【インド】インド知的財産権庁による日印特許審査ハイウェイ(PPH)試行の審査結果と追加手続き(3月9日開始)の公示

インド知的財産庁(IP India)は、2月25日付、12月5日付開始された特許審査ハイウェイ(PPH)により受理した100件の内、44件がガイドライン第5章の方式審査に合格せず拒絶されたことを公表するとともに、3月9日から再提出の審査を行うことを公示した。再審査の対象は当該44件のみである。拒絶を受けた出願人は、期限開始後速やかに対応することをお勧めする。

対象の書式は、書式5-1である。下記のガイドライン参照。
日本特許庁  https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/pph/document/guideline/india_ja.pdf
インド知的財産庁
http://www.ipindia.nic.in/writereaddata/Portal/News/591_1_PPH_Procedure_Guideline_combined_20191128_final.pdf

参照サイト: http://www.ipindia.nic.in/newsdetail.htm?662
情報提供:S.S.Rana & Co

【韓国】産業技術保護法の改正施行(2020年2月21日)

韓国では、 2019年8月20日に公布された「産業技術の流出防止及び保護に関する法律(産業技術保護法)の改正法が2020年2月21日に施行された。

今回の改正産業技術保護法の主な内容は、以下の通り。
①企業に国家核心技術を取り扱う専門人材の移籍などを管理させる(第10条)
②企業に外国企業が関与した国家核心技術保有企業のM&Aに対する承認・申告義務を課する(第11条の2)
③国家核心技術などの産業技術の流出・侵害行為に対して3倍の懲罰的損害賠償(第22条の2)及び3年以上の有期懲役刑(第36条)を課し、民刑事制裁の水準の引上、規制を強化した
④情報捜査機関に産業技術侵害に関する調査及び措置ができる権能を設けた(第15条)

併せて、産業技術保護法施行令及び施行規則も整備された。施行令附則には、海外買収・合併等の申告に関する適用例を定める施行令第18条の5の改正で、本令施行時点に海外買収・合併等の手続が進行中の場合であっても適用するとしている。

情報提供:Kim&Chang

【アメリカ】商標出願手続きの電子出願完全移行ガイドライン施行(2020年2月15日)

アメリカ特許商標庁(USPTO)は、2020年 2月7日付公示し、商標出願手続きを一部の例外を除き全て電子出願移行するガイドライン施行を 2月15日付施行した。本件は、2月8日付アップした内容を、施行時にガイドラインの一部改正があったための再掲載である。

当初のコメントでは、日本からの手続きは原則、アメリカの代理人を経由することになるため、直接の対応はないと記載したが、現地代理人の指摘によると、新たな規定として、出願人の電子メールアドレスを代理人のメールアドレスに加えて、願書に記載することが要件とされた(ガイドラインのIII.A、37 C.F.R. §2.32(a)(2)参照)。電子出願の願書情報は、誰でもUSPTOのサイトで閲覧し、それに記載されるその個人の電子メールアドレスをみることができるため、個人情報の開示やプライバシーの問題に繋がるとの指摘が多くの代理人からなされた。こうした指摘を受けて、USPTOは、Trademark applicants and registrants who are represented by an appointed attorney may provide an email address of their choiceを追加した、つまり商標権者はUSPTOからのメールを受信するための目的の電子メールアドレスを選択することができると追加された。この場合、日本の商標権者が電子出願で使用しているような代表メールアドレスを持たない場合或いはこうした目的のための管理用の代表メールアドレスを用意できない場合、現地代理人と相談して、特定のメールアドレス、例えば代理人が受信できる代理人のドメイン名を利用したメールアドレスを新たに作り、利用することも可能となる対応策が示された感じである。一方、USPTOは商標権者の電子メールアドレスを申請により隠すオプションを入れるとの意向を示しているとのことであるが、まだ実現は不明である。

同時に、USPTOは2019年7月12日付、使用見本の改ざんや捏造が横行していることに対応するため、商標の使用見本に対する新たな審査ガイドライン (Examination Guide 3-19)を発表したが、このガイドラインも同時に施行される。今回の電子出願ガイドラインで追加で示された有効な使用見本(Specimen)に関する変更にも注意が必要である。

  • 規則2.56を更新して、使用見本(Specimen)に関する法定および判例法の要件、電子出願の対応を変更した
  • 商品またはサービスにかかわる使用見本のすべてのウェブページのURLとアクセス日または印刷日を要件とする
  • 商品或いは包装に添付して表示するラベルおよびタグ使用見本を要件とする

参照サイト:https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/TM-ExamGuide-MEF-1-20.pdf?utm_campaign=subscriptioncenter&utm_content=&utm_medium=email&utm_name=&utm_source=govdelivery&utm_term=

使用見本に関する審査ガイドライン:
https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/Exam%20Guide%2003-19.pdf

引用:Mr. Jeffrey H. Kaufman, MUNCY, GEISSLER, OLDS & LOWE, P.C. (MG-IP)

【ミャンマー】商標出願暫定受理開始遅延

最近のミャンマーの情報によると、商標出願暫定受理(Soft opening)は、4月になり、知的財産庁の正式オープンは9月以降になる模様です。

Cautionary Noticeの関係の対応が未だの関係者の方は、2か月弱あるので早めの対応をお勧めします。

以上

【アメリカ】2019年度特許権取得ランキング

IFI CLAIMS は例年のアメリカ特許権取得ランキングを公表した。その情報からトップ10と50位までの日本企業を紹介する。

参照サイト: https://www.ificlaims.com/rankings-top-50-2019.htm

1International Business Machines Corp9,262
2Samsung Electronics Co Ltd6,469
3キャノン株式会社3,548
4Microsoft Technology Licensing LLC3,081
5Intel Corp3,020
6LG Electronics Inc2,805
7Apple Inc2,490
8Ford Global Technologies LLC2,468
9Amazon Technologies Inc2,427
10Huawei Technologies Co Ltd2,418
14ソニー株式会社2,142
16トヨタ自動車関連2,034
21パナソニックIP株式会社1,387
23セイコーエプソン株式会社1,345
27三菱電機株式会社1,244
28株式会社東芝1,170
31本田技研工業株式会社1,080
32株式会社デンソー1,052
35富士通株式会社1,008
37株式会社リコー980
40日本電気株式会社923
45株式会社村田製作所842
46シャープ株式会社819
49富士フィルム株式会社791

【欧州】BrexitイギリスがEU離脱決定(2020年2月1日)

イギリスは現地時間1月31日午後11時(日本時間2月1日午前8時)に47年間加盟していたEUを離脱した。 BBCによると、ボリス・ジョンソン英首相は「これは終わりではなく始まりだ」と述べるとともに、EU27カ国との関係を断つことは「国家として本当に再生し、変わる瞬間」だと説明したそうだが、日本にとっては面倒なことの始まりである。

イギリスは1月31日午後11時から「移行期間」に入り、移行期間中のイギリスはほとんどのEU法を遵守し、離脱前とほぼ同じようにEU域内の自由移動も今年12月末までは認められるだけでなく、EU法も継続することになる。

知的財産の権利化関係では、欧州連合商標(EUTM)および欧州共同体意匠(EURCD)について影響があり、移行期間中の年内はEUTMとRCDの法律はそのまま適用される。登録案件はイギリスへの拡張処理をすることになる。しかし、出願係属中で移行期間に登録にならない案件はイギリスに拡張されないため、指定期間内或いは直ぐにもイギリスでの出願をする必要があろう。
ヨーロッパ特許については、移行国の問題であるので、出願係属中の出願には移行先にイギリスを忘れずに入れることになろう。いずれにしても、今後のイギリス知的財産庁とEU関係機関との調整による経過措置に注意をすることになる。

現状で報じられている商標と意匠に関することは下記の通り:
・欧州連合商標と共同体意匠の権利は自動的にイギリスで権利行使可能な権利として保護される(手続き不要、無料)。
・上記で移行された権利の更新、優先権主張及びシニオリティにかかる日付はそのまま引き継がれる。
・出願係属中で移行期間中に登録にならなかった場合、イギリスでの権利に変換されない。ただし、移行期間満了日から9か月以内に、優先権主張をして移行することになる。なお、共同体意匠については現在のところこの点は明確ではないので注意が必要である。
・非登録共同体意匠(Unregistered Community Design)についても、移行期間満了日までに存在していた場合、同様にイギリスで権利行使できる権利として同一の期間保護を受けることができる。イギリスは対応する法的措置を公示予定である。
・係属中の取消事件があり、移行期間後に無効取消され場合、対応するイギリスでの商標または登録意匠も、特段の理由がない限り、無効または取消される。もし、イギリスでの無効取消の理由がない認定がされた場合、イギリスには無効や取消す義務はない。
・国際登録(商標及び意匠)に関して、イギリスはEUを指定した登録について 自動的にイギリスで権利行使可能な権利として保護するとしているが、出願係属中のなどについてはまだ明確な立場を出していない。
・代理人について、日本企業は代理人を連絡先(Correspondence address, address for service)と指定していることが多いが、 欧州連合商標と共同体意匠の権利 の代理人をイギリスの代理人としている場合、移行期間経過後3年以内に欧州連合内の代理人に変更しなければならないことになると予想される。
・権利の消尽については、移行期間満了日前に欧州連合域内及びイギリスで上市された場合、両地域での消尽と判断される。また、 移行期間満了日前に欧州連合域内或いはイギリスで上市された場合、それぞれの地域での消尽と判断される。
・権利行使については、欧州連合域内或いはイギリスで移行期間満了日前に法的手続きが開始された場合、改正ブリュッセル規則(Recast Brussels Regulation)に基づき、引き続きそのまま継続する。
・裁判所係争事件については、欧州連合域内或いはイギリスで移行期間満了日前に法的手続きが開始された場合、欧州連合商標規則や共同体意匠規則に基づき、引き続きそのまま継続する。

欧州での権利化や代理人の紹介などについては、ネットワークを持っていますので、お気軽にお問い合わせください。

イギリス政府の移行措置紹介サイト
https://www.gov.uk/transition?gclid=Cj0KCQiAvc_xBRCYARIsAC5QT9kLGR5p7gaQ3Xc5wgEjXagPxBRYh_d8Xtir6IRSYwyjaO749fd8sg8aAtOmEALw_wcB&gclsrc=aw.ds
欧州知財庁(EUIPO)の移行措置紹介サイト
https://euipo.europa.eu/ohimportal/brexit-q-and-a
WIPOのマドプロ登録商標に関する移行措置紹介サイト
https://www.wipo.int/edocs/madrdocs/en/2020/madrid_2020_2.pdf

【韓国】商標審査基準の改正(2020年1月施行)

韓国特許庁は2020年1月から商標審査基準を改正し、施行している。その主な内容は次のとおり。

使用による識別力の判断
商標の使用期間については原則的に5年以上とし、その間実質的に非競合的かつ継続的に商標を使用した場合、使用による識別力取得認定の重要判断根拠として考慮することができる。
 ただし、短期間でも多量の広告宣伝を通じて認知度が上昇することもあるため、使用期間が短くても売上額、市場占有率、認知度などが大きく上昇した場合には考慮して使用による識別力取得を認めることができる。
 消費者認知度調査のためのアンケート調査の場合は、原則的に人的・物的要件が備わった信頼性ある調査機関により実施されなければならず、同種商品の実際のまたは潜在的な需要者を対象とし、地域、性別、年齢などの代表性があり、質問形態は公正かつ適切に構成されなければならず、回答標本数が500人以上、回答者の50%以上が該当商標を特定の所有者の商標として認識している場合、調査の信頼度を高く評価することができる。
 なお、審査手続きは、使用による識別力の判断を審査官1名の単独審査から審査官1名による審査後、識別力が認められると判断される場合は審査官3名の合議体で再検討後、識別力が認められると判断されれば最終的に審査委員会が最終決定する。

医薬品関連の商標出願
 他人がすでに製造販売・輸入品目許可・申告をした医薬品名称と同じ医薬品名称を商標出願した場合には、商標使用意思がないものと拒絶する。
 出願人が本人の著名な医薬品名称と同一・類似の商標を他の医薬品の名称として出願したり、他人の医薬品の名称と同一・類似の商標を出願した場合、商品の品質を誤認させる或いは需要者を欺瞞するおそれがある商標と拒絶する。

日本の年号
 「令和」、「れいわ」または「레이와(Reiwa)」は韓国で指定商品と関連し識別力がないとみることができないが、「年号+○○年」などのように標章が構成される場合、「西暦○○○○年」に準じてその他の識別力がない部分とみなす。

出展:Kim&Chang

【台湾】営業秘密法改正(2020年1月15日施行)

台湾立法院は、2019年12月31日付、営業秘密法を改正を通過させ、2次的営業秘密漏洩を防止するための 通称「科学技術業条項」と呼ばれる捜査内容の秘密保持命令制度などが14条に追加新設された。施行日は2020年1月15日)この操作内容秘密保持命令制度は、裁判所(検察官)が捜査に関連した資料に接触した関係者に対する秘密保持義務の履行を命じるものである。台湾では半導体などの分野で従業員の転職時に営業秘密持ち去りが多発しているために、訴訟における二次漏洩を防止するために新設された。新設された概要は下記の通り。

裁判所は、基礎の前後にかかわらず、営業秘密の捜査対象に関与しうる被疑者、被告、被害、告訴人、告訴代理人、弁護人、鑑定人、証人、その他の関連者に捜査情報秘密保持命令を発することができる( 第14-1条1項)。
捜査秘密保持命令を受けた者は、捜査手続き以外の目的で当該情報使用、或いは第三者に開示することはできない( 第14-1条第2項)。
捜査秘密保持命令は書面或いは口頭で行うことができ、告知日から効力が生じる(第14-2条)
捜査秘密保持命令違反者は、3年以下の禁錮、台湾ドル100万以下の罰金、併科可。外国での違反も対象とする(第14-4条)。
事件訴訟手続開始後30日以内に、営業秘密保有者或いは検察官が秘密保持命令の請求をしない場合、裁判所は対象者の申立を受けて取消すことができる(第14-3条第5項 )。
外国法人は告訴、私訴、民事訴訟が可能で(第13-5条)、適用は相互主義となる(第15条)である。

ところで、台湾智慧産権局は参考情報を2つ公示している。
1.過去の裁判事例 2019年6月末までのもの(2020年12月19日付)
2.営業秘密管理マニュアルの第2版を公表している。台湾内での適用を判断する上で参考になる。

参考サイト:
裁判事例  https://www.tipo.gov.tw/tw/cp-12-859444-73285-1.html
マニュアル https://www.tipo.gov.tw/tw/dl-254028-54154bdd6d20450099d6501258b531d0.html

【中国】特許審査指南第9章改正の解説

国家知識産権局は、1月22日付、2020年2月1日より施行される特許審査のガイドライン(「専利審査指南」)第9章の(コンピュータプログラムに係る発明特許出願の審査に関する若干の規定)第6節の新設条項に関する解説を公示した。下記はポイントのみの仮訳である。

参照サイト: http://www.cnipa.gov.cn/zcfg/zcjd/1145668.htm

仮訳
1.改正背景
 人工知能など新業態の特許出願審査規則の必要性から国家知識産権局は新業態新分野の知的財産権保護制度に関する特定テーマの研究を行い、問題点を整理し、審査実務経験をまとめて、速やかに『専利審査指南』回収することとした。今回は関連の特許出願の審査規則を修正し、審査実務における多くの難題を明確化し、さらに特許審査の品質と効率を向上させ、イノベーション駆動の発展を支援するという目標を実現する。

2.改正内容
 「専利審査指南」の第二部分第九章には、第6節「アルゴリズムの特徴またはビジネスルール及び方法の特徴を含む特許出願の審査に関する規定」が追加され、6.1節「審査基準」、6.2節「審査実例」及び6.3節「明細書及びクレームの作成」がそれぞれ設けられた。今回の改正は具体的事例を引いて、出願の登録客体、新規性と創造性、明細書及び請求項の作成について明確に規定している。

(1)審査基準(第6.1節)
6.1節の「審査基準」部分は審査の一般原則を確立している。
①請求項の全体的な判断原則を強調
 人工知能、「インターネット+」、ビッグデータ及びブロックチェーンなどの発明特許出願において、請求項にはアルゴリズム、ビジネスルール及び方法などの知的活動の規則及び方法の特徴がしばしば含まれる。今回の修正は、審査において、技術的特徴とアルゴリズムの特徴またはビジネスルール及び方法の特徴を簡単に切り離すべきではなく、請求項に記載されている全ての内容を一つの全体として判断すべきであることを明らかにした。これらの特徴を直接無視したり、技術的特徴と機械的に切り離したりすると、発明の本質的な寄与を客観的に評価することができず、真の発明創造を保護することができない。
②請求項が知的活動のルール及び方法に属するか否かを明確化(第6.1.1節)
 改正は、クレームが抽象的なアルゴリズムまたは単なるビジネスルール及び方法に関連するとともに、いかなる技術的特徴も含まない場合、このクレームは知的活動のルール及び方法に属し、特許権が付与されるべきでないことを明確化した。但し、請求項に技術的特徴が含まれる限り、その請求項は全体として知的活動のルール及び方法ではなく、特許法第25五条第1項(2)号に基づいて特許権を取得する可能性を排除してはならない。
③請求項が技術方案の審査基準に属するか否かを明確化(6.1.2節)
 改正は、客体に関する法律条項の審査順序を明確化した。保護を求める主題については、まず知的活動に該当するか否かルールと方法を審査し、特許法第2条第2項に規定する技術方案に該当するかどうかを審査しなければならない。一つの請求項の技術方案がどうかを判断する場合、その中に関わる技術的手段、解決する技術的課題及び獲得した技術的効果を分析しなければならない。これは「専利審査指南」第二部分第一章第2節に規定する技術方案が解決すべき技術的課題に対して自然法則を利用した技術的手段の集合などの判断原則と一致する。
④進歩性判断における関連する判断原則をさらに明確化(6.1.3節)
 前述の通り、改正後の「専利審査指南」は審査における全体的な判断原則を明確化しており、この原則は新規性と進歩性の判断にも適用される。さらに、進歩性の判断において、「専利審査指南」は、関連する判断原則、すなわち、技術的特徴の機能において相互にサポートし合い、相互に作用関係があるアルゴリズムの特徴またはビジネスルール及び方法の特徴と、それらの技術的特徴とを一つの全体として判断し、アルゴリズム特徴またはビジネスルール及び方法の特徴を判断して技術方案に寄与すべきことをさらに明確化している。「専利審査指南」は同時に「機能的に相互にサポートし、相互に作用関係がある」という概念を説明し、例を挙げて説明している。ここで、「機能的に相互にサポートし、相互に作用関係がある」と国家知識産権局が2019年の公告328号で「専利審査指南」を改正した第二章第3.2.3.1節の進歩性の判断方法において明確化した「機能的に相互にサポートし、相互に作用関係がある技術的特徴については、保護を求める発明において達成される技術的効果を全体的に判断するべきである」との表現と一致する。

(2)審査事例(第6.2節)
 6.2節は正反対の2つの側面から10個の登録客体と進歩性に関する審査事例を追加した。例1−例6は、登録客体の属否を判断するための審査事例である。例1は抽象的な数学モデルの構築方法であり、特許法第25条第1項第(2)項に規定する知的活動のルールと方法に属する。例2、例3及び例4は、人工知能、ビジネスモデル及びブロックチェーンの分野に属する登録可能な客体あり、例5及び例6は、逆の例になる。例7−例10は、保護する方案が登録客体に属する場合の進歩性の有無を判断する審査事例である。例7及び例9は、進歩性を備える例であり、例8及び例10は、進歩性を備えていない例である。6.2節の審査事例は6.1節の審査原則に対するさらなる解釈であり、これらの実例を理解する場合、その体現している審査理念と法律原則を重点的に理解し、単純に機械的に当てはめてはならない。
 ここでは、一部の例をさらに説明する。
 例7は、マルチセンサ情報に基づく人型ロボットの転倒状態検出方法に関する。その進歩性の判断の完全な考え方について言うと、検索の結果、対比文献1があり、人型ロボットの歩行計画とセンサー情報に基づくフィードバック制御を開示するとともに、関連する統合情報に基づいてロボットの安定性を判断し、そして複数のセンサー情報に基づいて人型ロボットの安定状態の評価を行うことが含まれる。対比においては、対比文献1を最も近い先行技術とし、本願の解決方案と対比文献1の違いは採用されたファジー決定の実現アルゴリズムにある。これに基づき、このアルゴリズム特徴は技術的特徴として、機能的に相互にサポートされ、相互に作用関係がある、すなわち、緊密に結合され、特定の技術的課題を解決するための技術的手段が構成されているかどうかをさらに判断するとともに、対応する技術的効果が得られるかどうか、つまり、技術的な貢献があるかどうかである。肯定的な結論が得られた後、本願が実際に解決する技術課題を決定し、先行技術における示唆があるかどうかを組合せて判断し、このアルゴリズムの特徴を判断する。このファジー決定の実現アルゴリズムとロボットの安定状態への適用を判断すると、他の対比文献には開示がなく、公知常識ではないため、最終的に進歩性が認められる。
 例10は、動的視点変遷可視化方法に関する。その進歩性の判断の完全な考え方について言うと、検索の結果、対比文献1があり、それは感情に基づく可視化分析方法を開示しており、その時間は横軸で表わされ、それぞれの色帯は異なる時間の幅であり感情の度合いを表し、異なる色帯で異なる感情を表している。対比においては、対比文献1を最も近い先行技術とし、本願の解決方案と対比文献1の違いは設定された感情の具体的な分類ルールである。感情の分類ルールが違っても、該当データを着色処理する技術手段は同じであり、変更する必要はないので、上記の感情の分類ルールと具体的な可視化手段は、機能的に相互にサポートし、相互に作用関係があるわけではないため、技術方案に貢献しているわけではない。従って、本願の実際に解決する技術的課題を特定する場合、請求項が対比文献1に対して実際に解決する技術的課題がないことを認定することができ、そして、請求項は進歩性を備えていないという結論を直接導き出すことができる。ここで強調するべきことは、実際に何ら技術的課題を解決しているわけでもなく、請求項自体が技術的課題を解決していないのではない。いわゆる「可視化」の課題は、対比文献1ですでに解決されおり、本願の従来技術に対する貢献は、新しい感情の分類ルールを提案することにある。さらに説明が必要なことは、そのクレームについて、具体的な感情ルールの可視化の課題を解決し、該当データを着色する技術的手段を採用し、人の目の視覚感覚官の自然の属性を利用し、自然法則に則り、動態観点の進化を示す技術的効果を得たので、特許法第2条第2項の規定に適合することを説明する必要がある。
 指摘すべきことは、アルゴリズムに関する特許出願に対して、請求項と最も近い従来技術の適用の場面が同じで、違いがアルゴリズムの調整にのみにある、例えば、同じ無人運転における障害物の識別であり、請求項のアルゴリズムはパラメータと式に対する再選択または調整にあり、その実際に解決する技術的課題が障害物の検出精度をさらに高めることである場合、この課題を解決するための技術的示唆が先行技術に全体的に存在しないならば、請求項は自明ではない。請求項と最も近い先行技術の違いが単に適用のシナリオにあり、進歩性を判断する場合、通常は転用の遠近、難易度、困難な技術の克服する必要性、技術の示唆の有無、転用による技術的効果などの要素を判断する必要がある。

(3)明細書及びクレームの作成(第6.3節)
①明細書作成の基本的な要求を明確化(第6.3.1節)
 アルゴリズムの特徴またはビジネスルール及び方法の特徴を含む発明特許出願において、第一に、この種の出願の特殊性はアルゴリズムの特徴またはビジネスルール及び方法の特徴にあるため、明細書にはこれらの特徴が明記されていなければならない。第二に、技術的特徴がどのようにこれらの特徴と「機能的に相互にサポートし合い、相互の作用関係がある」かとともに技術的課題を解決するかを明記する。
 例えば、人工知能の発明特許出願では、その内部動作の特殊性により、発明にアルゴリズムの特徴を含む場合、抽象的なアルゴリズムを具体的な技術分野と結合しなければならず、少なくとも一つの入力パラメータ及び関連する出力結果の定義は技術分野における具体的なデータに対応しなければならないので、ここでの「特定な技術分野と結合」は、どの技術分野が適用されるかを簡単に言及するだけでなく、当業者が確認できるように、その適合プロセスを説明すべきである。第三に、明細書には有益な効果を明記しなければならない。例えば、品質、精度または効率の向上、システム内部性能の改善、必要に応じて、詳しく説明または証明する。第四に、ユーザーの観点から言うと、発明が客観的にユーザー体験を向上させる、すなわちユーザー体験の客観的な向上であるとともに、個人的な主観的な好みではなく、説明書で説明する。同時に、このようなユーザー体験の向上は、発明の技術的特徴を構成すること、そしてその機能上で相互にサポートし合い、相互の作用関係のアルゴリズムの特徴またはビジネスルール及び方法の特徴によって、どのようにもたらされ、または生成されるかを明記する。
②クレーム作成の基本的な要求を明確化(第6.3.2節)
 アルゴリズムの特徴またはビジネスルール及び方法の特徴を含む発明特許出願において、クレームは、技術的特徴及び技術的特徴と機能的が相互にサポートし合い、相互の作用関係があるアルゴリズムの特徴またはビジネスルール及び方法の特徴を記載しなければならない。

全体的に言うと、今回の改正は現行の特許法及び実施細則の枠組みの下で、人工知能など新業態の発明特許出願の審査規則に対する細分化であり、イノベーション主体の要求にタイムリーに応え、審査実務における問題点を解決することを目的としている。一方、審査実務における有益な方法を「専利審査指南」に加え、統一的な審査基準を示しながら、この種の出願を作成するためにあるべき明確な指針を提供し、出願の品質向上を促進する。別の面では、これらの出願の特徴に合わせて、技術的特徴及びアルゴリズムまたはビジネスルール及び方法などの知的活動を判断する規則及び方法の特徴を全体的に判断し、発明の技術的貢献を正確に把握することで、絶えず審査品質と審査効率を向上させ、新しい技術分野や新業態の新しいモデルのさらなる発展を推進させる。

以上

【中国】米国と知的財産権を含む包括的な貿易協定締結(1月15日)

米中両国は1月15日(アメリカ時間)、包括的な貿易協定の第1段階と双方が位置付ける合意に署名した。合意文書はフェーズ・ワン(PHASE ONE)には、知的財産権に始まり、技術移転にかかる中国の企業および政府機関による取り締まりを強化するとの公約のほか、トランプ大統領が票集めのために努力する対米貿易黒字の縮小に向けた中国による今後2年間で2000億ドル(約22兆円)相当の追加購入計画の概要などが盛り込まれた。

合意文書の全体構成は、下記の通りで、主に農産物などの取引にかかる部分が多い。
第1章 知的財産権
第2章 技術移転
第3章 食品および農産物の貿易
第4章 金融サービス
第5章 マクロ経済政策と為替レートと透明性
第6章 貿易の拡大
第7章 相互評価と紛争解決
第8章 最終規定
付録

以下は、第1章知的財産権に関する概要を列記して、ご紹介する。
第1章 知的財産権
セクションA: 一般義務
セクションB:営業秘密と機密営業情報
 電子的侵入を含む情報に対する不正流用対策
セクションC:医薬品関連の知的財産
 医薬品特許出願に対する追加データの補充提出
 医薬品特許紛争の早期解決メカニズム
セクションD:特許
 審査遅延による保護期間の延長
 医薬品特許の承認等にかかる遅延に対する保護期間の延長
セクションE:電子商取引プラットフォームでの著作権侵害(海賊品)と偽造
 ネット上の侵害対策の利便性の向上
 ネット事業者の処理権限強化
セクションF:地理的表示
 GI保護利便性向上
セクションG:著作権侵害(海賊品)及び偽造品の製造と輸出
 医薬品にかかる特別対応
 税関、民事、刑事事件での侵害品の廃棄
 税関や公安局での職員の増強
 ライセンス契約のないソフトウェア使用の禁止
セクションH:悪意のある商標
 悪意商標登録を防止
セクションI:知的財産事件の司法権利行使と手続き
 行政処分にとどまらず刑事罰の適用
セクションJ:知的財産保護に関する二国間協力
セクションK:実施
 中国は30日以内にアクションプランを公布

参照サイト: https://ustr.gov/about-us/policy-offices/press-office/press-releases/2020/january/economic-and-trade-agreement-between-government-united-states-and-government-peoples-republic-china
合意文書 https://ustr.gov/sites/default/files/files/agreements/phase%20one%20agreement/Economic_And_Trade_Agreement_Between_The_United_States_And_China_Text.pdf

【中国】2019年度特許、商標出願統計速報、発明特許出願は9%減少(1月14日)

国家知識産権局は、1月14日、新聞発表会を開催し、2019年度の特許、商標などの出願、登録及び審査状況などを発表した。なお、国家知識産権局は、前身の専利局の創設から40年の節目を迎えた。

特許関係では、発明特許出願は140.1万(前年154.2万件、対前年比-9.14%)と減少した。発明特許出願登録件数は45.3万(前年43.2万件、対前年比+4.86%)と増加し、内中国国内は36.1万件(79.7%)である。中国企業の特許取得上位10社は、華為技術HUAWEI(4510件)、中国石油化工SINOPEC(2883件)、OPPO広東移動通信(2614件)、京東方科技BOE(2393件)、騰訊科技TENCENT(2146件)、珠海格力電器GREE(1739件)、聯想RENOVO(1706件)、中興通訊ZTE(1472件)、維沃移動通信VIVO(1388件)、中国石油天然气PetroChina(985件)である。
 PCT国際特許出願受理件数は6.1万件(前年比+10.4%。)、内中国国内は5.7万件で広東(2.47万件)、北京(7.2千件)、江蘇(6.6千件)。外国への特許出願件数は15.7万件と対前年比+6.0%と増加している。
 なお、受理後審査済みの特許出願は、発明特許出願102.3万件、実用新案特許出願198.1万件、意匠特許出願74.4万件となり、発明特許出願の平均審査期間は17.3か月以内とやや長くなった。
 特許出願拒絶査定不服審判請求は5.5万件、結審は3.7万件。無効取消請求6千件、結審は5千件である。
 外国からの発明特許出願は15.7万件と対前年比+6.0%と増加した。特許出願の上位3か国は日本(4.9万件、対前年比+7.9%)、アメリカ(3.9万件、対前年比+1.5%)、ドイツ(1.6万件、対前年比+6.4%)である。

商標関係では、商標登録出願は783.7万件(前年737万件、対前年比+6.34%)と増加した。商標登録出願登録件数は640.6万件(前年500.7万件、対前年比+27.94%)と増加し、中国国内は617.8万件(96.44%)である。2019年末の有効登録商標件数2521.9万件で、対前年比+28.9%である。
 中国人のマドプロ国際商標出願は6,491件で、2019年末までの中国人のマドプロ国際商標登録件数は3.8万件である。外国への商標出願件数は25.5万件と対前年比+4.7%と増加している。
 なお、審査済みの商標登録出願は825.3万件、商標登録出願の平均審査期間は4.5か月まで短縮された。
 商標登録出願異議申立件数は14.4万件で審査処理件数は9万件、商標審判申立件数は36.1万件で審決は33.7万件である。
 外国からの商標出願は25.5万件と対前年比+4.7%と増加した。商標出願の上位3か国はアメリカ(5.4万件、対前年比+5.3%)、日本(3.1万件、対前年比+21.2%)、英国(2.4万件、対前年比42.4%)である。

地理的表示関係では、2019年の保護商品が5件、地理的表示登録件数は462件、専用標識企業登録件数は301社で、累計は護商品が2,385件、地理的表示登録件数は5,324件、専用標識企業登録件数は8,484社となった。

集積回路配置設計関係では、登録出願件数は8,319件と対前年比+87.7%、登録件数は6,614件と対前年比+73.4%と増加した。

その他の統計では、特許侵害紛争行政裁決事件は3.9万件と対前年比+13.7%と増加した。集積回路配置設計権利侵害事件は2件である。2019年の知的財産権ライセンス料輸出入総額は370憶米ドル、特許と商標の担保融資総額は1,515億元(約2.4兆円)と対前年比+23.8%と増加し、特許担保融資総額は1,105億元、7,060プロジェクトと対前年比+30.5%と増加している。

参照サイト:http://www.cnipa.gov.cn/twzb/2019nzygztjsjjygqkxwfbh/index.htm

【日本】意匠の優先権主張にDASが利用可能に(2020年1月1日)

すでにご案内の通り、日本はWIPOのデジタルアクセスサービス(「DAS」)を利用した優先権書類の交換を2020年1月1日より開始した。従来から特許出願では便利なサービスとして定着したDASであるが、外国への意匠出願に活用できるのは更に意匠の活用の面では便利になる。

1月1日現在のDASを利用できる国は、アメリカ、カナダ、中国、韓国、インド、オーストラリア、チリ、スペイン、ジョージアになる。欧州は2020年度中に可能となる模様である。一方、国際意匠(WIPO)については、優先権主張の基礎には使える*が、出願国としてはDASを利用することができないことには注意が必要である。

DASを利用するには出願番号通知に記載されるコードを利用することになるが、部分意匠出願を外国に出願する際に、中国など部分意匠制度を有しない国や部分意匠に基づくバリエーションを権利化したい場合、単純に優先権主張をした現地の意匠出願では拒絶や無効となる可能性が高いので、相応の対応をすることが不可欠である。また、日本の意匠法改正に基づく関連意匠出願をそのまま優先権主張する場合、拡大先願などを理由に自爆する出願をすることになるため、事前の対策をするべきである。

*追記:WIPOは1月7日付、優先権主張の基礎に国際意匠出願を利用することは2020年1月20日以降可能になると公示した。

関連サイト:https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/index.html
WIPOサイトの公示
https://www.wipo.int/das/en/participating_offices/details.jsp?id=10589

【中国】特許審査指南第9章改正施行(2020年2月1日)

国家知識産権局は、12月31日付、11月12日付意見募集を実施した、第二部実体審査第9章(コンピュータプログラムに係る発明特許出願の審査に関する若干の規定)第6節の新設条項を2月1日付施行する公告(第343号)を公示した。

多少の文言の修正はあるものの、意見募集内容通りの施行である。参考仮訳は、中国知財資料サイトを参照ください。

参照サイト: http://www.cnipa.gov.cn/zfgg/1144989.htm
https://kyk-ip.com/2019/11/12/%e3%80%90%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e3%80%91%e5%b0%82%e5%88%a9%e5%af%a9%e6%9f%bb%e6%8c%87%e5%8d%97%e6%94%b9%e6%ad%a3%e6%a1%88%ef%bc%88%e7%ac%ac%e4%ba%8c%e9%83%a8%e7%ac%ac9%e7%ab%a0%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%83%94/

【台湾】医薬品関連特許出願に関する審査基準改正施行(2020年1月1日)

台湾経済部智慧財産局は、2020年1月1日より医薬品関連特許出願に関する審査基準を改定し施行した。

 台湾の従来の医薬品関連発明の特許審査ガイドラインは、化合物の審査基準のみが規定されており、塩、エステル、立体異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグなどの誘導体は対象外であり、審査では誘導体の審査で保守的立場を取りってきている。出願人は薬学的に許容される塩を除いて、一般的に明細書の実施例による支持がない場合、化合物の誘導体を特許請求の範囲から削除しなければならなかった。
 2020年1月1日に施行される医薬品関連発明の特許審査ガイドラインの改正では、化合物の薬学的に許容される塩、エステル、立体異性体、水和物などは、明細書に誘導体があることが明確に開示されている場合、或いは、当業者にとって過度の実験を行わずとも、明細書の開示で想到できる場合、許容される誘導体とみなされる。なお、審査では溶媒化合物とプロドラッグについては保守的立場をとる可能性はある。

参照サイト:https://www.tipo.gov.tw/tw/cp-86-803013-9d310-1.html