EU統一特許裁判所(UPC)及び単一特許(UP)制度の開始を遅らせている2つの課題の1つは、イギリス政府のスポークスマン Baylee Turner が 2月27日に 「イギリスはUP/UPCへの関与を追求しない」と発表したことで解決した。スポークスマンは、「EU法を適用し、CJEU(欧州連合司法裁判所)に拘束される裁判所に参加することは、独立し、自治のある国家になるという我々の目的と矛盾する。」とも述べている。
遅延のもう1つの課題は、2〜3か月以内に解決される可能性があるが、これはUPC協定をドイツが批准することを阻止しようとする個人の申立を受け入れるかどうかについてのドイツ憲法裁判所の決定である。そうした一部の個人の申立が裁判所に受け入れられる可能性は僅かであるが、裁判所はこの申立を真剣かつ全面的に検討しているようである。
イギリスとBrexitの発表の結果と残りのEU加盟国が新制度の構築に前向きの状況からすると、それらのEU加盟国はUPC協定でイギリスに関連する条項並びに医薬品を担当するUPC部門の支所の設置の規定を改訂する必要がある。おそらくはオランダかイタリアと目されている。
UPC準備委員会の最新のスケジュールによると、新しい裁判所の開設はUPC協定の完全な批准の約7か月後にできるため、イギリスの離脱によって生じた問題とドイツの裁判所が対応しなければならないた問題の解決が必要になる。ドイツの裁判所で大きな問題とならなければ、1、2回の合意によって問題を解決し、新たな展開が不要な場合、UPC及びUPは2021年に運用が開始できる可能性がある。加盟国による会議での批准が必要な場合は、2022年までに運用を開始しない可能性が高いと思われる。
欧州特許庁は、UPの特許付与はUPCの開始日に開始できるとしている。ドイツでの問題解決に注目することになりそうである。
情報提供:Fish&Richardson
https://www.fr.com/news/legal-alert-eu-unified-patent-court-unitary-patent-update-mar-2020/