かねてより商標法改正を進めていたカナダ知的財産庁(CIPO)は、とうとう改正を施行する。これまので使用主義から先願主義にかわるため、使用宣誓書が不要になる。このため、中国のように先取りなど意識した悪意商標出願の懸念がされている。ここでは、主要な改正と経過措置をご紹介する。
主要な改正は下記の通り;
(1)非伝統的商標まで保護対象を拡大; 立体形状、色彩、ホログラム、動き、音声、におい、味覚、触感。なお、非伝統的商標の識別性の審査をするための証拠等を要求する可能性があることに注意するべきである。
(2)ニース商品役務分類の採用; 現行法の商標出願では分類は必要でなかったが、改正法施行後の全ての新規商標出願にはニース分類に従った分類が付与されるため、出願時には分類を特定することになる。
(3)出願ベースの廃止; 改正法施行後の商標出願では、使用、使用意図、本国出願・登録、本国使用など出願の基礎理由(ベース)が不要になる。現行法の商標出願で使用予定ベースとした場合、改正法施行後に使用宣誓書の提出は不要になる。
(4)連合商標制度の廃止; 今後は連合関係の登録商標の移転が緩和される。
(5)優先権主張; 改正法施行後の商標出願では、優先権出願が基礎出願から6か月以内に認められる。この期間は延長される可能性がある。
(6)出願オフィシャルフィーは区分数に準ずる変更; 現行法では出願料は一律CA$250(カナダドル)であるが、改正法施行後は出願する商品や役務の区分数に準ずるため、最初の1区分がCA$300、追加1区分毎にCA$100(オンライン出願の場合)になる。なお、登録料は廃止される。
(7)識別性の審査の導入; また、識別性の審査が改正され、記述的や単なる氏名や名称での識別性の審査から単なる識別性まで拡大される。
(8)分割出願の導入; 改正商標法規則での大きな変更として、出願を2個以上の出願に分割することができるようになったし、後日併合することもできるようなった。これは、異議申立を受けた場合などの有効であり、OAや異議申立を受けた場合に、その対象となった商品や役務を分割し、その他の部分を先に登録することができる。分割出願については出願費用を支払う必要があるが、引き続き出願日を維持しながら係属することができるメリットがある。また、登録時に既に登録になっている元の出願と併合し管理を一括にすることができるのは良い制度である。
(9)使用宣誓書の廃止; 改正商標法規則での大きな変更として、使用宣誓書提出にかかる要件が廃止された。つまり、認可通知後に登録料を支払うことで速やかに登録になり、使用宣誓手続き関連が廃止されたのは出願人にとって負担が軽減された。
(10)権利期間の変更と更新出願; 登録日から15年が10年に短縮される。 更新出願は満了日6か月前から、満了日後6か月或いはCIPOからの更新通知の受領後2か月以内のどちらか遅い方までにに可能となった。更新出願のオフィシャルフィーは現行法では区部数に関係なくCA$350であるが、改正法施行後は、最初の1区分がCA$400、追加1区分毎にCA$125になる。従って、現行法での登録商標は、ニース分類に従った書き換えを行い、その区分数に従った更新出願オフィシャルフィーの支払いとなる。
(11)マドプロ商標出願の導入; カナダはマドリッド協定議定書に基づく商標国際登録制度の締約国になる手続きを3月17日に行い、改正法の施行とともに発効する。OA対応や異議申立期間はそれぞれ18か月以内である。併せて、シンガポール条約にも加盟する。
(12)その他の事項;出願内容の公告前の補正が実質的な変更がないことを条件に認められる、譲渡や移転登録手続きでの立証証拠提出要件の廃止し明確な連絡先のみを求めるようになった、先使用権者の権利については、異議申立で対応するとの立場をとる。
以上、ご参考まで。
https://www.ic.gc.ca/eic/site/cipointernet-internetopic.nsf/eng/wr04254.html