取り上げている。アメリカの特許実務では、先行技術を調査し、クレームを作成し、出願明細書のレビューを容易にし、特許出願の審査プロセスを自動化し、審査官の対応についての洞察を得るためにもAIツールを活用するなどAI依存度が高まっているため、そうしたAIツールを使用する際に懸念されるリスクとして、不完全や不正確な出力、重大な虚偽記載や脱落など十分な確認をしないことによる手続き上の問題のみならず、秘密保持や倫理問題が生じるのは当然であろう。

官報では、セクション II でUSPTO の既存の規則と方針の概要を説明し、セクション III でこれらの既存の規則と方針がUSPTO実務でAIツールの使用という文脈でどのように適用されるかについて説明している。 具体的には、セクション III(A) でUSPTO に提出する文書の作成におけるAIの使用、セクション III(B) でAIを活用した USPTO への文書提出、セクション III(C)でUSPTO のITシステムとの通信におけるAIの適切な使用について説明し、セクション III(D)でAIの使用に関連する機密保持と国家安全保障上の懸念を提起している。
II. The USPTO’s Existing Rules and Policies
 A. Duty of Candor and Good Faith
 B. Signature Requirement and Corresponding Certifications
 C. Confidentiality of Information
 D. Foreign Filing Licenses and Export Regulations
 E. USPTO Electronic Systems’ Policies
 F. Duties Owed to Clients
III. Application of the Existing Rules as to the Use of AI, Including Generative AI, Before the USPTO
 A. The Use of Computer Tools for Document Drafting
 1. All Submissions and Correspondence With the USPTO
 2.Additional Examples in the Patent Context
 3. Additional Examples in the Trademark Context
 B. Filing Documents With the USPTO
 C. Accessing USPTO IT Systems
 D. Confidentiality and National Security Considerations
 E. Fraud and Intentional Misconduct
IV. Conclusion

なお、アメリカでのAIが発明者になりうるかどうかの判断は、USPTOが特許法§100(f)(g)項に定義される発明者は自然人だけであるとして、Stephen Thaler博士のAI(DABUS)を出願人とする特許出願を拒否したことに対する異義申立を最終的に最高裁判書が2023年4月24日に棄却しているため、AIは発明者になり得ない情況であった。これを受けて、USPTOは、2024年2月13日にAI補助による発明者確定ガイド(Inventorship Guidance for AI-Assisted Inventions)を公示している。

参照サイト:https://www.federalregister.gov/documents/2024/04/11/2024-07629/guidance-on-use-of-artificial-intelligence-based-tools-in-practice-before-the-united-states-patent

【中国】「最高人民法院による人工知能の司法応用の規範化と強化に関する意見」の公示(12月9日)

最高人民法院は、12月9日付、「最高人民法院による人工知能の司法応用の規範化と強化に関する意見(最高人民法院关于规范和加强人工智能司法应用的意见)」(法発[2022]33号)を中国語と英語で公示した。これは、中国共産党第20回全人代での第14次5か年計画と2035年長期目標及び次世代の人工知能発展計画に基づいており、人口知能(AI)と司法活動の融合を推進し、スマート裁判所の建設、より高いレベルのデジタル解釈を進めるとしている。

意見は、以下の6項目から構成されいる:
1.指導思想(1項)
2.全体目標(2項)
3.基本原則(3-7項)
4.適用範囲(8-12項)
5.システム構築(13-17項)
6.総合保障(18-20項)

本意見では、人民のための公正な司法であるためにAIを導入することにより、全面的な業務支援を対象とし、2025年までにシステム改善を行い、裁判官の事務負担の軽減、腐敗の防止、管理レベルや社会的ガバナンスの向上を目指し、2030年までにモデルルールと実効を上げる司法での人工知能利用アプリケーションと理論的システムを構築することを目標としており、適用範囲は、審理業務、事務手続き、業務管理、多元的紛争処理、業務サービス支援をとしている。詳細は、英語版でご確認ください。

日本では裁判所での業務すらシステム化が遅れており、案件管理、証拠、ネットを活用した開廷審理、審理のビデオ録画などいつのことになるやら。中国でのAIの導入は現場の問題を解決する上で大きな支援となるであろう。もちろん、問題がない訳ではない。

参照サイト:https://www.court.gov.cn/fabu-xiangqing-382461.html

【アメリカ】USPTOはAI技術と特許の報告書を公示(10月7日)

アメリカ特許商標庁(USPTO)は、昨年2019年8月27日付の官報(FR)において、AI技術と特許出願に関する一般からの意見聴取の公示を行った。その目的は、人工知能の発明の信頼性と予測可能性を促進するためのさらなる調査が必要かどうかを評価することであり、人工知能の発明に関する特許関連の問題に関する情報を収集することに関心を持ったためである。

人工知能(AI)は、さまざまなテクノロジーやビジネスでますます重要になってきており、そして、 AIの実行には常に何らかの形のコンピューターの実装が必要であるため、コンピューターに実装された発明(ソフトウェアなど)に関連する特許性の問題の多くは、AIの発明の議論に密接に関係している。AIの方法とシステムでは技術的な実装が異なるが、発明者や開発者だけでなくシステムの利用者による比較的高いレベルの開発とトレーニングに依存している。
USPTOは、AIの発明を数十年にわたって調査し、AIの発明に必然的に関連する多くの分野でガイダンスを発行してきているところ、今後、知財業界やAIの専門家と協力し、予測可能性を促進するために追加のガイダンスが必要かどうかを判断する必要性があるかどうか、そして、そのような発明に特許を取得することの信頼性とこの重要な領域内およびその周辺での更なるイノベーションを促進するための適切な特許保護のインセンティブが確実に実施されるようにすることもの必要性も考えている。

USPTOは、AIに関する専用のサイトを開設しており、そのサイトで上記の意見募集の収集結果を取りまとめ、10月7日付で公示した。意見募集は12の設問があり、2019年11月8日までに日本を含む99件のコメントが提供された。本報告書では、第一部は人工知能技術の特許に特化し設問ごとに回答を分析し、第二部は商標、著作権、営業秘密などの人工知能技術の非特許知的財産保護に特化してその回答を分析している。
 分析によると、パブリックコメントの大多数は、AIの定義を提供していませんが、現在の最先端技術は“狭義の”AIに限定されていることに同意し、それは明確に特定の分野(画像認識、翻訳など)で個別のタスクを実行するシステムとなっている。
 特許制度については、大多数は、AIがコンピューターで実装された発明のサブセットとして最もよく見られるので、現行のUSPTOのガイダンスは、AIの進歩を特許の主題としての適格性とコンピューターで実装された発明の開示を処理するためものと判断しており、特に複数のコメントは特定なAIの発明(ユーザー支援)などは35 U.S.C. § 112(a)の要件に対応するのは難しく、USPTOは更なるガイダンスを出すべきとしている。そして、AIの普及が進むことで、USPTOと裁判所が当業者によるの法的な仮想基準と特許権の有効性の評価することに影響及ぼすと考えている。
 その他の著作権、商標、企業秘密及びデータの分野について、大多数は、正しく調整されている考えているようであるが、既存のビジネスの原則がAIの進歩による知的財産法との間に残されたギャップを適切に埋めると考えている( 例:契約法、商法など)。
 これらは日本での考え方と概ね変わりはない様に思いますが、詳細はレポートをご参照ください。

 参照サイト:報告書 https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/USPTO_AI-Report_2020-10-07.pdf
 USPTO AI関連サイト https://www.uspto.gov/initiatives/artificial-intelligence
 
 

【シンガポール】AI技術の特許出願に6か月の早期審査導入(4月26日)

ユニークな知財制度を積極的導入するシンガポール知的財産庁(IPOS)は、新たな施策として、シンガポールを第一か国(最初の出願国)とするAI技術の特許出願について、強力な支援として、通常2年かかる実体審査を世界最短の6か月で実施する審査促進制度の導入を公示し、即日施行した。

IPOSの言うAI技術とは、人間の特性である、例えば、特定のタスクを達成するための感覚、理解、行動、および学習などをシミュレートすることに関連する一連の技術を指すとしている。特に、マシーンラーニング(機械学習)を事例に取り上げ、アルゴリズムと統計モデルを使用して、特定のタスクを実行する、つまり、明示的なプログラムがなくともコンピューターが決定できるものとして、画像認識、音声認識、自然語処理、自律システムを上げている。

IPOSでの審査促進制度は、今回のAI技術以外に、2018年4月に導入されたフィンテック技術がある(2020年4月25日出願までの期限付き)。また、12か月登録制度やPPHもある。なお、2020年1月1日以降の特許出願には修正実体審査を廃止することが2017年10月の改正で公示されている。

https://www.ipos.gov.sg/media-events/press-releases/ViewDetails/AIAI-launch/#_ftn7

https://www.ipos.gov.sg/protecting-your-ideas/patent/application-process/accelerated-programmes