【中国】国家知識産権局の2020~2021年の推進計画、「知的財産権の保護強化に関する意見」の公示(4月20日)

国家知識産権局(CNIPA)は、4月20日付、2020~2021年の推進計画である「知的財産権の保護強化に関する意見」を公示した。意見は、以下の8分野133項目からなる。
一、知的財産権法律、法規と規範性文書の改訂
二、知的財産権行政の法執行と司法保護の強化
三、知的財産権の保護メカニズムの整備
四、知的財産権の高速保護のための要点の最適化
五、知的財産権保護の拡大対外交流と協力
六、知的財産権保護資源の保障強化
七、知的財産権保護宣伝と文化建設の推進
八、知的財産権保護組織の保障の強化
以下、一から四分野を仮訳でご紹介する。

一、知的財産権法律、法規と規範性文書の改訂
1.特許法の改正審議を推進し、侵害処罰補償制度の導入、特許の有効期間の延長、医薬品特許保護などの強化。同時に専利審査指南の改正。
2.著作権法の改正審議を推進し、侵害処罰の賠償条項の追加、侵害法定賠償額の上限の大幅な引上、損害賠償レベルの増強。
3.状況に応じた商標法改正を推進し、商標保護と法律執行の強化。
4.民法典侵害責任編の制定推進での知的財産権侵害の具体的処罰・賠償条項の制定(継続推進)。
5.刑法改正を推進し、営業秘密侵害条項の充実、刑法上の営業秘密侵害、刑事手続の細分化及び処罰の徹底、侵害偽商品の廃棄、政府の開示行為の規範化などの規定を強化。
6.状況に応じた行政許可法、不正競争防止法の改正を推進し、営業秘密とビジネス情報の秘密保持による保護の強化。
7.状況に応じた電子商取引法改正を推進し、ECプラットフォーム事業者の責任強化、民法典権利侵害責任編の関連条項との一致性確保、EC分野の知的財産権保護の強化。
8.医薬品特許紛争早期解決メカニズムの確立(2020年10月末までに完成)。
9.文化産業促進法を研究制定し、文化産業の知的財産権保護を強化(継続推進)。
10.知的財産権の基礎的な法律制定の必要性と実現可能性の調査研究(継続推進)。
11.地理的標識保護立法を研究推進し、立法プロジェクトの評価論証(2021年12月末までに完成)。
12.植物新品種保護条例改正を推進(継続推進)。
13.漢方薬伝統知識保護条例制定を推進(継続推進)。
14.団体商標、証明商標の登録管理弁法を改正(継続推進)。
15.被疑犯罪事件の行政法執行機関移管規定の改正、被疑犯罪事件の行政法執行機関から刑事司法機関への移送関連手続きと要件の改善(2020年7月末までに完成)。
16.最高人民法院による営業秘密紛争事件の審理における法律適用に関する若干問題の解釈の制定(2020年8月末までに完成)。
17.最高人民法院による特許権登録確認行政事件の審理に関する若干の問題に関する規定(一)の迅速公布(2020年8月末までに完成)。
18.ニセモノのネット侵害打撃に関する司法解釈の公布(2020年8月末までに完成)。
19.最高人民法院、最高人民検察院の知的財産権侵害刑事事件の具体的法律適用に関する若干問題の解釈(三)の制定(2020年8月末までに完成)。
20.公安機関の管轄に関する刑事事件立件訴追基準に関する関連規定の改正・改善(2020年8月末までに完成)。
21.知的財産権侵害犯罪事件の公訴業務証拠審査手引きの制定(2021年12月末までに完成)。
22.著作権と隣接権の法律執行保護指南の研究、公布(2020年10月末までに完成)
23.民間文学芸術作品の著作権保護弁法の研究制定(2021年12月末までに完成)。
24.知的財産権に関する法律文書認証、証人証言などの証拠規則の研究、公布(2020年10月末までに完成)。
25.知的財産権民事、行政、刑事事件「三合一」審判に関する若干の問題の意見の制定(継続推進)。
26.スポーツ大会中継放送著作権保護の調査研究(2021年12月末までに完成)。
27.文化市場総合法執行事件の証拠規則の完成(継続推進)。
28.知的財産権侵害行為の懸賞金証拠公証取得業務に関する指導意見、全国公証電子証明業務サービス規範、第三者データ証明公証検査業務規範、電子証明公証技術の普及に関する意見の研究・制定(2021年12月末までに完成)。
29.営業秘密侵害行為の禁止に関する若干の規定の改正(2020年10月末までに完成)。
30.政策文書を発布し、行政許可手続き中の営業秘密とビジネス情報の秘密保持保護を強化(2020年10月末までに完成)。
31.知名商品特有の名称、包装、装飾の冒用の不正競争行為の禁止に関する若干の規定の改正(継続推進)。
32.デジタル文化産業のイノベーション発展を推進する政策的文書の研究、デジタル文化産業の知的財産権保護の強化(継続推進)。
33.ECプラットフォームでの知的財産権保護管理標準の研究、編成。ECプラットフォームでの海賊版、侵害とニセモノ出現対策の政策文書の制定(2020年10月末までに完成)。
34.ニセモノ権利侵害商品の廃棄に関する政策文書の制定、公布(2020年7月末までに完成)。

二、知的財産権行政の法執行と司法保護の強化
35.商標権侵害判断基準の制定、公布(2020年6月末までに完成)。
36.林業植物新種保護行政執行法弁法の改正(2021年12月末までに完成)。
37.年間特許、商標、著作権、農業植物新品種などの種類の税関、文化市場などの分野での行政法執行と司法保護の典型的事例の公示(2021年12月末までに完成、継続推進)。
38.全国文化市場総合法執行評定の展開、各地の法執行効果の向上を指導監督(2021年12月末までに完成)。
39.税関での「龍騰」知的財産権保護特別行動の展開、事件処理頻度の増加、知的財産権法執行情報の四半期毎公開制度の確立(2020年4月末までに完成)。
40.市場での法律執行レベル、事件処理頻度の増加、知的財産権法律執行情報の四半期毎公開制度の確立(2020年5月末までに完成)。
41.偽造医薬品の法律執行関連データの年度毎公開制度の確立(2020年7月末までに完成)。
42.健康と安全に危険な偽造商品への打撃、事件処理頻度の増加、法律執行データと情報の四半期毎公開制度の確立(2020年5月末までに完成)。
43.知的財産権行政保護技術調査官制度の研究・構築。知的財産権司法保護技術調査官の業務体制の継続的改善(2021年12月末までに完成)。
44.特許、商標権侵害紛争の検証・監査の試行の推進、知的財産権侵害紛争の検証・監査体系の充実、侵害損害評価制度の検討・確立(継続推進)
45.知的財産権法執行保護の特別行動、侵害偽造商品の廃棄、知的財産権侵害行為の打撃強化(継続推進)。
46.ネット侵害の海賊版対策「剣網」の特別行動の展開。先進地域で展開される著作権の新しい業態、新しい分野の事件の調査・処理を推進(継続推進)
47.文化市場での知的財産権法執行レベル強化、ネットでの演劇、音楽、アニメ市場の規範化整備活動の強化、知的財産権侵害事件の厳格調査(継続推進)。
48.偽ブランド(植物)権利侵害の撲滅活動、偽農業資金特別規律活動(継続推進)。
49.植物新品種権侵害特別活動(継続推進)。
50.偽造医薬品打撃法執行活動、偽造医薬品や生物製品などの関連商品の打撃活動。法律執行の国際協力、情報交換強化(継続推進)
51.不正競争法律執行特別プロジェクトを重点的に展開、冒認混同など知的財産権の不正競争行為の厳格取締(継続推進)。
52.「崑崙(食品医薬品の偽造品対策)」活動で刑事犯罪の打撃活動、偽造権利侵害犯罪の厳格取締(継続推進)。
53.知的財産権犯罪捜査業務制度の充実、情報誘導メカニズム構築の模索(継続推進)。
54.知的財産権刑事事件での逮捕、起訴業務集中管轄制度構築の模索(2021年12月末までに完成)。
55.知的財産権保護分野の民事、行政訴訟監督事件の処理レベル強化、誤った民事、行政判決及び裁判違法行為の監督、違法行為の執行(継続推進)。
56.関連司法政策を制定し、知的財産権侵害の懲罰的賠償制度の適用強化、高い法定賠償額の適用、知的財産権刑事犯罪の厳重処罰し、将来の知的財産権の窃盗や侵害行為の阻止(2020年8月末までに完成)

三、知的財産権の保護メカニズムの整備
57.知的財産権行政部門と公安部門の協力強化、行政解釈の迅速実施、重大事件の移送メカニズムの充実、被疑犯罪事件捜査業務の接続メカニズムの健全化、行政執行法と刑事司法の連携強化(継続推進)。
58.知的財産権紛争調停協議の司法確認の試行、知的財産権分野の人民調停組織と弁護士調停実験室の設立支援(継続推進)。
59.知的財産権侵害行為の懸賞金証拠公証取得業務試行、懸賞金証拠公証取得応用統一プラットフォームの開発、普及(2021年12月末までに完成)。
60.国家知識産権局と最高人民法院のデータ情報交換ネットワーク専用ラインの確立、推進、情報交換範囲の明確化(2021年12月末までに完成)。
61.特許、商標の行政権利確認と重大権利侵害の行政法執行事件の連携と情報共有メカニズムの研究、試行(継続推進)。
62.知的財産権の部門間法執行保護協力と長江デルタ、珠江デルタ地区などでの地域間連携ニセモノ対策の強化(継続推進)。
63.人民代表大会の監督下、特許法、著作権法など関連法規の改正状況に基づき、適時に知的財産権の法執行の検査強化(継続推進)。
64.政治協商の民主的監督下、知的財産権保護をめぐる政治協商の重点内容の提案、提案委員、関連部門などによる特別提案の推進強化(継続推進)
65.知的財産権分野における信用を基礎とした等級分類監督試験。悪意商標登録の規制、非正常特許出願の検査監視。(2021年12月末までに完成し、継続的に推進)
66.国家知的財産権公共サービスプラットフォームと国家企業信用情報公示システムとの連携推進、知的財産権の質権設定登録、行政許可、行政処罰、抜取り検査結果など企業情報統一収集と共有公示の強化(2021年12月末までに完成)。
67.全国重大権利海賊版事件リストの公表。ソフトウェアの使用状況の年度審査と公表(2020年8月末までに完成、継続推進)。
68.特許代理業の監督管理の「青空」特別プロジェクトの推進、違法代理行為の取締(2020年12月末までに完成)。
69.知的財産権仲裁、調停の優先パイロットの推進(2021年12月末までに完成)。
70.仲裁委員会間で業界協力の強化、知的財産権仲裁業務プラットフォームの確立、業界仲裁規範の制定(継続推進)。
71.中国国際知的財産権仲裁委員会の設立(2020年12月末までに完成)。
72.知的財産権情報公共サービス業務ガイドの制定(2021年12月末までに完成)。
73.ボランティアによる知的財産権保護システム構築と奨励(2021年12月末までに完成)。
74.対外経済貿易協力契約の知的財産権条項の団体標準の公布(2021年12月末までに完成)。

四、知的財産権の高速保護のための要点の最適化
75.高価値の特許審査期間を16ヶ月、発明特許審査期間を20ヶ月以内に短縮、商標登録平均審査期間を4ヶ月以内に短縮(2021年12月末までに完成)。
76.商標登録、変更、更新などの出願の迅速な審査メカニズムの探究(継続推進)。
77.林草植物の新種審査員制度の確立、植物新種権の初審期間を4ヶ月に圧縮(2021年12月末までに完成)。
78.植物新品種申請と管理システムの完備、品種のテスト能力の構築強化(2021年12月末までに完成)。
79.商標審判事件の巡回審理レベル強化、重大事件の公開審理メカニズムを確立(継続推進)。
80.知的財産権司法事件の繁簡分流メカニズムの確立、審理手順と文書テンプレートの改善、事件の軽重・速遅分離の実現(継続推進)。
81.知的財産権保護規範化市場管理標準の確立、仲裁、調停などの迅速処理メカニズムの構築(2021年12月末までに完成)。
82.電子商取引プラットフォームでの知的財産権データ資源共有の業務試行、特許権評価報告書の有効な運用、特許侵害通報の迅速処理の指導(2021年12月末までに完成)。
83.業界主管部門の判定意見によるウェブプラットフォームでの侵害リンクの削除、アカウントの閉鎖などの要請(2021年12月末までに完成)。
84.知的財産権保護センターの地域と業界での配置(2021年12月末までに完成)。
85.知的財産権保護センターの規範制定し、保護能力の向上(2020年12月末までに完成)。

五、知的財産権保護の拡大対外交流と協力
86~111 (省略)
六、知的財産権保護資源の保障強化
102~121(省略)
七、知的財産権保護宣伝と文化建設の推進
122~126(省略)
八、知的財産権保護組織の保障の強化
127~133(省略)

参照サイト: http://www.cnipa.gov.cn/zscqgz/1147678.htm

【中国】国家知識産権局の2020年度重点事業の公示(3月5日)

国家知識産権局は、3月5日付、2020年度の知的財産行政における9つの重点事業を公示した。この中では、4と5に注目していただきたいが、特に、地方政府の実用新案と意匠特許出願に関する補助金や奨励の廃止を進めることには注目である。以下、抄訳でご紹介する。

2020年の知的財産事業の全体的な目標は、例年通り、知的財産権管理能力と管理水準を向上させ、知的財産権事業の継続的かつ着実な発展、高品質な発展を推進することにある。

1)党第十九期四中全会の精神を深く学習し貫徹。
「四つの意識」、「四つの自信」、「二つの維持」を堅持、実現、研究を深めて、知的財産権保護に関する中央の党中央の侵害処罰補償制度を構築する構想と措置を地方の活動にも積極的に展開し確実に実行する。

2)清廉な政府機関の建設を強化
形式主義、官僚主義を断固として配するためにリスク予防・抑制メカニズムを継続的に深化させ、機関紀律委員会の監督規律を進め、一体的な腐敗防止を推進する。

3)知的財産トップレベルの設計を強化
「第13次5か年国家知的財産権保護と運用計画」を総括評価し、「第14次5か年」計画の編成作業を行い、知的財産権強国との戦略綱要の有機的な連携を実現する。

4)「知的財産権の保護強化に関する意見」を真剣に実行
引き続き特許法、商標法、地理的表示法の改正を推進する。知的財産権保護センターを設立し、海外での知的財産権紛争に対応する指導を効率的に行う。商標権侵害判断基準を導入し、行政執行を確実に実施する。知的財産権基本法の研究論証を強化する。地理標識の専用標識や同製品の保護モデル地域の建設を推進する。特許権侵害紛争行政解決モデルを推進するために仲裁調停、共同懲戒、権利擁護など関連業務を総合的に実施する。

5)知的財産権の審査品質と審査効率の継続的向上
審査関係では、年末までに高いレベルの特許出願の審査期間を16か月以内短縮、商標登録出願の平均審査期間を4か月以内に短縮、実用新案と意匠の審査品質を向上させる。特許審査と検索システムのインテリジェント化等を推進し、集中審査、優先審査、特許審査ハイウェイ、審査延期モデルなどを整備し、多様なニーズに対応する。非正常特許出願と悪意ある商標先取り登録に対する効果的な対策を構築する。地方政府の実用新案と意匠特許出願に対する補助金や奨励制度を廃止させる。

6)知的財産権の運用の推進
知的財産権担保融資規模の拡大、知的財産権の証券化の試行を推進する。大学や中小企業での国家知的財産権試行モデルや知的財産権戦略を実施する。知的財産権の標準化を推進する。特許や商標の代理やブローカー行為の規範化を取り締まる。知的財産権サービス集積地区(クラスター)の建設を推進する。特許集約型産業の付加価値のための会計と発表のメカニズムの確立と推進を図る。ブランドや地理的表示の運用促進を図る。特許ナビゲーションと知的財産権の軍民融合を推進する。

7)知的財産権の公共サービスを強化
公共情報サービスの基幹ネットワークの建設を強化し、技術革新支援センター(TISC)と大学国家知的財産権情報サービスセンターを30か所新設し、地域の知的財産権公共情報サービスの一体化、均等化を促進し、サービスの利便性を向上させる。その他、基礎データの解放と共有、地方の窓口など総合的な公共サービスを推進、実現する。

8)国際的な協力関係の推進
2020年一帯一路知的財産権ハイレベル会議、第13回IP5局長級会議、中国アフリカ知的財産権部長会議を開催する。企業の外国における知的財産権獲得支援を強化する。

9)各事業の発展水準の強化
全国知的財産権宣伝週間、中国知的財産権年会、中国知的財産権保護ハイレベルフォーラム、中国国際特許技術と製品取引会などの活動を通じて、中国の知的財産権保護の成果を探る。小中学校の知的財産権普及教育を推進する。その他、若手幹部、地方知的財産行政管理者の育成、大学での知的財産学位の推進などを実施する。

参照サイト:http://www.cnipa.gov.cn/gk/gkgzyd/1146477.htm