【欧州】EPO拡大審判部のダブルパテントに対する審決(6月22日)

ヨーロッパ特許庁拡大審判部は、2021年6月22日付、審判部の付託T318/14に対する審決をG 4/19を出し、国内優先権主張に基づくダブルパテントを禁止する決定を下した。

 本件は、国際出願WO2010/130661(Nestlé S.A)に基づくEP出願10718590.2がEPC第97条(2)項(拒絶)及びEPC第125条(一般原則・締約国準拠)に基づき拒絶された。審査部の決定に対する審判を受けた。EPO審査部は本願請求項1がEP09159932.4の請求項と同一の主題で、その優先権が本願でも主張されていると判断したのである。
 出願人は、これまでのEPOの実務で、優先権期限内に第2のヨーロッパ特許出願(国内優先権主張)或いはPCT出願のEP移行手続きを行い、最初の出願の優先権を主張するとともに第2のヨーロッパ特許出願の双方を有効に維持し21年の保護期間を得ることができることを目指したのである。
 審査ガイドラインG-IV-5.4(ダブルパテント)では、同じ出願人による3種類のEP出願、個別の重複する発明、親子或いは分割、または出願とその優先権主張におけるダブルパテントに対して規定している。しかし、実務上は、審決G1/05やG1/06が、出願人の正当な利益の欠如を理由とするダブルパテントの禁止を根拠としていため、国内優先権主張の出願の場合、出願人は正当な利益を有すると判断され、ダブルパテントを理由に拒絶しないとする判断するために特許権者が20年に追加の1年間の利益をうけた事例が共存している状況である。

本負託は、以下の内容となっている:
1. 欧州特許出願が、同一の出願人に付与されたヨーロッパ特許と同一の主題をクレームし、EPC54条(2)及び(3)に基づく技術水準を構成していない場合、EPC97条(2)に基づき拒絶されるか?
2.1 1の回答がYesの場合、その拒絶の条件は何か、また、審査係属中のヨーロッパ特許出願が、以下のいずれかの場合、適用される条件は何か?
a) 同日出願、或いは
b) ヨーロッパ分割出願(EPC第76条(1)項)、或いは
c) 同一出願人のヨーロッパ特許出願を基礎とする優先権(EPC88条)主張出願で、その基礎出願が既に特許されている場合、
2.2 特に、上記cでは、優先日ではなく出願日が第63条 (1) EPCに基づくヨーロッパ特許の存続期間を計算するための基準日であるという事実から後続ヨーロッパ特許出願に係る特許付与に出願人は正当な利益を有するか?

拡大審判部の回答は以下の通り:
1. A European patent application can be refused under Articles 97(2) and 125 EPC if it claims the same subject-matter as a European patent which has been granted to the same applicant and does not form part of the state of the art pursuant to Article 54(2) and (3) EPC.
2.1 The application can be refused on that legal basis, irrespective of whether it
a) was filed on the same date as, or
b) is an earlier application or a divisional application (Article 76(1) EPC) in respect of, or
c) claims the same priority (Article 88 EPC) as the European patent application leading to the European patent already granted.
2.2 In view of the answer to Question 2.1 a separate answer is not required.

従って、国内優先権主張の場合もダブルパテントの対象となることが明確にされた。当方は当たり前と思いますが、法律の隙間は何時も問題になりますね。

参照サイト:https://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/communications/2021/20210622.html
審決 G 0004/19