【アメリカ】USPTO実務でのAIツールの使用に関するガイダンスの公示(4月11日)

アメリカ特許商標庁(USPTO)は、3月11日付、USPTO実務でのAIベースツール使用に関するガイダンス(Guidance on Use of Artificial Intelligence-Based Tools in Practice Before the United States Patent and Trademark Office)を官報で公示し、特許や商標実務担当者、発明者、起業家などがUSPTO実務でAIが悪用されたり、チェックされないままに利用されたりすることによる、AIの使用によるリスクが発生しないように注意喚起するためのガイダンスとするとしている。

本ガイダンスは、USPTO 実務で AI を使用することで発生する可能性のある規則、方針、或いは問題点の網羅的なリストを提供することを目的としたものではなく、AI が発明プロセスの一部として使用された場合のAIの使用について個別に取り上げている。アメリカの特許実務では、先行技術を調査し、クレームを作成し、出願明細書のレビューを容易にし、特許出願の審査プロセスを自動化し、審査官の対応についての洞察を得るためにもAIツールを活用するなどAI依存度が高まっているため、そうしたAIツールを使用する際に懸念されるリスクとして、不完全や不正確な出力、重大な虚偽記載や脱落など十分な確認をしないことによる手続き上の問題のみならず、秘密保持や倫理問題が生じるのは当然であろう。

官報では、セクション II でUSPTO の既存の規則と方針の概要を説明し、セクション III でこれらの既存の規則と方針がUSPTO実務でAIツールの使用という文脈でどのように適用されるかについて説明している。 具体的には、セクション III(A) でUSPTO に提出する文書の作成におけるAIの使用、セクション III(B) でAIを活用した USPTO への文書提出、セクション III(C)でUSPTO のITシステムとの通信におけるAIの適切な使用について説明し、セクション III(D)でAIの使用に関連する機密保持と国家安全保障上の懸念を提起している。
II. The USPTO’s Existing Rules and Policies
 A. Duty of Candor and Good Faith
 B. Signature Requirement and Corresponding Certifications
 C. Confidentiality of Information
 D. Foreign Filing Licenses and Export Regulations
 E. USPTO Electronic Systems’ Policies
 F. Duties Owed to Clients
III. Application of the Existing Rules as to the Use of AI, Including Generative AI, Before the USPTO
 A. The Use of Computer Tools for Document Drafting
 1. All Submissions and Correspondence With the USPTO
 2.Additional Examples in the Patent Context
 3. Additional Examples in the Trademark Context
 B. Filing Documents With the USPTO
 C. Accessing USPTO IT Systems
 D. Confidentiality and National Security Considerations
 E. Fraud and Intentional Misconduct
IV. Conclusion

なお、アメリカでのAIが発明者になりうるかどうかの判断は、USPTOが特許法§100(f)(g)項に定義される発明者は自然人だけであるとして、Stephen Thaler博士のAI(DABUS)を出願人とする特許出願を拒否したことに対する異義申立を最終的に最高裁判書が2023年4月24日に棄却しているため、AIは発明者になり得ない情況であった。これを受けて、USPTOは、2024年2月13日にAI補助による発明者確定ガイド(Inventorship Guidance for AI-Assisted Inventions)を公示している。

参照サイト:https://www.federalregister.gov/documents/2024/04/11/2024-07629/guidance-on-use-of-artificial-intelligence-based-tools-in-practice-before-the-united-states-patent