【中国】新三製品技術の特許分類体系の公示(8月9日)

国家知識産権局(CNIPA)は、近年、電気自動車、リチウム電池、太陽光発電製品に代表される中国製の「新三製品」の輸出が大幅に伸びていることから、着実な増加と貿易の継続的な最適化を推進・支援することを目的に、対象の特許分類と技術用語のからなる新三製品技術に関する特許統計分析に適する分類体系を地方の知識産権局向けに公示した。

分類体系は、電気自動車、リチウム電池、太陽光発電の3つの関連技術について4レベルに分けている。電気自動車は電気自動車車両の製造、電気自動車の機器および付属品の製造、電気自動車関連設備の製造、電気自動車関連サービスをトップレベルに以下14カテゴリー、リチウム電池は正極材料、負極材料、電解質、セパレーター、リチウム電池モジュールおよびバッテリー パック (PACK)をトップレベルに26カテゴリー、太陽光発電は 多結晶シリコン、単結晶シリコン、セル、太陽光発電モジュールをトップレベルに20のカテゴリーに分け、IPCとキーワードが提示されている。

この体系は、特許調査の上で便利に利用することができる。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/8/9/art_543_194141.html

【中国】特許料金の一部の調整と政策的減額の公示(8月6日)

国家知識産権局(CNIPA)は、8月6日付、「国家知識産権局の特許料金基準の部分的調整と政策的減額の公告(国家知识产权局关于调整部分专利收费标准和减缴政策的公告)第594号を公示し、以下に掲げる特許料金の改定を公示日から適用する。

この公示は、「財政部国家発展改革委員会の特許料金徴収政策の調整・最適化に関する通知」(財税〔2024〕23号)、「国家発展改革委員会財政部の特許権利期間補償の年金基準などの事項に関する通知」(発改価格〔2024〕1156号)に基づき、一部の特許料金徴収基準と政策的減額調整を行った、その内容は以下の通り:
1.特許権利期間補償関連
 ・特許権期限補償請求料 200元/件
 ・特許権補償期間の年金 8000元/件、1年未満は徴収しない
2.特許開放許諾実施期間中の特許年金関連
 ・当該年度の納付年金額から15%減免
 ・同時に他の特許料減免政策が適用される場合、
  最恵優遇措置を享受し重複適用はない
3.ハーグ国際意匠出願関連
 ・第1回目、第2回目の個別指定料(更新)の減額 
4.書誌的事項の出願人(或いは権利者)名称の一括変更関連
 ・譲渡を伴わない場合、1回の変更につき書誌事項変更手数料を支払う
5.PCT特許出願中国国内移行関連
 国家知識産権局が受理官庁で調査した場合、国際調査・国際予備審査を実施した場合、
 ・移行時の出願手数料及び出願付加手数料を免除
 ・移行後の実体審査料金を免除
6.WIPOなど他の機構、国と地域の法制度の手続き関連
 ・代行受領料金は当該機構、国と地域の約定や契約に基づき処理する。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/8/6/art_74_194102.html
料金表(Wordファイル) https://www.cnipa.gov.cn/module/download/down.jsp?i_ID=155983&colID=1518

【インドネシア】商標不使用取消期間が5年に(7月30日)

インドネシア憲法裁判所(Constitutional Court)は、2024年7月30日、登録商標不使用事件の第二審で控訴人の主張の一部を認め、連続した3年間の使用を5年間、不可抗力による除外規定を追加する商標法改正を示した。同改正は、即日発効した。

 本事件は、中国企業が登録商標IDM000553432(HDCVI &図形、9類:CCTVカメラなど、権利者:Ricky Thio)に対し商標法77条1項に規定される3年連続不使用による取消をジャカルタ中央商事裁判所(Commercial Court of Central Jakarta)に申立て、審理を経て係争商標は取消された(判決28/Pdt.Sus HKI/Merek/2023/PN Niaga Jkt.Pst)。
 係争商標権者は、憲法裁判所の控訴審で、登録商標が3年連続で使用されなかった場合に商標権を取消す現行商標法の規定する期間は短く、商標権者、特に中小企業(SME)に十分な保護を与えていないこと、また、COVID-19を引用し、不使用期間の免除理由に不可抗力として含められるべきであると主張した。
 この主張を受けて、裁判官は、2024年7月30日の公開審理で、上訴人の主張の一部を認め、商標法の無効取消の5年に不使用取消の期限も調整することはすべての商標権者の公平性を確保し、内国民待遇の原則に沿い、商標取消に関する規制と調和すること、さらに、商標法77条2項に規定される不使用の例外規定に経済危機や通貨危機、自然災害、パンデミックなどの不可抗力の条件なども明確にすることが重要であると判断を示した(決定書144/PUU-XXI/2023)のである。
 これに基づき、憲法裁判所は、商標法77条1項の「3年間」を「5年間」、起算日を「登録日または最終使用日」とし、また2項c号の「政府の規制により制定されるその他の同様の禁止事項。」を「政府の規制により定められた不可抗力の条件を含む、その他の同様の禁止事項。」と改正することも決定したのである。
 インドネシアでは、憲法裁判所 の決定は最終的なものであり、その決定が宣告された時点で直ちに恒久的な法的効力を持つとされているため、商標法に対する憲法裁判所の決定は最終的なもので拘束力があると判断される。つまり、2024年7月30日より上記の法改正が施行されたことになる。

 インドネシアで不使用取消を申立てる場合、申立人が商標権者の不使用を立証する義務があり、主だった地域での使用状況を調査する必要があるため、調査費用が高額になる上に裁判所に申立てることになるため、申立人には負担の大きな手続きとなっている。この改正で、各国が3年としている不使用期間が5年間になるとその調査の難しさが加わることになる。悪意のある第三者による先取り登録など難しい案件では、さらに難しくなるため、異議申立の重要性が高まる。

参照サイト:https://en.mkri.id/news/details/2024-07-30/Court_Extends_Non-Use_Trademark_Period_from_Three_to_Five_Years

【日本】PCT出願費用値上げ(9月1日)

日本特許庁(JPO)は、8月1日、PCT国際出願手数料、取扱手数料の値上げを公示した。国際出願が受理された日に有効な手数料が適用される。

国際出願&取扱手数料

 手数料項目2024年8月31日以前2024年9月1日以降
 国際出願手数料217,700円237,500円
 30枚を超える1枚につき2,500円2,700円
 オンライン出願の減額49,100円53,600円
 取扱手数料32,700円35,700円

参照サイト:https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_tesuukaitei.html

【中国】「2024年中国企業の外国知的財産紛争調査報告」(7月31日)

中国知的財産研究協会(CNIPS)は、7月31日、「2024年中国企業の外国知的財産紛争調査報告」(2024中国企业海外知识产权纠纷调查)をそのサイトで報告した。これまで2年に亘り「アメリカでの知的財産権紛争調査報告」としていたが、2023年度は欧米や日本など諸外国も含む調査報告書と収録範囲を拡大し、下記の3部約80頁の構成となっている。

第 1部 アメリカにおける知的財産紛争
第1章 全体の訴訟状況
第2章 特許訴訟
第3章 商標訴訟
第4章 営業秘密訴訟
第5章 越境電子商取引訴訟
第6章 337調査
第2部 その他の主要国・地域における知的財産紛争
第7章 全体の訴訟況
第8章 特許訴訟
第9章 商標訴訟
第3部 海外の知財制度視察

 報告内容で、2023年に中国企業がアメリカでの知的財産権訴訟は、1,173件と前年比+19.0%と増加し続けている。この内訳では、特許訴訟447件(対前年比+56.1%、以下同じ)で中国企業2,452社(+167.4%)、商標訴訟757件(+5.4%)で中国企業16,793社(+98.8%増)、営業秘密訴訟23件(+27.8%)で47社(+27.0%)である。業種別にみると、特許では製造業(36.6%)、卸売・小売業(36.6%)、商標訴訟では主に卸売・小売業(82.56%)で、地域では主に広東、福建、浙江などの省市に分布し、広東企業は3割近くを占める。訴訟結果は、特許訴訟で和解・取下での結審が65.7%の、商標訴訟では被告が訴訟に応じず敗訴66.1%である。平均賠償額は、特許で2371.72万ドル、商標訴訟で117.98万ドルであった。

 他の国と地域での特許、商標訴訟事件は89件、結審は141件。この内、特許訴訟事件は71件(前年比+47.9%、以下同じ)、商標訴訟事件は18件(-43.75%)で、関与する中国企業165件(+60.2%)増加し、そのうち77%が中国企業だった。特許訴訟の平均賠償額は約330万元だった。

参照サイト:http://www.cnips.org.cn/a18979.html

【欧州】EPOの引用文献すべて電子データへ移行(2024年10月1日)

ヨーロッパ特許庁(EPO)は、7月31日、10 月 1 日よりEPC 及び PCTに基づく特許出願の調査および審査手続きで引用された特許文献を電子データでのみ利用可能にし、紙のコピーを今後は提供しないと公示した。

現在電子出願をしている利用者は全体の約 75% を占めているが、依然として郵送で手続きしている利用者も多いため、Espacenet を通じて引用特許文献にアクセスすることで年間 600 万ページ、両面印刷すると300万枚、積み重ねると185メートルで、ロンドンのビッグベンの 2 倍の高さにもなり、戦略計画 (SP2028) に沿ったペーパーレスのための重要なステップとしている。

参照サイト:https://www.epo.org/en/news-events/news/patent-literature-citations-going-solely-digital

【アメリカ】AIの特許適格性ガイドライン更新(7月17日発効)

アメリカ特許商標庁(USPTO)は、2024年7月17日から適用する人工知能(AI)を含む新しい技術イノベーションに対応するため、特許対象適格性(35 § USC 101)に関するガイドライン更新版を公示した。

この最新の更新版では、AI技術関連する発明を含む特許出願と特許クレームの対象適格性を評価する方法にさらなる明確さと一貫性を示すことを目的とし、以前のガイダンスに基づき新しい事例を3件含めており、クレームが抽象的なアイデアを述べているかどうか、またはクレームが抽象的なアイデアを実際のアプリケーションに統合しているかどうかなど以下の通り

■  Claims to “collect[ing] information on a user’s movements and location history [and] electronically record[ing] that data” (i.e., “creating a digital travel log”), Weisner v. Google LLC, 51 F.4th 1073, 1082 (Fed. Cir. 2022) (citation omitted). Under the USPTO’s guidance, this is an example of “managing personal behavior or relationships or interactions between people.”

■  A claim to “monitoring the location of a mobile thing and notifying a party in advance of arrival of that mobile thing [ ] amount[s] to nothing more than the fundamental business practice of providing advance notification of the pickup or delivery of a mobile thing,” agreeing with the district court that “business practices designed to advise customers of the status of delivery of their goods have existed at least for several decades, if not longer.”Elec. Commc’n Techs., LLC v. ShoppersChoice.com, LLC, 958 F.3d 1178, 1181 (Fed. Cir. 2020). Under the USPTO’s guidance, this is an example of a fundamental economic principle or practice.

■  Claims to methods for detecting fraud in financial transactions during a payment clearing process, including determining when there is a match between two financial records, sending a notification to a bank with authorization to process the financial transaction when there is a match, and sending a notification to a bank to not process the financial transaction when there is not a match,Bozeman Fin. LLC v. Fed. Reserve Bank of Atlanta, 955 F.3d 971, 978 (Fed. Cir. 2020). Under the USPTO’s guidance, this is an example of a fundamental economic principle or practice.

ガイドラインの更新版は、以下のURLで確認することができる。また、USPTOのAI関連情報サイトもご参考まで。

参照サイト:https://www.uspto.gov/about-us/news-updates/uspto-issues-ai-subject-matter-eligibility-guidance
AI関連情報サイト https://www.uspto.gov/initiatives/artificial-intelligence/artificial-intelligence-reports

【中国】「国務院の外国知的財産権紛争処理に関する規定(意見募集稿)」の公示(7月29日)

司法部は、知的財産権の保護を強化し、ビジネス環境を最適化し、中国の国民や企業などの組織が法に基づき外国での知的財産権紛争を処理することを促進し、合法的権益を維持し、高水準の外国開放を促進し、経済の質の高い発展を推進するため、「国務院の外国知的財産権紛争処理に関する規定(意見募集稿)(国务院关于涉外知识产权纠纷处理的规定)」を7月29日に公表し、一般からの意見募集を開始した。意見の提出期限は、2024年8月28日まで、

中国の外国貿易、投資の継続的な増加に伴い、中国企業は外国事業で知的財産権紛争に遭遇することが増えて、例えば海外での商標権先取り、権利侵害訴訟に遭遇し、さらに国家レベルの貿易調査、制裁などに直面している。中国企業は外国の知的財産権紛争に対応する能力の不足や外部の支援不足などの多くの弱点と困難に直面している。中国の国民や企業が外国での知的財産権紛争を処理し、正当な権益を保護できるようにより適切に指導および支援するために、法務省は、関係部局と協力し、既存の法律、規制、政策、措置を見直し、研究し、関係者の意見を考慮し、本規定を起草した。

意見募集稿の主な内容は以下の通り:
1.国務院の関係部門、地方人民政府とその関係部門が外国での知的財産権紛争の処理に対する指導とサービスを強化することを明確にし、商会、業界団体、国境を越えた電子商取引プラットフォームなどの組織が外国知的財産権の権利保護支援プラットフォームを構築することを奨励する。(第2条、第3条、第10条)
2.情報サービスを強化。知的財産権情報公共サービスシステムを整備し、外国の知的財産権に関する法律制度情報を速やかに収集、公表し、外国の知的財産権制度の変更や重点情報について追跡と把握を強化し、典型的な事例分析や研究を実施し、一般公衆に情報検索サービスと早期警報を提供する。(第4条、第5条)
3.対応指導の強化。外国知的財産権紛争処理指導業務機構と作業手順を健全化し、中国の国民と組織に外国知的財産権紛争処理での対応戦略の指導と権利保護支援を提供する。(第6条)
4.専門サービスの強化。商事調停組織や仲裁機関が外国での知的財産権紛争の解決に参画できるよう支援し、弁護士事務所、知的財産権サービス機関などが外国知的財産権サービス能力を向上させることを奨励し、中国の国民や組織に効率的で利便性のある外国知的財産権紛争の解決と良質で効率的な外国知的財産権と法律サービスを提供する。(第7条、第8条)
5.企業の能力構築を強化。企業はコンプライアンス管理を強化し、企業の広報、研修を明確に強化し、外国知的財産権紛争の処理能力を向上させることが求められる。保険機関は外国知的財産権に関する保険業務を展開することを奨励し、企業は権利保護コストを下げるために、外国知的財産権保護互助基金を構築することを支援する。(第9条、第11条)

こうした国上げての対策は、やりすぎると自由主義経済では不正競争の対象になるため、アメリカや欧州を中心に非難したり、中国企業に対する制裁に繋がりうるものとを思料する。

参照サイト:https://www.moj.gov.cn/pub/sfbgw/lfyjzj/lflfyjzj/202407/t20240729_503608.html

【中国】「重点産業知的財産権チェーン強化・効率化の推進に関する若干の措置」通知(7月29日)

国家知識産権局は、教育部、科学技術部、工業情報化部、国務院国有資産監督管理委員会、国家市場監督管理総局、国家金融監督管理総局、中国科学院、中国国際貿易促進委員会と協力して、2024年6月21日の「重点産業知的財産権チェーン強化・効率化の推進に関する若干の措置(关于推进重点产业知识产权强链增效的若干措施)」を7月29日に、国知発運字〔2024〕21号で、関係各部門に通知した。

本若干の措置は、「特許転化運用特別行動計画(专利转化运用专项行动方案)(2023-2025年)』(国弁発〔2023〕37号)の設定要件を徹底して実施するために、重点産業を中心に知的財産権チェーンの強化と効率化の向上を徹底的に実施し、伝統産業の高度化、新興産業の成長、未来産業の育成に重点を置き、知的財産権の効率的な転化と強調的運用を協力に推進し、知的財産権の戦略的設定とリスク防止を強化し、特許チェーンとイノベーションチェーン産業チェーンの深い統合を積極的に推進し、イノベーションチェーンにおける特許の権利と情報リンク機能を発揮させ、産業チェーンにおける特許の相乗的役割を強化し、新たな生産力の発展を加速のために有効なサービス支援を提供するために、以下の5部15項目の措置を提案している。
1.質の高い知的財産権創出の強化と基幹産業の競争力強化
(1)重要なコア技術の知的財産権備蓄の強化
 優先審査、迅速審査、集中審査、審査延期などの審査方式を総合的に活用し、重量コア技術分野のイノベーション成果の特許の質と効率を向上させ、知的財産権の源泉で高価値の特許を拡大させる。
(2)産業イノベーション特許ナビゲーションサービスの強化
 重要産業分野の特別データベースを整備し、産業界共通ニーズを満たす多数の特許ナビゲーションプロジェクト(ランドスケープを指す)の実施を奨励し、結果の共有・利用メカニズムを確立・改善する。
(3)標準と特許の共同イノベーションの促進
 主要国・地域、及び国際的標準化団体における標準必須特許ルールを総合的に整理し、標準と特許に関する政策ガイドラインを策定する。標準必須特許情報の統計分析と傾向分析を強化する。
2.特許産業化プロセスを加速し、重点産業の規模効率の向上
(4)重点産業の特許転化の連携強化
(5)特許産業化促進メカニズムの完備
3.産業知的財産権の共同開発メカニズムを構築し、重点産業のイノベーションと発展エコロジーを最適化
(6)産業知的財産権運用センターの構築指導
(7)産業知的財産権イノベーションコンソーシアムの設立奨励
(8)重点産業特許プールの構築推進
 グローバルな視点に基づき、産業チェーンの中核となる特許リソースを収集し、重点産業におけるパテントプールの構築を促進し、ガイドラインや運営モデルを通じて公平性、合理性、無差別の原則に従い特許権者とライセンシーの利益のバランスを効果的に調整する。
4.知的財産権の国際協力と競争の統一的に調整し、産業安全を効果的に保障
(9)知的財産権の国際協力交流の深化
(10)知的財産権管理とリスク制御能力の構築強化
5.業務調整と保障サポートを強化し、強力な知的財産権チェーンの効率的に推進
(11)組織と実施の強化
(12)業務連携の強化
(13)政策保障の強化
(14)人材育成の加速
(15)サービス支援の強化

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/7/29/art_75_194012.html
https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/7/29/art_66_194010.html

【中国】医薬品特許行政裁決事件2023年度分(7月25日)

国家知識産権局(CNIPA)は、7月25日にパテントリンケージに係る複数の医薬品特許行政裁決事件を公示したので、2023年に提出された事件の内、公示されている13特許30事件について、以下の通りまとめた。取下の裁決が多いが、理由はわからないが特許自体を譲渡している案件もある。特許自体が無効になった事件が1請求項の範囲に入る入らないとの裁定結果になっているので、記載上は侵害、非侵害と記載した。日本企業が1社含まれる。
8月2日公告分まで13事件を追加。

1)200580036180.8(CN101043878B) GENZYME CORPORATION
(2023)国知药裁0038号 取下
2)200680047103.7(CN101365432B) MERCK & CO., INC.
(2023)国知药裁0001号 侵害 
(2023)国知药裁0002号 非侵害
(2023)国知药裁0009号 取下 
(2023)国知药裁0010号 取下 
(2023)国知药裁0011号 取下
(2023)国知药裁0012号 侵害
(2023)国知药裁0013号 取下
(2023)国知药裁0046号 取下
(2023)国知药裁0060号 取下
(2023)国知药裁0061号 取下
3)200780039567.8(CN101573106B) HELSINN HEALTHCARE S.A.
(2023)国知药裁0030号 取下
(2023)国知药裁0031号 取下
4)200880012425.7(CN101662937B) SMITHKLINE BEECHAM CORPORATION 
(2023)国知药裁0037号 取下
(2023)国知药裁0044号 取下
(2023)国知药裁0051号 取下
(2023)国知药裁0056号 取下
5)200980112028.1(CN101983073B) BOEHRINGER INGELHEIM INTERNATIONAL GMBH 
(2023)国知药裁0043号 非侵害
6)200980138060.7(CN102164585B) EGIS GYÓGYSZERGYÁR NYILVÁNOSAN MŰKÖDŐ RÉSZVÉNYTÁRSASÁG
(2023)国知药裁0014号 取下
(2023)国知药裁0022号 却下
(2023)国知药裁0047号 取下
(2023)国知药裁0048号 取下
(2023)国知药裁0062号 却下
7)200980140931.9(CN102186490B) FOREST LABORATORIES HOLDINGS LIMITED
(2023)国知药裁0026号 侵害
(2023)国知药裁0027号 侵害
(2023)国知药裁0055号 侵害
8)200980150172.4(CN102238945B) ASTRAZENECA UK LIMITED
(2023)国知药裁0003号 取下 
(2023)国知药裁0004号 取下 
(2023)国知药裁0020号 取下
(2023)国知药裁0021号 取下
9)201080060545.6(CN102724970B) WYETH LLC
(2023)国知药裁0005号 非侵害
(2023)国知药裁0017号 取下 
10)201210006776.5(CN102580084B) GENENTECH, INC.
(2023)国知药裁0036号 特許無無効
11)201210191052.2(CN102702119B) Novartis AG
(2023)国知药裁0032号 取下
(2023)国知药裁0033号 取下
12)201410082103.7(CN103893140B) WYETH LLC
(2023)国知药裁0007号 非侵害
(2023)国知药裁0016号 取下
13)201410468293.6(CN104324015B) 第一三共株式会社
(2023)国知药裁0015号 非侵害
(2023)国知药裁0023号 非侵害
14)201480015788.1(CN105101952B) PFIZER INC.
(2023)国知药裁0045号 侵害
(2023)国知药裁0050号 非侵害
15)201610795817.1(CN107050455B) HELSINN HEALTHCARE SA
(2023)国知药裁0028号 取下
(2023)国知药裁0029号 取下

以上

【中国】2024年6月までの特許登録、知財訴訟情況(7月19日)

国家知識産権局(CNIPA)が公示した第2四半期6月までの特許と商標の登録などの統計データが更新された。これによると、発明特許が前年比+28%増、実案特許と意匠特許がそれぞれ前年比‐12.5%、‐11.4%となり、3月末の時点から増減率がそれぞれ半数ほどになっている。注目は、外国からの意匠特許登録が+2.2倍と急増しており、ハーグ国際意匠制度を利用した出願が増加していると思われる。
 商標登録は+22%増と安定した回復を示しており、外国からの登録も+28.2%増と回復の傾向を示している。また、異議、無効宣告、却下再審は増加傾向を示している。

なお、中国企業の発明特許取得上位5社は以下の通り:
1.Tencent騰訊2533件、2.Huawei華為技術2478件、3.Baidu北京百度2077件、4.PingAn平安科技1944件、5.BOE京東方科技1860件

最高人民法院の公示によると、2024年上期の知的財産権紛争の一審受理件数は24.1万件と前年同期比1.17%増加した。そのうち、刑事事件は4,273件と前年同期比44.02%と大きく増加している。民事事件は22.6万件と前年同期比0.81%増、行政事件は1.1万件と前年同期比2.94%減であった。なお、多くの知的財産権紛争が調停などの方法で実質的に解決されることが増加しており、知的財産権民事一審事件の調停率は74.45%で、前年同期比4.84ポイント上昇している。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/col/col61/index.html
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1804973228394875807&wfr=spider&for=pc

【中国】「特許紛争行政裁決と調停弁法」(意見募集稿)公示(7月18日)

国家知識産権局(CNIPA)は、7月18日、特許紛争行政裁決と調停弁法(专利纠纷行政裁决和调解办法)意見募集稿を公示し、9月2日まで一般からの意見を募集する。

中国政府が2014年10月に行政裁決制度を健全化し、行政機関が行政管理活動と密接に関連する民事紛争を解決する機能を強化することを強調したことに始まり、2021年の「知的財産権強国建設要綱(2021-2035年)」、「第14次5か年計画、国家知識産権局の保護と運用の規則」で、特許侵害紛争の行政裁決制度が役割を発揮し、行政裁決の執行力を強化、知的財産権侵害紛争の行政裁決制度を健全化、知的財産権行政裁決チームの人員配置と能力の強化を提案した。その後、特許法及び特許法実施条例の改正を受けて、2023年9月、国家知識産権局、司法部は、「新時代の特許侵害紛糾行政裁決業務の強化に関する意見」を公示し、法治保障の強化、法定職責の厳格な履行、事件処理の強化、支援システムの整備などの面から特許侵害紛糾行政裁決を具体的に整備した。2024年4月に、国家知識産権局は8部門と共同で「知的財産権保護システム建設プロジェクト実施計画の通知」を公示し、特許、著作権の行政裁決の規範化の構築強化の必要性を指摘した。そして、こうした背景から調査研究、起草準備、意見募集を経て草案が作成され、弁法案が作成され、意見募集の運びとなった。

 本弁法は以下の通り、5章86条からなる。
 第一章 総則   第1~11条
 第二章 行政裁決 第12~62条
  第1節 事件処理手順
  第2節 権利侵害判断
  第3節 証拠
  第4節 重大特許権侵害紛争の行政裁決
  第5節 医薬品特許紛争の早期解決メカニズムの行政裁決
 第三章 行政調停 第63~79条
  第1節 調停手続き
  第2節 実体基準
 第四章 法的責任 第80~83条
 第五章 附則    第84~86条

上位法律、司法規定及び法執行実務との整合性を維持を基本原則を堅持し、行政裁決では一般的な権利侵害に加え、重大な特許権侵害紛争、医薬品特許紛争の早期解決メカニズム及び特許開放許諾実施紛争を含む。このため、本弁法が成立すると「重大特許侵害紛争行政裁決弁法」と「医薬品特許紛争早期解決メカニズム行政裁決弁法」は同時に廃止される。行政調停では、特許出願権と特許権帰属紛争、発明者と創作者の資格紛争、職務発明創造の発明者と創作者の奨励と報酬紛争、発明特許出願公開による賠償請求権紛争、及びその他の特許紛争が対象となる。
 その他、新たな送達手段、オンライン口頭審理、特許業務管理部門、関係当事者、技術調査官、合議体、技術鑑定などの規定に加え、行政裁決申立ての資格、法定期限(時効3年)、合併審理などが明確にされ、関係規定が追加されている。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/7/18/art_75_193812.html

【中国】「特許開放許諾紛争調停業務弁法(試行)」の施行(7月15日)

国家知識産権局(CNIPA)は、7月15日に国家知識産権局公告第590号で、7月2日に制定した「特許開放許諾紛争調停業務弁法(試行)(专利开放许可实施纠纷调解工作办法(试行))」を公示した。これは、特許法第52条に規定する特許開放許諾が実施される過程で発生した紛争を速やかに解消するため制定したもので、公告日から施行する。

本弁法は、5章30条からなり構成は以下の通り:
第1章 総則   1~3条
第2章 事件受理 4~9条
第3章 事件調停 10~20条
第4章 決定   21~28条
第5章 付則   29~30条
添付:調停申請書式

当事者が特許開放許諾の使用料の支払基準と方法、契約期間などの実施について発生した紛争について、自発的に調停を受けたい場合は国家知識産権局に書面で調停申請を提出することができる(4条)と規定し、受領後5日以内に受理の可否(7条)を決定する。基本原則が自発、そして、合法、公平、秘密保持である(3条)、国家知識産権局は原則30日以内に調停を終える(18条)としている。以下の場合は受理しない(8条):
①他方当事者が調停を受け入れない場合
②当事者が訴訟を提起し、受理された場合
③当事者が仲裁機関に仲裁申請を提出した場合
④人民法院或いは仲裁機関が当該紛争に対して審判を行った場合
⑤受理できないその他の状況がある場合。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/7/15/art_545_193576.html

【中国】特許開放許諾制度の全面的実施推進の通知(7月12日)

国家知識産権局は、7月12日、地方政府の知識産権局及び関連センターに、特許開放許諾制度の全面的実施推進の通知(全面推进专利开放许可制度实施工作的通知)(国知発運字〔2024〕19号)を7月2日付で送付したことを公示した。
 通知によると、2024年1月20日から正式に施行された改正特許法実施細則により特許開放許諾制度が全面的に実施されたことを受けて、これまで主に全国の大学や研究機構において部分的に実施されていた特許開放許諾制度が簡便・迅速・マルチ型ライセンスの実現に有利であり、効率的で取引コストが下がるなどの利点を注目した効率的な運営を推進し、特許転化運用モデルとルートを広げることを目的としている。そして、以下の9つの観点から指導している。

1.開放許諾制度の実施の重要な意義に対する認識と展開
各地の知識産権局には、この制度を重視し宣伝を強化するともに、制度に対する正しい理解、科学的運用の指導が求められ、特に、大学と科学研究機関の保有特許の活用、中小企業が比較的低コストで特許技術を入手する支援などにより、特許転化運用の推進が期待されている。
2.規範的な開放許諾書の作成を指導
各地の知識産権局には、特許権者に対し関連規定に従い特許開放許諾書の作成を指導しなければならない。特許開放許諾書は、特許番号、特許権者、許可使用料基準と支払い方法、許諾期限などの事項を明記し、特許業務取扱システム(https://cponline.cnipa.gov.cn/)で送信する。なお、実用新案及び意匠の特許の場合、同時に特許権評価報告書を提出しなければならない。
3.試行プロジェクトの移行処理推進
すでに開放許諾の試行プロジェクトを展開している各地の知識産権局は、試行案件の質や見通しもよいため、2024年末までに正式に移行することを支援する。
4.合理的なライセンス料の指導
各地の知識産権局は、一般的な特許ライセンス料の支払い方式を広く宣伝し、特許権者にライセンス料のレートと支払い方式を指導する。「特許評価ガイド(专利评估指引)」、「特許開放許諾使用料試算ガイド(試行)(专利开放许可使用估算指引(试行))」、「特許審査指南」の規定に基づき、特許権者が公平で合理的、互恵、少額で確実な成功を堅持し、ライセンス料が定額の場合は2000万元を超えない、レートを適用する場合売上の20%或いは利益の40%を超えないよう指導する。
5.開放許諾情報の公開共有を強化
国家知識産権局は、開放許諾対象特許を特許公報で公告し、中国特許公告システム(http://epub.cnipa.gov.cn/)で検索、確認することができる。各地の知識産権局は、運営するサービスプラットフォームや運営センターなどを通じて、関連産業分野の企業マッチングや特許情報の利用を指導する。
6.需給連携の推進
各地の知識産権局は、大学と科学研究機関の保有特許の活用、中小企業の特許活用による成長促進、重点産業の知的財産権の連携強化などを図るために、大学と科学研究機関に在庫特許棚卸の指導し中小企業との連携を展開する。また、開放許諾手続きや保険などのコンサルティングを提供する。
7.開放許諾契約届出の指導
各地の知識産権局は、特許権者或いはライセンシーが速やかにライセンス登録するよう指導する。
8.開放許諾の監督管理と紛争調停の強化
国家知的財産権局は、特許開放許諾業務における異常な状況の監視と違法違反の調査を強化する。各地の知識産権局は、特許開放許諾手続きでの不正行為に対して、法に基づき信用監督管理を行う。違法行為については、特許法実施細則第100条の規定に基づき処罰する。「特許開放許諾実施紛争調停作業方法(試行)(专利开放许可实施纠纷调解工作办法(试行))」の関連規定に基づき、当事者が自主的に協議、調停などで紛争を解決するよう指導する。
9.制度と典型的事例の普及び強化
国家知識産権局の「知的財産権政務サービス事項処理指南(第2版)(知识产权政务服务事项办事指南(第二版))」により特許開放許諾業務でよくある問題について解答している。各地の知識産権局は、多種多様な方法を通じて、開放許可制度の宣伝、解読、研修を行い、典型的な経験と実例を総括・抽出し、国家知識産権局に適時に報告する。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/7/12/art_550_193719.html

【中国】中国日本商会「中国経済と日本企業2024年白書」発表(7月10日)

中国の日系企業などで構成される中国日本商会は、7月10日付、「中国経済と日本企業2024年白書」を発表した。本白書は、毎年、在中国日系企業が直面するビジネスの課題の分析や解決のための建議をまとめ、対中国政府関係機関との対話を促進する目的で作成し、活用している。従って、日本から中国の現状を理解する上で、大変分かりやすく良い資料である。
 今年度の白書は、「人的交流に関する問題」、「データの越境・管理に関する問題」、「政府調達に関する問題」が重点分野であるが、全28章からなり569件の建議が記載されている。第2部は、競争、知的財産、技術標準など、第3部は、各産業別、第4部は、各地方での現状と建議が記載されている。

知的財産については、第2部6章にまとめられているが、現状を「知的財産の保護強化に向けた取り組みに関する中国政府の姿勢にぶれはなく、目標の実現に向けた歩みは着実に進められているといえる」と評価しながらも、不正な商標出願問題から懲罰的賠償の適用まで幅広く提案をしていることは、それぞれ評価できる内容となっている。
1.現状の概要
2.知的財産の保護の現状と課題
3.知的財産に関する競争環境の現状と課題
4.知的財産に関する紛争処理の公平化・合理化
5.建議 23項目
 ① 知的財産の適切な保護の促進
 ②知的財産にかかわる公正な競争環境の実現
 ③知的財産にかかわる紛争処理の公平化・合理化

参照サイト:https://www.cjcci.org/detail/576/576/4679.html
知的財産部分 https://www.cjcci.org/cj_pdf/2024bs/japan/2-6_Chitekizaisan_JP.pdf