国家知識産権局(CNIPA)商標局は、5月26日、申請効率を向上させるとして、2023年3月に公示された商標三年連続不使用申請の要件をさらに厳格化し公示した。
本公示はガイド(手引き)の位置づけと思われるが、公示の趣旨や理由の明確な記載がないものの、最近中国では不正や悪意による不使用取消申請が増加している情況があるための措置と理解できる。現行商標法の規定は、誰でも三年連続不使用による取消申請ができるために、不正や悪意による申請を防ぐために、下記の15項を追加することで、簡単な申請書の記載要件を厳格化するとともに、不使用の立証を少なくともインターネット検索結果を提出させるように改正したと思料する。現状では、商標代理人が悪意による手続きに加担或いは主導している情況もあることから、不使用取消手続きが架空の名義であったり、申請人の意思でなかったりするようなこと想定されるために、商標局がそれらを確認する補充提出を要求することもあるようである。
以下は、商標局の公示内容である。
法律根拠: 商標法49条2項 正当な理由なく連続する3年間に使用がない場合、如何なる単位或いは個人は商標局に当該登録商標の取消を請求することができる。関連規定:商標法実施条例66条 請求するときにその状況を説明しなければならない。
提出書類:
(1)申請書類
1.三年連続不使用商標取消申請書(定型書式)
2.不使用を示す事前調査証拠(オンライン検索結果、市場調査報告書など)
3.申請人の身分証明書(営業許可証、現在事項証明書、身分証明書など)のコピーに社判或いは署名
4.商標代理人に委託する場合、委任状
(2)具体的要件
1. 申請人は、申請書に必要事項を忠実に記入し、勝手に書式を変更してはならない。申請書は、タイプまたは印刷により作成する。
2. 申請人の氏名及び押印(署名)は、身分証明書の氏名と一致しなければならない。申請者が個人である場合は、氏名の後に身分証明書番号を記入する。
3. 申請人の住所には、省、市、県その他の行政区画名を記載しなければならない。申請人は、身分証明書に記載の住所を記入する。申請人が個人の場合、送付先住所を記入することができる。
4. 商標代理人に申請を委託する場合、代理機構の氏名を記入し、「代理機構印/代理人署名」に代理機構の社判の押印と代理人が署名する。
5. 共有商標の取消を申請する場合、「商標登録人」に当該共有商標人の代表者の氏名を記入する。
6. 認可商品/役務の一部を取消申請する場合、「取消す商品/役務」の欄に取消申請する商品/役務名を記入するが、認可された商品/役務の名称と同じでなければならない(別紙を追加して記載できる)、各商品/役務名はセミコロンで区切る。認可商品/サービスの全部を取消申請する場合、「すべて」と記入する。
7. 商標法実施条例の規定に基づき、申請人は取消理由で対象商標が正当な理由なく3年連続使用されない関連状況を説明するとともに、対象商標が3年使用されない初歩的調査証拠、インターネット検索結果、市場調査報告などを添付する。
8. 申請人が法人或いはその他の組織の場合、「申請人印(押印)」の欄に押印する。申請人が個人の場合、ここに署名する。押印或いは署名は完全で明瞭でなければならない。
9. 申請は申請前に、取消対象商標の登録状況を照会し、対象商標の現在の登録人の状況を申請書に記入する。
10. 登録商標の取消を申請する場合、対象商標の公告日から満3年が過ぎてから国家知識産権局に申請することができる。
11. 商標法第49条2項により国際登録商標の取消申請は、対象商標の国際登録出願の却下期限満了日から3年後に国家知識産権局に申請することができる。却下期限が満了しても再審却下或いは異議申立に関する手続きがある場合、国家知識産権局が下した登録査定の発効日から満3年が過ぎてから国家知識産権局に申請することができる。
12. 当事者が決定に不服の場合、取消決定受受取日から15日以内に国家知識産権局に再審を申請することができる。
13. 申請人は、申請する前に「申請人承諾」の承諾内容をよく確認し。申請が提出されたときに、申請人は承諾内容を受入れたものと見做される。
14. 申請人が提出した資格証明書類は商標審査審理指南上編第一部第一章5.1節の要件に適合する、商標第理委任状などの書類は商標審査審理指南上編第一部第一章5.2節の要件に適合するものを提出する。
15. 初歩的調査証拠には、申請商標の登録人の事業範囲或いは業務範囲、事業状態或いは存続状態などの情報、申請商標の市場調査状況、関連する調査は専門調査プラットフォームに限らず、申請商標の登録人の公式サイト、WeChat番号、電子商取引プラットフォーム、オフライン生産事業所などのインターネット調査、市場調査、実地調査などの証拠材料など証拠資料が含まれるが、これらに限らない。
16. 手数料の納付を行う。電子申請は区分ごと450元、紙申請は同500元である。
(3)手続き
申請人が規定通りに手数料を納付後、申請人に取消申請通知書を発行するとともに、商標登録人に「登録商標使用証拠提供に関する通知」を発送する。国家知識産権局は、商標登録人が提供した登録商標の使用証拠を受取後、証拠資料を審査し、対象登録商標について取消かどうかを決定し、商標登録人と申請人に文書で通知する。商標代理人に依頼した場合、国家知識産権局は裁定書を当該商標代理人事務所に郵送する。
日本から手続きを行う場合、代理人に委託することになるため、通常は、現在事項証明書と委任状を提供し、使用情況をインターネット検索してまとめてもらうことになるため、使用実態について、インターネット検索や現地調査により予め予備調査をすることが重要である。また、実務上、商標局は、インターネット検索を少なくとも検索エンジン、電子商取引サイト、業界サイトの3つ以上での実施結果を補充提出することを求めるなど、上記の基準以上の要求が事案により商標局より要求されることが生じているようであるため、十分な事前対策に注意が必要である。しかし、個人名での商標登録が多く、そうした情況で使用証拠を収集することは容易でなく、追加提出を要求されても準備できず、却下されるようになるのであれば、何のための法規定や制度なのか疑問となるので、あるべき姿での運用を期待するところである。
参照サイト:https://sbj.cnipa.gov.cn/sbj/sbsq/sqzn/202303/t20230330_26201.html