国家知識産権局(CNIPA)は、4月27日、知的財産権行政裁決と行政法執行活動に対する専門的な指導と案件処理の向上並びに権利侵害・違法行為を抑止し、良好なイノベーションとビジネス環境を構築するため、地方の推薦、選考審査、専門家の審査などを経て、2024年度の知的財産権行政保護の典型的な事例を確定した。
特許行政保護典型事例は10件で、発明、実用新案、意匠の3種別で特許侵害紛争の行政裁決、特許詐称の調査・処分などの事件で、薬品、電子機器、環境保護、日用品などの分野が含まれる。
2024年度特許行政保護典型事例
1.「PI3K阻害剤とするピリジノ[1,2‑A]ピリミジンケト類似体」関連の発明特許6件の侵害事件
担当部局:上海市知識産権局
当事者:正大天晴薬業集団有限公司vs上海某化学工業科学技術有限会社ほか4社
対象特許:ZL 201580027396.1、ZL 201101010274.5、ZL 2018000781.6
概要:特許権者は被申立人による癌細胞の増殖や活性化を阻害する薬剤の特許侵害を発見し上海知識産権局に投訴、被疑侵害が積極的に侵害事実を認めて自社ウェブサイトでの掲載中止し、和解金10万元を支払う調停合意したが、当局はECサイトでのサービス提供を発見し侵害行為停止命令を追加で出した。
2. 「結合装置」発明特許侵害事件
担当部局:江蘇省蘇州市知識産権局
当事者:A. RAYMOND ET CIE(フランス) vs蘇州汽車科技有限公司
対象特許:ZL200580030301.8
概要:特許権者は被申立人による自動車用流体配管用結合製品の製造販売を発見し権利侵害として蘇州知識産権局に投訴、被疑侵害は受託による少量のサンプル生産と抗弁した。当局は被疑侵害製品に「挿入部」という特許の技術的特徴があるかどうか検証し、最終的係争中の特許の使用環境(マストフィット)の特徴と認定し、権利侵害品の製造、販売、販売の中止、専用金型の廃棄、在庫の市場投入を禁じた。使用環境による侵害認定は中国的な間接侵害の判断で他国にはない。
3.特許虚偽表示事件
担当部局:浙江省杭州市市場監督管理局(知識産権局)
当事者:梅奥(浙江)細胞工程有限責任公司、浙江某生物科技有限公司など
対象特許:ZL202011528283.9
概要:当局は主体的な消毒製品の検査中に当事者の特許番号などの虚偽表示を発見し、製造、販売などの事業チェーンに浙江省、江蘇省などの複数の経営者が関与していることが判明し、違法販売総額は24.8万元であった。当局は、当事者には違法行為の是正、公告処罰、違法所得の没収と罰金の合計49.66万元、を科した。さらに、杭州市のその他の地区と江蘇省常熟市及び浙江省内の寧波市、温州市、金華市などで包括的に事件関与者の調査処分に展開した。
4.「携帯電話とその本体」の意匠特許侵害事件
担当部局:安徽省合肥市知識産権局
当事者:華為終端有限公司vs合肥某文化伝媒有限公司
対象特許:ZL202330765906.2(部分意匠)
概要:特許権者は被申立人の運営するライブプラットフォームで販売する携帯電話が係争意匠特許を侵害するとして投訴、当局は行政調停手続きでは原則的な「全体観察、総合判断」と部分意匠の「独立侵害判断」により侵害と判断し侵害行為中止命令、そして和解金支払いを含む調停合意書を締結した。本件では部分意匠の権利判断と裁定後の行政調停の2段階の紛争解決を行った点で意義がある。
5.「5-ヒドロキシ-4-チオメチルピラゾール化合物の製造方法」発明特許侵害事件
担当部局:山東省知識産権局
当事者:クミアイ化学工業株式会社vs某科技有限公司
対象特許:ZL200580010635.9
概要:特許権者は被申立人が当該特許方法を用いて生産・営業用に化合物製品を製造し、推定で年間10トン以上製造し、使用や販売、インドへも輸出していることを特許権侵害と考え投訴、行政調停手続きで技術論争が大きく、裁判所登録の鑑定機構による鑑定を介したが、当局の更なる調停活動により和解し調停合意書を締結した。
6.「ライター燃焼ヘッド」実用新案特許侵害事件
担当部局:浙江省寧波市知識産権局
当事者:寧波百晨電子有限公司vs慈溪市靈点科技有限公司
対象特許:ZL201720976426.X
概要:特許権者は被申立人による侵害行為を投訴し、当局は数回の調停後和解契約を締結したが、被申立人が契約違反したため、特許権者は再度投訴した。調停手続きで、被申立人は実用新案特許の「吸気部品」は機能的であり、被疑侵害品の対応部分は保護範囲に入らず、その発明の特徴は従来技術で公開されていると主張した。当局は当該部品が発明の特徴ではなく、「吸気部品」とスリーブとの具体的な配置関係であり、これは構造的特徴であり、当該従来技術も要件を満たしていないとして、抗弁は成立しないと認定した。従って、被申立人に侵害品の製造販売の中止を命じた。被申立人は行政訴訟を提起したが、裁判所は提訴を棄却し当局の裁定を維持した。
7.「メッセージの大きさがフレキシブルでビット長が可変的な直列データ伝送のための方法及び装置」発明特許侵害事件
担当部局:上海市浦東新区知識産権局
当事者:ROBERT BOSCH GMBH vs上海某微電子技術股份有限公司
対象特許:ZL201280032394.8
概要:特許権者は、被申立人が販売する車載グレード32ビットMCU製品が特許侵害するとして、被申立人と2年間にわたりライセンス交渉を行ったが実質的な進展なく投訴し、調停手続きで被申立人は本件に係る標準必須特許を既に実施していることを認めため、当局は公証の一部の内容を秘密対象とするとともに5回の調停会議を行い、最終的に双方が和解し、調停合意書を締結するとともに上海知識産権法院での司法確認を受けた。標準必須特許に係る行政調停、裁判所による合意書の司法確認を受けた意義がある。
8.玩具(逆行守護神)意匠特許権利侵害事件
担当部局:福建省漳州市浦東新区知識産権局、広東省汕頭市知識産権局
当事者:汕頭市某智能科技実業有限公司vs漳州某進出口有限公司など3社
対象特許:ZL202030459180.6
概要:申立人は特許権者から専用実施権を取得しており、被申立人の3社は被疑侵害品の玩具のロボットを販売しているため所在地の汕頭市知識産権局に投訴、被申立人は漳州市相城区に所在しており、申立人の提訴を受けた漳州市中級人民法院の訴訟前調停手続きに基づき、漳州市襄城区市場監督管理局と汕頭市知識産権局は共同で調停手続きを開始した。両当局は、申立人が地域を跨ぐ事件でのコストと時間に不安を持ち、被申立人は不公平な調停結果になることに不安があることを理解するとともに、漳州市市場監督管理局の推進する「益企維」知識産権保護聯盟の制度を活用し、係争する3事件を一括で解決するため、被申立人の侵害行為の中止と補償金の支払いからなる調停案をインターネット会議で提示して合意に導き、行政調停合意書を締結し、司法確認を受けた。地域を跨ぎ異なる司法と行政での紛争を一括で行政調停したことに意義がある。
9.「花火筒の打抜・差込装置用一体型ガイド機構」実用新案特許侵害事件
担当部局:湖南省瀏陽市知識産権局
当事者:黄承亮vs漳州某進出口有限公司など3社
対象特許:ZL202221940635.6
概要:特許権者は、湖南省瀏陽市での花火爆竹製品交易会で自身の実用新案特許を侵害する被疑侵害展示品を発見し、展示場の知的財産保護窓口に投訴した。当局は調査と証拠収集し、展示を取下げさせたが、製品が複雑であるために2つの機関から鑑定を取得し侵害判定を得た。被申立人は案件外の雛氏から仕入れた部品が使われているとして非侵害を主張した。審理では、係争特許の底板の穴に対応する被疑侵害品のカバープレートにバッフルを通すための穴の違いがあるが、両者の作動原理、機能及び効果は基本的に同一であるため均等判断、更に仕入れた侵害部品を製品に使用していることからも侵害行為と認定した。被申立人には侵害行為の中止を裁定した。その後、当事者を集めて調停協議を行い、和解に成功した。
10.「セルフロック式超高強度膨張ボルト」実用新案特許侵害事件
担当部局:河北省石家庄市知識産権局
当事者:趙人興vs河北某金属制品有限公司
対象特許:ZL201420781157.8
概要:特許権者は、被申立人が当該特許権侵害製品の販売を発見した後、実売購入で証拠を入手し、「信頼できるタイムスタンプ」認証を使用し動画を撮影・アップロードし、当局に投訴した。調停手続きで、被申立人は動画の映像が不十分で特許権との照合ができないと主張し、当局は購入した被疑侵害品は公証をうけていないものの真実性を認めたが、関連性は認めなかったので、特許権者は信頼できるタイムスタンプの発行があり、提出した被疑侵害品と同一であると主張した。被申立人が反対する証拠を提出していないことから、侵害品の販売を認定し、販売の停止、在庫の使用や上市を禁じる裁定を下した。挙証難や立証不足の状況を当局が牽連性や相互検証により合理的に判断したことに意義があるが、少し甘い判断ともいえることに注意が必要であろう。
参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2025/4/27/art_53_199400.html