上海高級人民法院は、12月12日、近年、上海での知的財産事件において懲罰的賠償を適用する事件が増加しており、適用件数と賠償額は年々増加しているとして、2024年以降に懲罰的賠償が適用された代表的な知的財産事件10件をリストアップし、適用や算定方法などの観点から典型事例として以下の通り公示した。
事例1:重要な取引機会を奪う商標先取り登録紛争における懲罰的損害賠償事件(2024)沪民終571号
有名ブランドの商標を悪意先取り登録し、大規模プロジェクトで悪意ある競争行為を行った場合、悪質な商標権侵害を構成し、長い侵害期間や一回の侵害でも高額の場合は、重大な違法行為を構成する。被告の侵害による利益を正確に算定できない場合、判明した侵害額及び確定された利益率に基づき損害賠償の基数を算出し、権利侵害での悪意の程度、情状の深刻さに基づき比較的高い懲罰的賠償倍数を決定することができる。
事例2:オンラインゲームにおける小説翻案権侵害に対する懲罰的賠償適用事件(2024)沪0114民初21889号
権利侵害があり締結した和解契約条項に矛盾がある場合、契約締結の背景と目的に基づき契約を全体的に解釈することができ、契約所に権利侵害者にコンテンツの継続使用許可を明示していない場合、侵害停止と推定し、侵害者が継続使用した場合、再犯と認定して懲罰的賠償を適用することができる。オンラインゲームの著作権侵害に懲罰的賠償を適用する場合、売上、利益率、コンテンツの寄与率、侵害期間などを総合的に考慮することができる。なお、和解契約に権利者側の警告義務などがありながら履行されていない場合、侵害者に一定の是正猶予期間を認められることもできる。
事例3:侵害利益の一部を懲罰的賠償の基数とした事件(2023)沪73民終912号
権利侵害行為を分離できる場合、損害賠償額確定時に懲罰的賠償と法定賠償に分けて適用することができる。明確に損害賠償額を確定できる部分を基数として懲罰的賠償を適用し、損害賠償額を確定できない侵害行為には法定賠償を適用することで、事実認定の厳格性を保障すると同時に賠償の認定効率と公平性を両立することができる。
事例4:商標無効後も類似商標出願をし続けた悪意侵害認定事件(2024)沪73民終231号
当事者が登録した商標が他人の登録商標の主要部分と同じで、類似商標との判断で無効された後、再度、同じ主要部分を含む商標を出願し使用している場合、積極的な権利侵害の故意があり悪意のある商標権侵害と認定することができる。裁判所は、権利侵害に関連する帳簿などの提出命令に対応しない場合、当事者の収入データに基づき侵害期間の収入を算出し、同業界での利益率や商標の貢献度を参考に懲罰的賠償の基数(損害額)を確定することができる。
事例5:オンライン・オフラインで複数の販売ルートがある場合の損害賠償額認定事件(2025)沪民终15号
被侵害商標の知名度が高いことを知りながら多方面で侵害を行い、警告を受けた後も侵害を続け、悪意のある侵害で懲罰的賠償の適用可能な事件で、被告にはオンライン・オフラインで複数の販売ルートがあり、また販売データを提供できない場合、原告の主張に基づき、ECサイトでの販売価格や販売量、利益率に基づき懲罰的賠償の基数となる損害額を算定することができる。
事例6:懲罰的賠償と法定賠償の同時適用事件(2023)沪0117民初18511号
権利侵害行為が複雑な侵害事件で懲罰的賠償の適用が十分な場合に、損害賠償の基数を認定できる侵害行為に対して懲罰的賠償を適用し、基数が認定できない侵害行為に対して法定賠償を適用することの両方を同時に適用することで知的財産権の保護を強化することができる。
事例7:フランチャイズ全体の侵害事件に懲罰的賠償認定事件(2024)沪73民終1648号
懲罰的損害賠償額の算定には、当事者の主観的悪意、侵害行為の状況と結果、証拠提出拒否などの要素を総合的に考慮する具体的状況に基づくことができる。例えば、フランチャイズの絡む事件では、財務記録、銀行取引明細書、契約書などの証拠書類の提出を命じ、侵害行為による利益が主にフランチャイズ料から生じたと判断できる場合、これを賠償額の算定根拠とすることができる。
事例8:共同侵害行為における役割、故意の認定の裁量に基づく懲罰的賠償適用事件(2024)沪0104民初377号
侵害行為を認識しながら改めずに侵害行為を継続したした場合に故意と認定できるが、一般的過失と認定できる部分に懲罰的賠償は適用しない。共同侵害の場合は、異なる侵害者の役割に応じた算定方法を用いることができる。
事例9:同一権利に異なる主体での再犯行為に対する懲罰的賠償適用事例(2025)沪0110民初580号
被告は過去に商標権侵害で有罪判決を受けており、新たに設立した個人事業主として再び同様の侵害行為を行った。当該個人事業主が実質的な支配者であることから、事業主の再犯には主観的な悪意、法的責任回避意図により生じた市場の混乱に基づき懲罰的賠償額を算定することができる。
事例10:正規販売ディーラーによる商標権侵害の主観的故意の認定事例(2023)沪73民終681号
正規販売業ディーラーが商標権者の登録商標と知りながら、当該商標を侵害する商品を製造・販売した場合、被侵害知的財産権に接触した上で故意に侵害行為を行ったという悪意を認定することができ、知的財産法における懲罰的損害賠償に必要な主観的故意の要件に適合する。権利者の損害、利益、或いは商標使用料の一部が確認できる場合、確認できた部分を懲罰的賠償額の基数とし、判明していない部分については法定損害賠償額を適用することができる。
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