中国著作権局(版権局)は5月8日付、法制日報の報道として、AI時代にソフトウェア自身がコンテンツを生成することができるが、そのように生成されたコンテンツは著作物に該当するかどうか、保護対象になるかどうかの最初の事件が北京インターネット裁判所で判断されたことを報じた。これは中国では話題となっており、ご紹介する。なお、判決文は未だ公示されていないので、掲載内容の要約でご了承ください。
事件概要:北京菲林律師事務所(以下、菲林)は北京百度網訊科技有限公司(以下、百度)を著作権の人格権にあたる氏名表示権(署名権)、同一性保持権(保護作品完成権)、公衆送信権(情報ネット頒布権)が侵害されたとして、北京インターネット裁判所に提訴した。裁判所はコンピュータプログラムのAI機能が生成した文章は作品に該当せず、著作物ではないと判断したが、百度は許可を得ずに当該文章を使用したことは侵害を構成すると判断し、菲林に損害賠償と合理的費用として1560元(約2.5万円)支払うよう命じた。
訴訟経緯:本件原告の菲林は本件文章「映画娯楽業界司法ビックデータ分析報告——映画・北京編」の著作権者であり、2018年9月9日に初めてWeChatの一般アカウントで公表した。本件文章は文字作品と図形作品の両方から構成され、法人の作品に該当する。百度は2018年9月10日に本件文章の署名、引用などの部分を削除し、自身が経営するプラットフォーム上で公開し、菲林が享有する署名権、保護作品完成権、情報ネット頒布権を侵害し、菲林は経済的損害を受けたとして、謝罪、影響の除去及び損害賠償1万元と合理的支出560元の支払いを求めた。
これに対して、百度は本件文章には文字作品と図形作品が含まれると主張するが、これらは法律統計データを分析するプログラムで作成された報告であり、報告中のデータは菲林が調査、検索、収集して得たもの(額に汗)ではなく、報告中の図表はそれらにより作成されたものではなく、プログラムが自動的作成したものであるため、本件文章は菲林自身の知的労働の成果として作成されていないため著作権の保護範囲に属さないと主張した。
北京インターネット裁判所は、科学技術の進展によりコンピュータプログラムの生成物の内容、形態や表現などが自然人の作品に近づいているが、現実的な技術や産業のレベル、法律保護システム、経済的投資に対する十分な保護を民法主体の基本的保護範囲を突破することは難しく、現行法律規定に基づくと、文字作品は自然人が創作し完成されなければならず、自然人の存在が必要であると判断した。
この他、報告の作成過程では、自然人の関与するプログラム開発環境、プログラム使用環境の二つの面があり、プログラム開発者とプログラム使用者はそれぞれ無関係であり、またプログラム使用者は操作画面でキーワードを入力するなどの作業のみであり、使用者の思想や感情による独創性表現するものではないため、いずれも創作の完成した作者と認定できない。また、作品とも認定できず、創作者でない者には署名権もない。一般公衆の知る権利、社会的な信義誠実や文化の伝播の観点から報告中にプログラム自動生成の標識を表示するべきであると説明した。
また、北京インターネット裁判所はコンピュータプログラムが生成した内容は作品と認定できないが、誰でも自由に使用できるものではなく、プログラム開発者とプログラム使用者が投入した内容で生成されたもので、伝播する価値のあるものであり、プログラム開発者とプログラム使用者の一定の権益が保護されなければないことを認定した。そして、百度が許可を得ずに自身が経営するプラットフォーム上で本件文章を一般に所定時間、所定地点で提供した行為は菲林の所有する情報ネット頒布権を侵害したとして、菲林の主張を認め、民事責任及び賠償義務を命じた。
本件は、日本ではどのように判断されるでしょうかね。
http://www.ncac.gov.cn/chinacopyright/contents/4509/398970.html